2005年06月

多田治,沖縄イメージの誕生

多田治『沖縄イメージの誕生 青い海のカルチュラル・スタディーズ(東洋経済新報社,2004年)は、タイヘンよくできた教科書だ。■?文化の政治学ともいうべき、「カルチュラル・スタディーズ」の入門書として、①観光文化・博覧会など、視覚の政治学の入門書として、②そして、社会学を軸とした理論・用語・人物の紹介が てぎわよく なされている点で、社会学の入門書として、③さらには、「施政権返還」後の 沖縄群島の 簡便な歴史スケッチとして、非常にわかりやすい。■これから大学テキストを かきたいと かんがえている 先生方、高校生を「スタディー・ツアー」と称して、修学旅行に引率しなければならない先生方、などにとっても、参考になることうけあいで、かって損しない 本だと、おもう。■先日紹介した、野村浩也さんの『無意識の植民地主義』と、あわせてよむと、とてもいいとおもう。
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牛乳神話

先日、食生活史研究家 鈴木猛夫さんの『「アメリカ小麦戦略」と日本人の食生活』を紹介したが、鈴木さんは、「欧米型栄養学導入」を批判するなかで、「牛乳神話」をとりあげている。■良質なタンパク質カルシウムという、通説=常識的イメージは、幻想だというのだ。 続きを読む

沖縄戦60年=2世代の意味

■きょうは、沖縄県で学校などが休日となる、「慰霊の日」だ。■沖縄県以外にとっての「8月15日」にあたる日と、一応うけとって まちがっていない。■沖縄の2大県紙のひとつ『沖縄タイムス』(2005/06/14夕刊5面)は、「二十三日の慰霊の日に合わせ県内放送各局は「戦後六十年」関連の特別番組を予定している」とつたえた。■『沖縄タイムス』自体、「戦後60年 平和ウェブ」をくんで、購読者以外にも サービスを わすれていない。■もうひとつの県紙『琉球新報』も、5月下旬から、「特集/<沖縄戦60年>戦を刻む」を連載している。■これらが、60年まえの沖縄戦の終結時期を意識していないはずがない。
■「慰霊の日」が6月23日となったこと(1965年かららしいが)の理由は、一応「日本軍第32軍司令官・牛島満中将と同参謀・長勇中将が糸満の摩文仁で自決した日」であり、「日本軍の組織的戦闘が終結した日だと言われている」(finalvent「慰霊の日」に思う雑感,『極東ブログ』)。諸説あるが、一応「節目」 ということで、ふりかえる記念日という以外に、根拠らしい根拠はない。■というか、「finalvent」氏が異議をとなえるとおり、「自決した日」は、「6月22日」らしいし、「琉球列島守備軍が嘉手納米第10軍司令部で正式に降伏文書に調印したのは、9月7日」である。■「慰霊の日というが、23日以降も沖縄の民間人は殺され続けた。なのになぜ本土の軍人への慰霊が先行するのか、私はまるで理解できない。節目? それは間違った節目じゃないのか」という、「finalvent」氏の指摘は ただしいとおもう。
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日韓基本条約40年

■きょう22日は、「日韓基本条約(日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約)」が調印されて40年にあたる。■「第3条では日本は韓国が朝鮮半島を代表する唯一の国家であることを確認し、国交を回復した」というのが通説だろうが、要は、「日中共同声明」(1972年)で、台湾との外交関係を否定して、北京政府(共産党政権)を唯一の合法的政権とみなすという、確認をしあったのと同様、朝鮮半島北部の実効支配を否認するという、現在につながる問題の出発点でもある。 続きを読む

ロボット/マクドナルド/アマゾン

■ベルトコンベアーが部品をはこんでいくオートメーション。それを当時極限まで合理化しのた、テーラー主義であり、そこに はりつく工場労働者自体を 顧客にしてしまおうという、労務管理と市場革命を連結させたのが、フォード主義〔フォーディズム〕だった。■トヨタが 発明・定着化させたのが、このフォード主義をよりダイナミックにして、労働意欲をひきだしつつ、かつ、「カンバン方式」「カイゼン」など、ムリ/ムダ/ムラを トコトン けずりとる合理化だった。もちろんそれは、鎌田慧『自動車絶望工場―ある季節工の手記』(講談社文庫)といった、ルポがときあかしたとおり、「合理化残酷物語」でしかなく、単に、経営者・ホワイトカラー支配の勝利でしかなかった。そういった基本形は、期間工の定着率が上昇し、正社員化がすすんだにしても、伊原亮司『トヨタの労働現場』(桜井書店,2003)が えがくとおり、現場労働者の より徹底的な収奪という側面はぬぐえなかった。■それからすると、「トヨタ方式」から労働疎外をとりのぞくために、ひとかたまりの 組み立て作業を、まとまって労働者にまかせる「セル方式」が 考案されて、劇的に生産性をあげた(「幸せ大国をめざして 未来を選ぶ? カイゼン競争の先は」『朝日新聞』2005/06/12)。■しかしセル方式も、ロボット化がすすむとか、セル化できない部分/熟練が不要な部分は、請負会社からの派遣労働力ですませる 「人件費カット至上主義」がすすんでいる。■三重県亀山市には、「世界最高峰のハイテク工場」ともよばれるシャープの基幹工場があり、約2600人がはたらいているが、正社員は800人だけ、のこりは、請負会社の従業員だという。地元では、ことし3月有効求人倍率が「1.53」と、バブル期なみだったが、地元民は、キツイ労働条件、不安定な雇用だと、バレてしまって、あまりのらない。くるのは、事情にうとい他県人、あるいは、つべこべいってられない日系ブラジル人など(『AERA』No.30,pp.72-3)。■要は、雇用の安全弁として、労働力を「外注」しているだけってこと。
■まとめてみれば、生産拠点の海外流出と同様、「無人化」「外部化」が トコトンすすめられているってことだ。株主や経営陣にとっては、「合理的なシステム」だろうが、はたらくがわにとっては、「かわききった雑巾を、さらに しぼりあげられる」感じだ。■労働強度のムラが、特定のだれかに集中すれば、労災や、過労自殺をふくめた過労死は、すぐそこに まっている(大野正和『過労死・過労自殺の心理と職場』青弓社)。
■朝日新聞記者の「生産現場で、人間はロボットから追い出され、いずれ姿を消すのだろうか」との質問に、社会科学研究所(東大)の佐藤博樹先生、「人はマニュアル通りに動くだけでなく、不良品を見分け、その原因を追及し、改善できる」として、「製造業の未来に人間は欠かせない」とみているという。■ハラナには、トンと、質問/回答 双方の意味がわからない。佐藤先生の おこたえ、まちがっていないだろうけど、「欠かせない」「人間」の数と分業は?

■?「不良品」「の原因を追及」「改善」するスタッフが ずっと必要なのは、あたりまえ。以前、事故論でものべたとおり、コンピュータは ヒトが想定した範囲内でプログラムされ、その命令にそった計算しかできないからだ。「想定内の発見」はできても、「想定外の事態」には絶対に対応できない限界がある。■しかし、そんな頭脳労働は、少数いれば充分だ。「発見」するために、かりに「シラミつぶし」方式が必要であっても、コンピュータ・プログラムがつくれないなら、臨時バイトの大量採用だ。■つまり、常勤スタッフとして、労働条件を保障したかたちでの まとまった数の雇用は絶対にうまれない。
■?「人はマニュアル通りに動くだけでなく」というのは、いまや ホメことばでなどない。「人為的ミスの温床」という 経営上負の側面と、「ロボット化できない部分の補助作業、機械のオモリ労働の うけざら」という、経営上 正の側面の 「せなかあわせ」を含意した、文脈ぬきには ナンセンスな表現だ。■後者については、以前紹介した、中岡哲郎人間と労働の未来』(中公新書,1970年)が、その後の未来予測という側面もふくめて、ゾッとするような分析の キレあじを みせた。 
■ついでいえば、先日のJR西日本の福知山線の脱線事故の原因は、経営合理化という理念だけを追求し、人員削減と高速化をすすめるために、後者を最高度においもとめた結果、前者の限界で破綻した典型例といえる。■つまり、経営サイドからみて 正負両面あるとはいっても、労働者サイドにとっては、事故・搾取という「負」の 意味しかなく、現場に はりつかないとはいえ、大学のセンセってのは、なんて脳天気で 無責任に 「製造業の未来」を かたれてしまったりするんだろうと、あいた  くちが ふさがらない。■佐藤先生ご指摘の「不良品を見分け」るなど、「ロボット化できない部分の補助作業、機械のオモリ労働の うけざら」という、現場労働者の機能というか、位置づけの変質は、神経だけすりへる 監視ロボットと 化すってことだ。この 究極の奴隷労働の どこに、「未来」が あるっていうんだ。
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