■ところで、ひとびとが「3K」ときいたときに、ほぼイメージするだろう「建築/土木/製造関連職」以外は、ホントに「キツイ/キタナイ/キケン」と無縁なのだろうか? そうではなかろう。 
■ハラナがおもうに、公務員であろうが一部上場企業であろうが、現業部門の「実働部隊」には肉体労働がつきまとうとおもう。むしろ現業部門をほとんどもたない業界というものこそ、ごくわずかなんじゃないか? ■たとえば、ヒトからカネをかきあつめて、利ざやでかせいでいる、とおもわれている都市銀行だって、ものすごい量の硬貨をつんだ台車をうごかしたり、預金の回収など営業を原付でやらさている行員さんは、実際のところ肉体労働者でしょ。■公務員/公社職員だって、警察や消防、自衛隊、郵便なんて業界は、事務作業が意外におおいけど、やっぱり前線は現業であり、そのおおくは肉体労働だよね。■そんななかで、警察官や消防士、自衛官はもちろん、スポーツ選手やF1レーサーなんかも、まさに「3K」だとおもうわけ。死ととなりあわせだからね。特に、死体の発見・処理の最前線につねにいあわせるし、同僚・部下に殉職者がひとりもでずに定年までつとめあげる人物などいないだろう警官・消防士は、その最たるものだろう。
■しかし、ハラナがかんがえる「3K」は、もうすこしユルめに設定されている。かりに、物理的にヨゴれそうな場所にいかなくてすみそうでも、そして死傷事故などにそんなにあわなくても、心身にとってかなりキツいし、潜在的にはかなりキケンな職務は「3K]にふくめてよいと。■ハラナが特に着目するのは、医師と弁護士だ。なぜか?
■医師は、HIVをはじめとする感染症の最前線にいる。たくさんの保菌者とつきあわなければならないために、結果としてかなりの抗体が体内にできあがるとはいえ、やはりリスクにつねにさらされているわけだ。「自分のことを一番理解してくれていると信じていたのに」といった不幸な逆上を一身にあびて、死傷した医師もすこしだけど、みみにする。激務にもかかわらず、むくわれることがすくない、小児科・外科は、近年、医学部生内の志願者が激減して、先生方がひきとめにおおわらわ、ともきく。■弁護士だって、オウム真理教に殺害された坂本弁護士のばあいは極端にしても、人生の破局やガケっぷちとつきあわねばならない、心身ともにキツいしごとだ。そのすじのヒトは、ときに刑務所ぐらしも当然と、わりきっているから、ときには、みずからの死傷事件につながりかねない。
■かんがえてみるに、医師・弁護士といった専門職は、一般に「高度な専門知識をもっているから」、「ヒトの生死にかかわる領域だから、エラい」とみなされているとおもうけど、ちがうんじゃないか? 「『エラい』ということにして、また報酬・待遇もそれ相応にしておかないと、責務の物理的心理的シンドさと、せなかあわせのリスクに、にげだす人物が大量にでる、あるいは、いい人材が充分にあつまらなくて、慢性的なひとで不足におちいる」って構造を、社会全体が無自覚に認識してきた結果なんじゃないか?■皮肉っぽいいいかたをすると、関西系の言語感覚でいう「エライ」という形容詞は、その心身のシンドさと責務のおもさを、かけことばしていると
(笑)。
■ハラナが、なんでこんなことをおもいついたかというと、検死とか司法解剖、救急医療にたずさわる医師とか、かなり物理的にキツイ状況に日常的に接してはずだし、はっきりいって感覚がプロフェッショナルな意味でマヒしないと、つづかないとおもったから。■それと、戦前戦後をとおして、教員/看護婦(現在は看護師)が一貫して「聖職」イメージでかたられてきたけど、職務のシンドさに比較して、あきらかに薄給だったという現実にきづいたからだ。■学校の先生のシンドさは相対的なもので、「もっとキツい職種はたくさんある」というこえはあるだろう。しかし、医師のサポート役として、かなり軽視されてきた看護婦さんたちの、退職率ってすごいよね。それは、賃金として女性のなかで、わるくはないといわれながらも、要は激務で、まともな家庭生活を維持するには、キツすぎるんだとおもう。■看護婦さんって、20代のときは、バリバリはたらくけど、30代以降もバリバリはたらくひとは少数だよね。それは、キャリア系と同等のキツさが自明視されているからだとおもう。にもかかわらず、総合職キャリアの女性たちみたいには、給与はよくない。だから、一生の仕事として、うちこめるひとは、ごくわずかになるんだよね。■結局、まちの開業医のところに勤務している看護婦さんたちのおおくは、こそだてが一段落した、30代後半以降の世代のパートづとめなわけ。■でもって、バリバリ系のわかい有能な看護婦さんが毎日直面している現場のなかには、それこそ救急医療現場とか、外科手術の最前線があったりするんだね。でも、そういった、「戦場」的空間でたたかう女性たちが年収1000万以上だなんて、きいたことがない。じゃ、彼女たちは、都市銀行の総合職の女性より、ラクな仕事なワケ? そんなはずないでしょ。■要は、看護婦さんたちの労働条件は、かなりキツい。感染症のリスクとか、いろいろかんがえると、やっぱり「3K」だよね。■でもって、お医者さんの仕事も本質的には「3K」。だけど、高級と名誉によって、一所懸命社会がヨイショして、人材を確保してきたと
(笑)。

■おととい著作権違反ギリギリの転載(笑)をした『たたかいの社会学』の一節でも、「医師/法律家/エンジニア/大学人など専門人をふくめたあらゆる人材に関して、文部官僚やほかの省庁の予定/予想だけでなく、社会全体が、人材を量的存在として把握し、需給動向に即したリクルートの増減を前提としている。社会が要する人材をみたすためには、どんな個人や個性が充足にあてられようと無関心なのである。一部特殊な技能とか、スポーツ芸能界のスーパースターのように、かけがえのない人材もマレにいるが、ほとんどは交換可能な量的存在でしかない……」って記述があった。■きっと、このようにかくと、「交換可能っていったって、程度の差がおおきい。交換可能性の水準のちがいごとに、待遇がちがうんだよ」って反論がでそうだ。たとえば「医師や弁護士は育成に時間と資金がたくさんかかるので、大量にそだてるといっても、ほかの業種とはケタがちがう。だから『先生』なのさ」と。■しかし、そうなんだろうか? たとえばロシアでは医師の社会的地位がたかくはなく、それもあってか、女性がおおいんだとか。あるいは中国の大学教授のばあい、一部をのぞいて待遇がわるく、副業なしに中間層的な生活は維持できないんだとか。タクシー運転手の方が所得がたかいときいたこともある。それで人材があつまるのか、少々心配な気もするが、なんとかなっているでしょ。社会の人材のリクルートなんて、そんなもんだとおもう。■かんがえてみれば、小説家とか画家、音楽家、ミュージシャンとか、めざしたひとのほとんどは本業でたべていけないし、大半が挫折していくよね。ボクシングなんて世界チャンピオンを数回防衛しないと赤字だっていったし。「俳人」「歌人」なんて人種で、「句集」「歌集」の印税でたべていけるひとなんていないらしい。でも、それもで、ボクシングの試合や俳句・短歌は充分感動をよべるんだよね。ファンはおおくなくても(笑)

■こんな風にかんがえてくると、「医師や弁護士が本質的にリスクがあって、『ひとよせ』のために待遇がいいんでは」という仮説がそんなに、とっぴでもないような気がしてこないか?■であるなら、「下積みの仕事」の待遇こそ、まっさきに改善すべきなんじゃないか? ■たとえば、遠洋航海の船員さん漁師さんたちの待遇はわるくないといわれるが、あたりまえだとおもう。家族とながいあいだ別居状態だし、遭難などもおおいんだから。それだけではなくて、急病患者がでても、ちかくの港町の病院までもたないことがおおくて、かなりの労災にのぼるらしい。遠洋航海の船舶には、医師を常駐させるべきだという議論をみみにしたことがあるが、当然だとおもう。■というか、自治医科大学が、学生の出身都道府県の無医村地区などに、お礼奉公に赴任することを前提にして設立されているのにならって、(新任医師だと、荷がおもすぎるが)船舶とか医師不足の地域に赴任することを義務づけたらどうだろう。当然、てあてをあつくね
(笑)。■看護婦(看護師)さんなんて、いまの待遇の2?3倍にしたら、いい人材がたくさん現役復帰するし、多忙をきわまる現場での医療ミスなども激減するとおもう。

■ともかく、「貴重な人材を厚遇する」とかいう、もっともらしげな「能力主義」「市場原理」ふりまわすんじゃなくて、「人手不足になりがちな空間は市場原理を加速させるように、てあてをあつく」というのが、あたらしい労働条件の基準になってほしい。■いまの「市場原理」ってのは、はたらくもののなかの自尊心ピラミッドを悪用して、「自分にはこの程度の労働条件が関の山だ」っていう〈あきらめ〉か、「タダばたらき同然かもしれなけいど、自己実現/夢追求のためには、しかたがない」っていう〈ひたむきさ〉を、いいように「くいもの」にしているとしか、おもえない。■それは、強者だけが得をする、体(てい)のいい詐欺行為だとおもう。


【追記2005/03/29】しりあいから、介護職員も看護師さんたちと同様、むくわれない職種だという主旨のメールをもらった。■「有資格、夜勤有りの不規則勤務、肉体的・精神的疲労度や伝染病感染のリスクは看護師と同じ」と。ホントそのとおりだとおもう。■おまけに、重度の認知症患者がおおい老人ホームなどだと「感謝されないし(伝わらないので)、病による悪言や妄言に対処しなければ」ならないんだとか。「なのに報酬は、いわゆるオフィスワークや接客業と変わりない。理想と現実のギャップが大きいのか、福祉系大卒の新入社員も次々と辞めていくそう」で、これでは、たしかに心身がもたないし、人材/経験が蓄積されていかないだろう。■「開発途上の職種とは言え、高齢者人口は増える一方なのだから、高齢者にスポット当てるだけじゃなく、従事者の待遇も改善していかないと、ミイラが累々とする日本も有り得ない」とは、至言だ。■貴重な現場情報、ありがとうございます。