■きのう、「国民保護法」っていう、あやしげな法律が成立したこと、それにそって、さっそく「有事=総動員体制」が 構想され、訓練が計画されていることを、かいた。■この「総動員体制」に反対するひとびとの懸念の第1は、つぎのようなものだった。

1.法案では「武力攻撃が予測されるに至った事態」と認められると日本政府が判断すれば、「戦時」になります。でも判断のための情報がアメリカ産だとしたら、日本の主体性はどれだけ確保されるのでしょうか。

■でもって、「アメリカ産」の情報に付随するのが、ヨーロッパの同盟国、イギリスの動向だよね。■国民に異論はあっても、ブレア政権(だけじゃないけど)はブレることなしに、対米全面協力体制だから。■「イラク戦争」という茶番劇でも、それは、いかんなく発揮された。コイズミ政権(だけじゃないけど)もそうなのかもしれない(笑)。
■もう1か月半も まえになるが、リンク集にもあげてある、「ヤパーナ社会フォーラム」というウェブサイトでは、安濃一樹さんが、「イギリス政府の機密文書が証明するイラク侵略という巨大な犯罪」という、文章を発表している。■イギリスの新聞がすっぱぬいた機密文書の翻訳と解説だ。■この文章は、リンク集にあげてある、「ジェラス・ゲイ|江原 元のページ」のページをはじめとして、実は、たくさんのウェブサイトが引用/転載している。■いつもどおり、強調箇所は、ハラナ。■転載した文章にコメントはつけない。ただ、このスキャンダルが 今後の国政政治の動向に どう影響をおよぼすか、注目しない(ウェブサイト以外は、反応がにぶいような 気がする)。■それと、合州国大本営発表と「国民保護法」やらとの連動を、政府当局が どうでっちあげるか、メディアが どうチョウチン記事をかくか、注意しておこう。
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2005年5月14日

5月1日、英サンデータイムズ紙がイギリス政府の機密文書を掲載した<リンク:http://www.timesonline.co.uk/article/0,,2087-1593607,00.html >【1】。議会選挙を背景としてリークされたこの文書は、イラクに対する攻撃と占領が国際法に反する犯罪行為であることを証明している。

内部からの告発や証言はこれまでにもあった。そのつど、アメリカやイギリス政府がいかに腐敗し無能で残忍であるかが明らかにされたが、政府は情報操作(スピン)が巧みで、権力に従順な企業メディアの協力をえて、いつのまにか批判をはぐらかしてしまう。

イラクをめぐる世界の情勢に関心を持ち、信頼できる資料や論説・証言を調べた人ならだれでも、イラク侵略が不法行為であることを「知っていた」けれど、どれほど説得力ある論証を重ねても犯罪を証明することはできなかった。しかし、今回リークされた秘密メモは、イラク侵略という巨大な犯罪をアメリカとイギリスが共謀して犯したことの確かな証拠となる

メモは、2002年7月23日に首相官邸で開かれた会議の内容を要約したものだ。会議に招かれたのは首相の側近と外交・情報・軍事・法律を担当する閣僚だけで、他の大臣たちは会議があることも知らされていなかった。

メモの核心となるのは、MI6(アメリカのCIAに相当する)のディアラブ長官による次の発言である。

──アメリカ政権の態度が明らかに変わってきた。武力行使はもはや当然だと見なされている。攻撃を正当化するために、テロリズムと大量破壊兵器を同時に[サダム政権と]結びつける。しかし、政策に合わせて情報を作り上げ、事実をねじまげているだけだ──

ブッシュ政権がイラク侵略を正当化するために、サダム政権とアルカイダの関係や大量破壊兵器の脅威を利用すること、そしてそれがすべてウソであることをイギリス政府は(そして、おそらく世界の数多くの政府も)知っていた。ストロー外相は、イラクを侵略する「理由が薄弱だ」として、次のように説明している。

──サダムは近隣諸国の脅威とはなっていないし、大量破壊兵器を開発するイラクの能力はリビア・北朝鮮・イランよりも劣る──

その上でストローは、武器査察団を受け入れるかどうか、サダムに最後通告を出すよう国連に働きかけるべきだと対策を提案し、サダムが拒絶すれば攻撃する理由となることを示唆した。つまり、国連のイラクに対する通告は、戦争を回避するためではなく、イラク侵略を正当化するために仕組まれたものだった。

それで法的な根拠がえられるのだろうか。ゴールドスミス法務長官の次の証言に注目しよう。

──イラクの政権交代がいかに望ましく思えても、それだけでは軍事攻撃の法的な根拠とはならない──

イギリス人が好む乾いたユーモアだが、長官が意味したことは、ブレア首相も会議に顔をそろえた面々もよく承知していたに違いない。侵略戦争は国際法に反する。もっとも厳しく裁かれる大罪である。ニュルンベルク裁判の判決文には次のように記されている。

──戦争は本質的に邪悪なものである。その影響は、交戦国の間にだけに留まらず全世界に及ぶ。よって、侵略戦争を遂行することは、単なる国際犯罪ではなく、究極の国際犯罪となる。あらゆる犯罪を引き起こす侵略戦争は、すべての悪を内包するという点で、他の戦争犯罪と隔絶している──

これを「平和に対する犯罪」と呼び、「人道に対する犯罪」と並ぶ大罪と規定している。ニュルンベルク裁判と東京裁判で、「平和に対する犯罪」を問われた戦犯は全員が絞首刑を宣告された。

アメリカは、自国の利益のために国際法の精神を踏みにじり、国際刑事裁判所(02年4月に効力発生)の権威も認めていない。しかし、ヨーロッパの諸国は国際法を尊重している。イギリスも例外ではなかった。だがゴールドスミス卿は、不法行為を憂慮しながらも、攻撃を正当化するために何らかの法的根拠を用意する役目を引き受けている

会議の前に参加者に渡された報告書(これも秘密メモと同時にリークされた)によると、会議に先立つ4月にクロフォードへ招かれたブレアは、ブッシュとの会談でアメリカの計画に協力することを約束していた。イラクを侵略して占領する正当な理由がないことを心配する前に、外務省やMI6の報告を聞く前に、参戦することを約束していた。もちろん、この約束は内閣に計って決めたものではない。労働党の議員たちも知らなかった。イギリス市民に対しては、「イラク攻撃については何も決まっていない」と繰り返していた。

会議はイギリスが軍事攻撃に加わることを前提としている。だから、ブレアは次のように言い切った。

──政治状況が整えば、国民はイラクの政権交代を支持するだろう。そこで、重大な問題がふたつある。まず、この軍事作戦が成功するかどうか。そして、作戦を支障なく進めるために、政府がどのような政治戦略を立てるべきか──

「政治状況が整えば」とは曖昧な表現だが、リークされた別の文書を見ると、イギリス首相はアメリカ大統領に戦争の条件をもっとわかりやすく説明している。

──諸国の協力をえて連合軍を組織すること。そして、世論を作り上げること──

ここから両国政府による情報操作が始まる。企業メディアは政府のプロパガンダをさらに増幅して何度も流しつづけ、人びとの恐怖や怒りを駆り立てようとした。それでも、私たちは覚えている。市民は戦争を支持しなかった。アメリカやイギリスだけでなく、全世界の市民が連帯した。戦争に反対し抗議の声を上げた。

権力を握る者たちが真実を覆い隠し、歴史を塗り替えようとしても、私たちは忘れない。サダム政権が受け入れた武器査察団をバグダッドから退去させたのはアメリカだった。イラクではすでに10万人の命が奪われ、その何倍もの人びとが傷ついた。国家の富は多国籍企業群に略奪され、国土は劣化ウラン弾により永久に汚染された。占領軍に対する抵抗運動は激しくなるばかりで、イラクは大規模な内戦へと突き進んでいる

しかし、2002年7月23日、ロンドンのダウニング街にある首相官邸では、国際法を無視し民主主義を忘れた者たちが、密かに戦争の準備を始めていた。アメリカ・イギリス連合軍の爆撃によって、バグダッドが燃え上がる8か月まえのことだった

【1】<リンク:http://www.timesonline.co.uk/article/0,,2087-1593607,00.html >The Secret Downing Street Memo, The Sunday Times - Britain (May1, 2005).

ダウニングストリート(英首相官邸)メモ
秘密情報につき厳重に親展とすること。閲覧はイギリス政府の要人に限る。

送り先/デイビッド・マニング [首相つき外交政策顧問]
差出人/マシュー・ライクロフト [外交政策担当補佐官]
日付/2002年7月23日
メモ番号S195/02

他の配送先:
国防大臣 [ジェフ・フーン]
外務大臣 [ジャック・ストロー]
法務長官 [ピーター・ゴールドスミス]
リチャード・ウィルソン卿 [内閣官房長官]
ジョン・スカーレット [内閣府統合情報委員会(JIC)議長]
フランシス・リチャーズ [政府通信本部長官]
CDS [マイケル・ボイス、統合参謀本部議長]
C [リチャード・ディアラブ、情報局秘密情報部(通称MI6)長官]
ジョナサン・パウエル [首席補佐官]
サリー・モーガン [政治戦略担当補佐官]
アラステアー・キャンベル [首席報道官]

イラクに関する首相会議(7月23日)について

7月23日、マニング卿は、他の配送先として上に名前をあげた関係者とともに、イラクについて話し合うためブレア首相と会議を開いた。

この記録の扱いには細心の注意を払うこと。メモをコピーしてはならない。会議の内容を知っておく必要があると認められた者だけに閲覧を許す。

ジョン・スカーレット[統合情報委員会(JIC)議長]が、イラクに関する情報とJICによる最新の分析を要約した。サダム政権は残虐で、恐怖によって支配している。政権を倒すには大規模な軍事攻撃を行うしかないようだ。サダムは恐れている。しかし、空と陸から攻撃されるだろうと予測してはいても、攻撃が間近に迫り、しかも圧倒的な規模になるとは考えていない。イラク政権内の意見によると、近隣諸国はいずれもアメリカに味方する。イラク軍は一般兵士の志気が低い。サダムを支持する国民はおそらく少数派である。

C[ディアラブMI6長官]が、先日ワシントンで行われた[ジョージ・テネットCIA長官との]会談の様子を報告した。アメリカ政権の態度が明らかに変わっている。武力行使はもはや当然だと見なされている。攻撃を正当化するために、テロリズムと大量破壊兵器を同時に[サダム政権と]結びつける。しかし、政策に合わせて情報を作り上げ、事実をねじまげているだけだ。NSC(アメリカ国家安全保障会議)は国連での交渉ごとなど我慢できないし、[理事国を説得するために]イラク政権の記録をまとめて公開するつもりもない。またワシントンでは、軍事攻撃が終わったあとの対策について何も議論されていないに等しい。

CDS[ボイス統合参謀本部議長]によると、CENTCOM(米中央軍司令部)において、米軍の戦略担当者たちが8月1日と2日に、ラムズフェルドが3日に、ブッシュが4日に、それぞれ攻撃を指令する。

アメリカには大きく分けて二つの選択がある。

(a)準備を整えた上での開戦。兵士25万をゆっくりと配備し、短期(72時間)の空爆を行う。そして南の国境を超えバグダッドまで侵攻する。開戦までに90日を要する(準備に30日、クウェートへの配備に60日)。

(b)急激な開戦。中東にすでに配備されている兵力(3x6000)を使い、空爆を続ける。この空爆を正当化するために、イラク軍の挑発行為に応戦するかたちで攻撃を開始する。開戦まで60日を要するが、空爆はもっと早くから行う。この選択は危険を伴う。

いずれの選択を取るにしても、ディエゴガルシア島[英領]とキプロス島[基地がある地域のみ英領]の基地が必要なので、アメリカはイギリス(およびクウェート)の協力が不可欠だと見なしている。トルコを始めとする湾岸諸国も重要だが、協力が得られなくても大きな支障とはならない。イギリスには参戦する上で三つの選択がある。

(1)ディエゴガルシア島とキプロス島の基地を提供する。加えて、特殊部隊が編成する3個飛行中隊を投入する。

(2)上に加えて、海軍と空軍を投入する。

(3)さらに加えて、陸軍4万兵を投入する。おそらく米軍とは別行動で、トルコの国境を越え北部から侵攻し、イラク軍の2個師団を釘づけにする。

国防相[フーン]によると、アメリカはサダム政権に圧力をかけるために「活発な活動」をすでに始めている。いつ開戦するかまでは決まっていないが、アメリカ議会選挙の30日前をめどにして、来年1月に武力行使が始まる可能性が高い。

外相[ストロー]は、今週この問題についてコリン・パウエル[米国務長官]と会談する予定だとして、次のように意見を述べた。開戦の期日こそ決まっていないが、ブッシュがすでに武力行使を決断したことは間違いない。しかし、攻撃する理由が薄弱だ。サダムは近隣諸国の脅威とはなっていないし、大量破壊兵器を開発するイラクの能力はリビア・北朝鮮・イランよりも劣る。だから、国連の武器査察団を再び受け入れるかどうか、サダムに最後通告を突きつける計画を練るべきだ。そうすれば攻撃を正当化する法的な根拠を得ることもできるだろう。

法務長官[ゴールドスミス]は、イラクの政権交代がいかに望ましく思えても、それだけでは軍事攻撃の法的な根拠とはならないと主張した。そして、考えられる法的根拠を三つあげた。まず、正当防衛としての攻撃。つぎに、人道介入としての攻撃。そして、UNSC(国連安全保障理事会)の議決にもとづく攻撃。最初のふたつはイラクに当てはまらない。3年前に出された安保理決議1205にもとづいて攻撃することも難しい。もちろん、このような状況は変わるかもしれないが、と長官は示唆した。

首相[ブレア]は、サダムが武器査察官を拒絶すれば政治と法律に関する問題は大きく違ってくると指摘して、次のように述べた。政権交代と大量破壊兵器は結びつけられている。大量破壊兵器を製造するような政権は倒さなれればならないということだ。リビアやイランに対しては、イラクとは違った戦略をとる。政治状況が整えば、国民はイラクの政権交代を支持するだろう。そこで、重大な問題がふたつある。まず、この軍事作戦が成功するかどうか。そして、作戦を支障なく進めるために、政府がどのような政治戦略を立てるべきか。

第一の問題について、CDS[ボイス議長]は、アメリカの作戦計画がうまくいくかどうかは今のところ判断できないと述べた。たとえば、開戦の当日にサダムが大量破壊兵器を使ったらどうなるのか、バグダッドが陥落せずに市街戦は始まったらどうするのか、われわれは質問を重ねているところだとした。

国防相[フーン]は[ボイス議長に向かって]、サダムがクウェートやイスラエルに対して大量破壊兵器を使う可能性があることも話していただろうと指摘した。

外相[ストロー]は次のように述べた。成功の見込みがない限り、アメリカは軍事作戦を遂行しないだろう。よって、軍事戦略に関してはアメリカとイギリスの利害が一致している。しかし、政治戦略となると米英に違いが出てくる。アメリカに抵抗されても、イギリス政府は[国連を通して]サダムへ最後通告を出すという方策を慎重に模索するべきだ。サダムは国連の要請に強硬な対応を貫くと思われる。

ジョン・スカーレット[JIC議長]は、サダムが武器査察団をまた受け入れるとすれば、それは攻撃を受ける恐れが高いと確信した時だという考えを示した。

国防相[フーン]は首相[ブレア]に向かって、もしイギリスの参戦を求めるなら、決断を早く下す必要があると主張した。また、アメリカ政府には最後通告に手間をかける意味はないとする意見が多いと注意を促して、首相がブッシュに政治の状況を整理して説明することが重要だと述べた。

結論

(a)イギリスがいかなる武力攻撃にも参加することを前提として活動しなければならない。しかし、確固とした決断を下す前に、アメリカによる作戦計画の全体像を把握しておく必要がある。CDS[ボイス議長]は、イギリスがどのような体制で参戦するかについて検討していることをアメリカ軍に伝える。

(b)首相[ブレア]は、作戦を準備するのに必要な経費を確保することができるかという問題について再考する。

(c)CDS[ボイス議長]は、今週中に、[米軍の]軍事作戦の全容とイギリスの軍事支援がどのようなものになるかについて、詳細な報告書をまとめて首相へ送る。

(d)外相[ストロー]は、武器査察官たちの経歴について首相に報告書を送る。また、[国連が]サダムへ最後通告を出すように慎重に少しずつ働きかける。トルコを始めとする中東諸国やEU主要国の見解や立場について、首相に助言を送る。

(e)ジョン・スカーレット[JIC議長]は最新の情報分析をまとめて首相に送る。

(f)法律上の問題を忘れてはならない。よって、法務長官[ゴールドスミス]は、FCO[外務省]とMOD[国防省]の法律顧問と協力して、法律に関するアドバイスを検討する。

(会議の結果を踏まえて行われる上記の任務については、それぞれに別個の書類で委託してある。)

マシュー・ライクロフト

原文/The Downing Street Memo

翻訳/安濃一樹

漏洩したメモ全8部を保管するページ

( )は原文の挿入語句。あるいは英文略称名とその和訳。
[ ]は訳文の補助語句。

編集/安濃一樹
ヤパーナ社会フォーラム
http://japana.org/
mailto:kazuki@japana.org
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