■「警察官職務執行法」とは、その第1条1項に「警察官が警察法(昭和29年法律第162号)に規定する個人の生命、身体及び財産の保護、犯罪の予防、公安の維持並びに他の法令の執行等の職権職務を忠実に遂行するために、必要な手段を定めることを目的と」した法律である。■しかも、第2項で「この法律に規定する手段は、前項の目的のため必要な最少の限度において用いるべきものであつて、いやしくもその濫用にわたるようなことがあつてはならない」って、とことわっていることを、みても、立法の精神は、あくまで、いきすぎを いさめるよう、権力の暴走防止といえるだろう。■ところが、現実は、そうでもない。「必要な最少の限度」を 完全にこえてしまう、おバカな警官がでるわけですよ。

■国会議員でもあった、弁護士の、白川勝彦さん、ウェブサイトをおもちだが、「忍び寄る警察国家の影」って、ぞっとするような文章がある【リンク注は、ハラナ】。

★ちょっとむさい格好で渋谷に
 私が新潟県中越地震の視察から東京に帰ったのは11月8日の午後でした。風邪気味だったので、東京に帰ることにしたのです。【中略】風邪薬を飲んで、厚着をしてベッドで寝たのですが、だんだんひどくなるばかりです。1日も休めば治るだろうと思ったのですが、なかなか治らず丸4日寝込んでしまいました。
 11月11日、午前6時過ぎに私は目覚めました。体調は昨日よりはいくぶん良いものの、依然として本調子とはいえない状態でした。……
【中略】
 4時間くらいぐっすり眠りました。10時ころ目が覚めました。下着がまたびっしょりと濡れていました。これを脱ぎ捨て、新しい下着を身に付け、外出着に着替えて、私は渋谷に向かいました。3日間も風呂に入っていないので髪は乱れていまし、髭ものびていました。ですから、普段は地下鉄なんですが、むさ苦しい格好なのでタクシーで行きました。どうしてもその日に振込まなけければならない用件があったからです。

★4人組がグルリと取り囲む!
 タクシーを降り、2箇所の金融機関に寄り、振込みを済ませました。熱のためでしょうか、すごく喉が渇いていました。バニラシェイクを飲みたくてなって、馴染みのモスバーガーに行こうと歩いているその時でした。何処となくきた厳つい格好をした4人組に、私はいきなりグルリと囲まれました。私は、反射的に両手を入れていたベストのポケットから手を出し、身構えました。タバコとライターが左手に、右手にはライターがありました。4人組はズボンのポケットを中のものを見せてくれというやいなや、私のズボンのポケットの上を強く触ってくるのです。一瞬何が起きたのか、状況を把握するのに時間がかかりました。私が4人組の襲撃を受けたのは、ハチ公前交差点から100メータ―ほど道玄坂を登った広い歩道で、通行人も多いところでした。
 白昼堂々、突然4人組にグルリと囲まれ、いきなりズボンのポケットの中にあるものを見せろといわれて、身体検査よろしく体に強く触られたのです。私は腕に自信にあるわけではありませんが、「お前たち一体何なんだ、冗談じゃない」といって突き飛ばすなり、ぶん殴りたくなりました。でも、幸いにも私は冷静さを少し残していました。それをやったら、彼らの思う壺だと判断する思考能力が、働いていたのです。

 そうなのです。私を白昼堂々襲ってきた4人組は、警察官だったのです。少しむさ苦しい格好だということは自覚していました。だからといって警察官の職務質問を受けなければならない状況ではないということは明らかでした。それも質問などというものではなく、いきなり4人にグルリと取り囲まれ、ズボンの左右のポケットと財布の入っている後のポケットを、4人の屈強な男に交々強く触られたのです。彼らが制服を着ていなければ、反射的にこれを突き飛ばすなり、殴り飛ばすなりして、私は自分自身を守ったでしょう。しかし、この自然な行動を私がとれば、彼らが待ってましたとばかり公務執行妨害で私を逮捕することは、火を見るよりも明らかです。私は、弁護士である自分に戻っていたのです。

★執拗に身体検査をしようとする
 私は、私のズボンのポケットを上から強く触ろうとする彼らの手を払いながら、大きな声でこういいました。
    「君たちは何で私のポケットの触るのだ。何で君たちにポケットのものや財布を見せなければならないのだ」
 彼らの中でいちばん歳をくった男がいいました。
    「あなたは、いま手を入れていたチョッキのものは、見せてくれたじゃないですか。怪しいものをもっていないのならば、ズボンのポケットの中のものも見せなさい。なぜ、見せられないのですか。見せなさい。財布を出しなさい」

 そういいながら、執拗に私のズボンのポケットに触ってくるのです。私はだいぶ冷静になってきました。この手を払いのけることは正当防衛的な行動ですから、公務執行妨害にはなるまいと思いながら、強く払いながら大きな声でこういいました。
「私は、見せる気がない。何で財布まで見せなければならないんだ」
 それでも、この4人の警察官は、ズボンのポケットの中を見せなさい、財布を見せなさいといって私を取り囲み、そこを動こうという私の自由を完全に奪っているのです。そして、こりもせずに何度も何度もズボンのポケットの上を強く触り、中のものを確かめようとするのです。「何で触るんだ」と詰問すると、「触るのは職務質問として許されているんだ」と開き直るのです。正確な時間はこういう状況ですから分りませんが、おそらく3?4分くらい激しく揉み合い、いい合いました。

★「怪しいものがないのなら、見せなさい」
 私はこういうことをしながらも、次第に極めて冷静になってきました。そして、本当に空恐ろしいものに遭遇した自分に気付きました。私は弁護士ですし、また国家公安委員長をしましたので、職務質問の有用性も問題性もよく知っています。しかし、いま私が受けていることがこの職務質問であるとしたならば空恐ろしいことであり、曖昧に済ますことはできないと思ったのです。怖いというのは、警察官が怖いということでは、もちろんありません。こんなことが職務質問として行なわれていることが、空恐ろしく思えたのです。こんなことは許されてはならない、ここはじっくり勝負しようと、私は考えはじめたのです。今度は「こっちの方が執拗に食い下ってやろう」と覚悟を決めました。

 私は、なぜ私のポケットの中を見せなければならないのか、何度も何度も聴きました。彼らの答えは、「怪しいものがないのなら見せてください。見せられないのは、怪しいものをもっているからじゃないですか」というのです。「なんで私の体に触るんだ」と聴くと、触るのは許されているというのです。いくら見せなさいと言われても、見せるつもりは私にはもうまったくありません。身体検査的に私の体に強く触ることは、職務質問として許されないことなので、これも絶対に許すつもりはありませんでした。

   「ポケットの中の物を見せなさい、財布を見せなさい。なぜ見せられないのですか。ますます見なければなりません。体に触るのは、許されているのです。弁護士さんに相談するという人もいますが、弁護士さんに警察官にいわれるとおりにしなさいといわれて、皆さん協力してくれるんですよ」
 こんなことをいいながら、彼らは少しも態度を変えないのです。囲みを解こうともしません。正直いって私の我慢も限界に近づきつつあったのですが、無理してこの囲みを解こうとすれば、彼らが公務執行妨害として私を逮捕することは明白でした。人通りのある中、こんなことを10分以上繰り返しておりましたが、埒があかないことは明らかでした。彼らの言葉や行動は、棒を飲んだようにまったく変わらないのです。
 私は、別にズボンの中に何も怪しいものなど持っていませんでした。家の鍵と小銭が入っていただけです。なぜ財布を見せろといったのか理解に苦しみますが、財布には4万ちょっとの現金と免許証と病院の診察券、それにパスネット(地下鉄のプリペイドカード)があるだけです。先ほどの振込みの控もありましたが、見られたからといって別に困るほどのものでもありません。ですから、私が素直に見せればそれで終ったかも知れません。また、それで終らせるのが賢明なやり方かも知れません。しかし、私にとって、これはもうそういう問題ではなくなっていたのです。こんなことがまかり通っていたのでは、自由も人権もあったものじゃないと私は考えていたのです。彼らも、よりによって変な人物に関わってしまったものです。

★警察署か交番か
 とにかく20分くらい同じ場所で4人にグルリと囲まれていた状態から、私は道路の反対側に移ることがようやくできました。しかし、4人の警察官が私をグルリと取り囲んでいるという状況はまったく変わりません。私には逃げるつもりなどまったくありませんでしたが、タクシーを止めてこれに乗り、渋谷署に行くことは4人に完全に阻止されていました。こんな状態ですから、第一タクシーが止まってくれません。1、2台は止まってくれたのですが、私が乗り込むことができないので、そのまま先に行ってしまいます。私の行動の自由は、事実上奪われているといってもいいのでしょう。私が彼らの職務質問から解放され、自由にどこかに行くことができなかったことはいうまでもありません。

 こんなことを10分くらいしているうちに、彼らも私を交番に連れて行くのはさすがに諦めたようです。後はどうやって渋谷警察署に行くかという問題です。渋谷署は、いま私たちがいるところから1キロメートルくらい離れたところにあります。私は警察署長に会って、彼らがやったことを包み隠さず話し、反省してもらいたいから警察署に行くつもりですし、本気なのです。逃げる気など毛頭ありませんし、いまさら解放されても私は渋谷署に行くつもりでした。いくら彼らが それは勘弁してほしいといったって、今度は私の方に譲る気がないのです。
 渋谷署に行こうというのですが、今度はその方法が問題になっているのです。

「私は、いま風邪をひいているので、渋谷署まで歩いていくのは正直にいってシンドい。だから、タクシーで行く。君たちも乗ってもいい。もちろん、お金は私が払う。なんでこれがいけないのか?」

「それはできないのです。私たちはタクシーには乗れないのです。パトカーを呼びますから、それで行きましょう」

 こう繰り返すだけなのです。【中略】

 「冗談じゃない。パトカーなんかにのれるか! 私はタクシーで行く」というと、「私たちはタクシーには乗るわけにはいかないのです。それでは、歩いて行きましょう」というのです。私は、風邪がひどくやっとベッドから這い出てきたのですから、1キロちかくある渋谷署まで歩いていくのは本当にシンドいのです。このことを何度話しても、彼らの答えはまったく同じなのです。

 タクシーかパトカーか、車でいくか歩いていくかの押し問答です。こんな押し問答を5?6分、車がひっきりなしに通る交差点の路上で行ないました。交差点ですから、信号が変わるたびに多くの人が通ります。私だって、こんなことをしているのは嫌になってしました。だからといって、パトカーを差し向けて下さるというご好意を受ける訳にもいきません。また歩いていくのは、シンドいのでOKという訳にもいきません。どうして、こんな石頭を相手にしなければならないんだろうと苛立ってきました。

★警察官に付き添われて渋谷署へ
 彼らもさすがに参ったのでしょう 。4人組の一人が無線で上司と相談しれいるようでした。間もなくして許可が下りたらしく、私がタクシーに乗っていくことを了承しました。手をあげてタクシーを止めました。一人が前に乗り、もう一人が私の側に乗らせてもらいますというのです。そんなことは、最初から私は当然のこととしていましたので、許可するもしないもないのですが、逆に私はこういいました。
   「後に二人乗らなくていいのか? 君たちは私がタクシーに乗って、怪しいものをタクシーの中に置いていく危険があるから、タクシーはダメだといったんのだろう。私の左右に二人乗ればいいじゃないか。お金は私が払うから」と同乗を勧めたのですが、「いえ、それはいいんです。逮捕ではないんですから」といって、一人だけが私の左側に乗りました。

 彼らも状況が少し変だなと気付きはじめたようです。いままでに比べると態度がだいぶ丁寧になってきました。【中略】車中で、

   「君たちはいつもあんな風な職務質問をするのか? 日本という国も恐ろしい国になったもんだなぁー。困ったことだ」
といいますと、

   「私たちは、この渋谷の治安を守らなければならないのです。拳銃を持っている者もいれば、薬物を持っている者もいるのです。ですから、職務質問をして未然に犯罪を防止しなければならないのです」
というような趣旨の話をさかんにするのです。
 彼らをこれ以上責めても、悪いことをしているという認識がないのですから仕方がないと思い、私は取り合わないことにしました。彼らと30分ちかく押し問答する中で、彼らが今日私にしたことを正当な職務行為だと信じ切っていることはよく分りました。私がいくら彼らにいって聞かせても、彼らが私のいうことを聴かないことは明らかです。私は、このような職務質問をさせている警察署長に現状を話し、これを改めさせるために渋谷署に向かっているのですから。


■警職法上、警官たちが どれほど マズいことをしでかしたのか、法律家からみた 分析は、本文を ご覧いただくとしよう。■警察署での、警察官僚たちへの、お説教も すかっとする
(笑)。■が、問題は、普通の市民なら 白川さんみたいな、冷静な対応が ムリって点だ。

★偶然は2度続けて起きない
 さいとうたかをの『ゴルゴ13』は、私が学生時代から好きな劇画です。もう30年以上も続いている連載漫画です。その中の名作のひとつに、「偶然は、2度続けて起きない」といって、正体不明なターゲットを暴き出す作品があります。私が体験した職務質問を単なる偶然とみるか、考えてみました。そして、たまたま私が粗暴かつ無礼(私にいわせれば違法)な職務質問に引っ掛かったのではなく、このような職務質問が一般的かつ日常的に行なわれていることの証拠だという結論に至りました。

 私は、このことによって、何の被害もありませんでした。むしろ途中からしたたかな観察者としての目をもちながら、彼らと対峙し行動しました。これは、私が弁護士であったために、職務質問というものの限界をおおむね知っていたからです。しかし、一般の人々が同じような知識をもち、冷静に行動できるかどうか問うた時、そのような人がいたとしても、非常に少ないのではないかと考えざるを得ませんでした。Due Process Of Law* の精神は、まだまだわが国ではそんなによく理解されていません。

 わが国では、テロへの恐怖は、まだそれほど切迫感がありません。しかし、犯罪の多発化や凶悪化には、多くの人が恐怖を感じています。かつてのような日本の治安に対する神話は、もはやありません。当然のこととして、警察には、その責任が問われています。日本の治安を守るためまた犯罪を検挙するために、警察官がその職務を遂行する上で多少の強権をふるうのは仕方ないのではないかという風潮が強くなっていることは、容易に想像できます。

 そういう中で、今回のような職務質問がなされたのでしょう。しかし、このようなことが許されるようになれば、日本という国はあっという間に警察国家となることは明らかです。警察国家になった時、その国の国民がどういうことになるか、これもまた明らかです。残念ながら、日本の警察にも、日本という国家に対して、私はそれほど楽観的になれないのです。そのような考え方は、決して危険思想でもなんでもありません。そもそも、自由主義というのは、権力への不信から出発した思想なのです。


* “Due Process Of Law”:「法の適正な手続」といった法思想概念。「実体的デュ?・プロセス理論」についての、新保史生 先生の解説参照。
■そうです。職務に忠実で、合法的だと信じてやまない警官による、警職法の逸脱は、普遍的現象です。しかも、弁護士さんとか 一部の例外以外、なすがままか、つかまるか、いずれかしかないのだ。■かれらの、「善意の暴走」を とめねば、警察国家化が どんどんすすんでしまう。それは『1984年』的空間だ。
■それにしても、白川先生、国会議員時代に、自治大臣国家公安委員長を歴任だったとは、皮肉だよね
(笑)