■実は2週間まえ、「国民保護法」という、おそろしげな名称の法律が成立した(2005/06/14)。■「○○保護法」という なまえの法律っていうのは、オーウェルの『1984年』の「二重思考」よろしく、「△△支配法」の別称ではないかと、ハラナは うたがっている。「北海道旧土人保護法」=「アイヌ民族支配法」、「優生保護法」=「障碍者支配法」とかね。■リンク集にもあげておいたが、「国民保護法ウォッチャーズ」となのる ひとびとが【「国民保護法案」をご存知ですか?】というウェブサイトを運営していて、これを参考にすると、非常にヤバい状況が進行中であると、痛感する。
■当サイトの「国民保護法って?」というページを転載させていただく(改行・強調等は、ハラナ)。
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1. 法案では「武力攻撃が予測されるに至った事態」と認められると日本政府が判断すれば、「戦時」になります。でも判断のための情報がアメリカ産だとしたら、日本の主体性はどれだけ確保されるのでしょうか。

2. この法案はしかし、「戦時」だけを考えているのではありません。その前に社会を作り変えるのも目的です。「平時」、つまりふだんから、役所や テレビ局、赤十字病院などは「戦時」のための計画を作り、「戦時」にむけて 組織を整え、訓練をしなければなりません(*1)。住民参加の避難訓練も実施されます(*2)。自主防災組織や地域ボランティアが協力を要請される場面も考えられます。

3. 「戦時」に備える意味を国民に理解させる「啓発」、つまり教育をすることになっています(*3)。学校やマスメディアは、すでに「国防意識」や「愛国心」を強調してこの流れを先取りしているかのようです。極端に走りがちな日本のマスメディアや世論の前で、ひとりひとりの考えが守りきれるでしょうか。

4. 保護の対象としてまっ先に対応しなければいけないはずの高齢者や障害者、外国人のために、特別な手立ては考えられていません。

5. たてまえでは、「国民の協力は自発的な意志にゆだねられ強制はしない」となっていますが(*4)、協力しないと、土地や家屋が没収されたり、罰金を取られたり、懲役を課されたりします(*5)。これでも、「協力は自発的な意志にゆだねられ」ているのでしょうか。

6. この法案で国民保護の中心にあるのは「避難」です。でも、意見を求められた鳥取の自治体は、住民の全員避難は不可能と答えています。避難用の幹線道路を自衛隊が優先的に使うべきと総理大臣が判断したら、住民の避難はさらにむずかしくなります。そのへんは政府もわかっているのか、「屋内に避難する」(*6)とも書いてあります

7. 海や空からどこかの国が大規模な上陸作戦を展開することが前もってわかっている場合には、民族移動のような避難が意味を持つのかもしれません。でも政府は国会の答弁で、日本の近くにそうした能力のある国はないと答えています。また、なぜか「防空ごう」が出てきません。きっと空襲を想定していないのでしょう。

8. 原子力施設が攻撃された場合への対処方法には現実味がありません(*7)。各地に原子力発電所がある日本では、戦争になれば必ず狙われ、広い範囲にわたって壊滅的な被害が出るのは明らかです。つまり、そんな事態に対処する方法などないから書けない、というのが正直なところで、その結果、この法律では原子力施設への攻撃が、事実上、想定外になっているのかもしれません。
 
9. もしかして、アメリカの戦争に物も人も協力できる国作りを目指しているのでは、 と疑いたくなります。じっさい、次のような法案がいっしょに出てきました。
 ・「米軍行動円滑化法案」
 ・首相の判断で港湾・空港・電波などを米軍や自衛隊が優先的に使うことができる
  「特定公共施設利用法案」
 ・有事の際に役務も弾丸も米軍に提供できるようにする「ACSA改正案」など

 こんな法律が、今国会で十分な議論もなく成立してしまいました。法案を読み込んでいない議員も少なくなかったにもかかわらず。
 全部を読むのは大変ですが、目次から、関連のあるところに飛んで、そこだけ検討する。
それぞれの関心分野による分業はいかがでしょう。
 不明な点がある場合は、個別に御相談ください。可能な限りお答えします。

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*1:第34条(都道府県の計画)、第35条(市町村の計画)、
   第36条(指定  公共機関及び指定地方公共機関の業務計画)。第41条(組織の整備)
*2:第42条(訓練)
*3:第43条(啓発)
*4:第4条(国民の協力等)
*5:第81条(物資の売り渡しの要請等)、第82条(土地等の使用)、第84条(立入検査等)
*6:第52条(避難措置の指示)、第112条(市町村長の退避の指示等)
*7:第105条(武力攻撃原子力災害への対処)、
   第106条(原子炉等に係る武力攻撃災害の発生等の防止、
   第107条(放射性物質等による汚染の拡大の防止)、
   第108条(タイトルなし)
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■これって、「9・11テロ」後に、アメリカ合州国を 総なめにした、国防体制=支配システムにヒントをえた「有事法制」でしょ? ■それ以外に、うけとりようがない。■でもって、60年まえの沖縄戦の例をおもいだすなら、「国防=国体維持」が主目的であって、「国民保護」なんてこと、「2のつぎ」に あったら、いい方だ。■「原発の安全確保」とか、「自衛隊基地の防衛」なんて、「公共の福祉」のために、市民が「ささげもの」になることは、当然視されるだろう。
■でもって、
8.原子力施設が攻撃された場合への対処方法には現実味がありません(*7)。各地に原子力発電所がある日本では、戦争になれば必ず狙われ、広い範囲にわたって壊滅的な被害が出るのは明らかです。つまり、そんな事態に対処する方法などないから書けない、というのが正直なところで、その結果、この法律では原子力施設への攻撃が、事実上、想定外になっているのかもしれません。
とあるが、実は、さっそく法案成立をうけて、政府は美浜原発へのテロ対策が計画されている。■以下、『毎日新聞』から(下線部:ハラナ)。
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国民保護訓練:武力攻撃事態を想定、11月に福井で実施へ
 政府は14日、武力攻撃事態を想定した国民保護法に基づく自治体、住民参加の実動訓練を11月末に福井県で実施すると発表した。有事関連法制の一つとして昨年9月に施行された同法に基づく実動訓練は初めて。住民の自主参加を前提に、有事の際の住民避難、連絡調整などについて国、自治体、住民の連携を図り、他の自治体のモデルケースとする考えだ。

 訓練は、同県の美浜原子力発電所が軍事訓練を受けた武装集団(ゲリラコマンド)による攻撃を受け、周辺環境に影響を及ぼす恐れがあると想定。政府が「武力攻撃事態等」と認定し、県を通じて住民避難を市町村に指示。警察、消防、自衛隊が役割を分担して避難誘導、交通規制、ゲリラコマンドの警戒などにあたる

 国民保護法は、県や市町村に住民避難のための国民保護計画策定を義務付け、努力規定として同計画に基づく訓練実施を求めている。福井県が国内最多の原発を抱え、国民保護計画をいち早く策定するなど取り組みに熱心なことから、全国に先駆け国、県、関係市町村が共催で実施する。

 住民の訓練参加は自主判断となるため、同県は今後、事前の説明会などを開き、住民や医療機関などの指定公共機関に訓練への参加を呼びかける。同県で毎年実施されている原発の防災訓練の参加(行政約1500人、住民約300人)と同規模を見込んでいる。【野口武則】

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■同様の記事は、『朝日新聞』でも報じられている福井の原発にゲリラ攻撃想定 国民保護法の実働訓練,2005年06月14日13時11分)。
■懸念の第8項、「原子力施設が攻撃された場合への対処方法には現実味」がないという、指摘は、たぶん ただしい。■単に、「海や空からどこかの国が大規模な上陸作戦を展開する」「能力のある国はない」と、米国の「核のカサ」の もとに かくれおおせていると、タカをくくっている連中は、実は、「原子力施設が攻撃された場合への対処」など無用と きめてかかっている。■そのくせ、「『平時』、つまりふだんから、役所や テレビ局、赤十字病院などは『戦時』のための計画を作り、『戦時』にむけて組織を整え、訓練をしなければ」と、もっともらしい理由を もちだしたにすぎないのだろう。■北朝鮮のテポドン発射を、迎撃ミサイル配備構想につかえると、てぐすねして まっていた連中(梅林宏道『在日米軍』岩波新書)が、実験=誤爆による、原発施設直撃というリスク計算を していなかったとしたら、なんて 無責任で 卑劣で アホな連中だ。
■もし、本気で「国防」「国民保護」という理念を徹底するなら、自分たちも信じてなどいない「軍事訓練を受けた武装集団」による攻撃といった、空想的な想定ではなく、おきてフシギでない「原発震災」のために、最小の被害ですませるための 非難体制の構築が急務のはずだ。■ちなみに、浜岡原発については、インターネット新聞JANJANで、「浜岡原発は自爆テロにさらされている?」という記事がのっているんだが……。
■リスク論的な 冷静な 比較考量ではなく、「非常時」体制を におわせることで、支配体制を正当化・強化しようというのは、「総動員体制」と いわれても しかたがないだろう。