■前田富祺・野村雅昭編『朝倉漢字講座4 漢字と社会〔朝倉書店〕がでた。■「朝倉漢字講座」というのは、基本的に漢字存続派の 前田さんと、いずれ消滅する運命にあるとする野村さんという、漢字論の大物先生おふたりが、双方の人脈を動員して、漢字の過去/現在/未来をかたろうという、壮大な企画だが、?「現代の漢字」,?「漢字の未来」,?「漢字と日本語」,そして今回の ?「漢字と社会」と、まる2年めで、まだ完結していない。■「難産」ですねぇ。そして、たかい(笑)
■だって、前半の3巻が4800円で、新刊が5200円だよ〔+消費税〕。それも、新刊が以前の3冊とくらべて あつくもないことをみると、どうも、4800円なりでは、採算われっぽいことが みえてきて、ねあげしたんじゃないか?(笑) ■これじゃ、図書館以外、専門家と、お弟子さんしか、かわんでしょ?(笑)
■それはともかく、目次は つぎのとおり。

第1章 「常用漢字表」と国語施策
第2章 漢字の工業規格
第3章 法令・公用文の漢字使用
第4章 新聞と漢字
第5章 放送と漢字
第6章 学術情報と漢字
第7章 古典データベースと漢字
第8章 現代社会における漢字表現
第9章 国語教育と漢字
第10章 日本語教育と漢字


■それにしても、この「漢字講座」、企画の趣旨がよくわからない。■だって、3巻と5巻のラインナップは、こんな感じだよ。


?「現代の漢字」
第1章 文学と漢字
第2章 マンガの漢字
第3章 広告の漢字
第4章 若者と漢字
第5章 書道と漢字
第6章 漢字のデザイン
第7章 ルビと漢字
第8章 地名と漢字
第9章 人名と漢字
第10章 漢字のクイズ

?「漢字の未来」
第1章 情報化社会と漢字
第2章 インターネットと漢字
第3章 多文字社会の可能性
第4章 現代中国の漢字
第5章 韓国の漢字
第6章 東南アジアの漢字
第7章 出版文化と漢字
第8章 ことばの差別と漢字
第9章 漢字に未来はあるか

■このうち、第3巻「第1章 文学と漢字」「第5章 書道と漢字」は、現代から だいぶハミでているし、<第5巻「第1章 情報化社会と漢字」「第8章 ことばの差別と漢字」も、未来をかたっているというよりは、現状批判だ。4巻「第8章 現代社会における漢字表現」は、どうして第3巻じゃないんだろう? ■しかも、第5巻第2章?6章「インターネットと漢字」「多文字社会の可能性」「現代中国の漢字」「韓国の漢字」「東南アジアの漢字」は、「未来」というよりは、国際化って感じ(笑)。ま、国際化のなかに、日本語漢字の未来があるといえば、いえるけど、いずれにせよ、第3巻?5巻の、区分は、全然わからない。■どうみても、これらは「漢字表記をとりまく現代社会と国際化???」といった感じでないと、いかんのでは?
■論者の認識のムラも、たくさんみられる。というか、企画のなかで、正反対の議論を展開している巻さえある。どれとは、いわんけどね
(笑)。■ま、それはともかく、新刊である、第4巻は、「漢字と社会」とうたいながら、社会言語学者らしき筆者が、いない。
■第10章の「日本語教育と漢字」は、当然のように 日本語が第一言語でない学習者むけの議論しか展開していないし、漢字をどうおしえこむか、って発想しかない。おぼえきれないで、日本語表記に適応できない在日外国人とか、日本人の配偶者とか、どうすんの、って問題意識なんて、カケラもない。ま、期待する方が、まちがってるか?
(笑)
■第9章の「国語教育と漢字」も、当然問題ありあり。冒頭から、「漢字は日本人にとって宿命的なものである。漢字がなければ,ほとんど生活することができない。」ときた(笑)。おいおい、「漢字は日本生活者にとって宿命的なものである。漢字がなければ,ほとんど生活することができない」って、かきかえてみろよ。おそるべき排外主義に無自覚だって、わかるかな? 島村直己先生。■あ、このかた、日本教育社会学会で、はずかしい報告された御仁だった(笑)