伊藤達也『検証 岐阜県史問題』〔ユニテ,2005年〕は、副題に「なぜ御嵩産廃問題は掲載されなかったのか」とあるとおり、岐阜県御嵩町の「御嵩産業廃棄物処理施設建設問題」が、2003年3月刊行の『岐阜県史』から削除されてしまった経緯を告発したパンフレットだ。■「御嵩産業廃棄物処理施設建設問題」とは、「NHK解説委員を経て、1995年岐阜県御嵩町町長に当選」した柳川喜郎さんが、「前町長時代にすすめられていた産業廃棄物処分場計画を一時凍結した昨年10月には、二人組の男に襲撃され瀕死の重傷 を負った」という凶悪事件をふくめた、典型的な産廃ビジネス=権力犯罪の一連の経緯のこと。
■この問題の一連の経緯は、『産廃でゆれた町 御嵩町のいま』の、「建設計画の経緯」「住民の主張」「その後」にくわしいが、これらの諸事実もふくめて、『岐阜県史通史編 続・現代』に おさめられる予定だった。■だが、目次をみればわかるとおり、「御嵩産業廃棄物処理施設建設問題」にかかわる記述は 存在しない。■もともと、第3部「第4章 環境問題と市民運動」には、第4節「産業廃棄物問題の激化と対応」と第5節「ごみ問題への対応と環境対策の進展」が予定され、実際、伊藤氏によって完成稿が提出ずみであったのに、最終段階の時間ぎれまぎわになって、記述に 異様な質・量の「修正要請」があり、伊藤氏が 以上2節を全面的にひっこめるという決断をくだし、それが了承されたのだった。
■「筆者の提出原稿の内容が最初に問題化したのは、初校ができあがっててき2002年秋のこと」。「岐阜県史編集室スタッフが訪れ」、「特に長良川河口堰問題、徳山ダム問題、御嵩産廃問題の原稿に対する質問や修正要請が提出された」。筆者の記憶におれば、「岐阜県庁への批判の厳しさを和らげてほしいという要望や、筆者が執筆に当たって参考にした文献等が市民運動側のもの偏りがちで、内容のチェックが甘いことへの指摘」だったそうだ
〔p.12〕
■それらの一部は、あきらかに執筆者の価値観への介入であり、おそらく、岐阜県庁の施策に あまめの判断をくだした記述を「正史」としてのこしたいという、県庁内部の意向がかげをおとしていたと、かんがえられる。かりに県史編集室スタッフの「よりよいものにしたいという純粋な気持ち」からでたにせよである。■それはともかく、著者は、なっとくできる部分につていは、修正をほどこし、しかし、「彼らの要請」が「県史編集室の総意なのか、編集スタッフとしての個人的なものなのか」わからなかったし、「「望ましい岐阜県史」の定義が関係者間で共有されていない中で編集室スタッフが現行の質的部分にコメント」をしてよいとなると、「それまで長期にわたって共同作業を行ってきた」人物ゆえ、「執筆内容は確実に影響を受けてしまう」と、「現行の質的部分への修正を拒否した」と
〔pp.12-3〕。■問題は、このあとだ。
■県史編集室スタッフにつづいて、「水資源対策課から、数十項目に及ぶ原稿修正要求が提出され」る。「修正要求のいくつかは筆者と水資源対策課との見解の相違から来るもので、……岐阜県史第二部会長……と協議の上、できる限りの対応を行った。その後、水資源対策課から再修正の要求はなく、修正原稿はそのまま岐阜県史に掲載された。
 一方、御嵩産廃問題を扱った原稿については2002年秋の県史編集室による修正要請でもほとんど指摘がなく、……廃棄物対策課からは「配慮して欲しい」というコメントが出されるにとどまり、具体的な箇所を指定した修正要求はなかった。このことから、筆者は御嵩産廃問題原稿にすいては県史編集室、廃棄物対策課とも原稿内容に対して強い反対意見はないと考えていた。しかし、県史編集室は廃棄物対策課の「配慮して欲しい」というコメントに配慮して独自の修正案を作成し、筆者に提出する
」 
〔pp.13-4〕
■筆者は、こういった県史編集室の姿勢に疑問をもちながらも、岐阜県史刊行の時間的限界を配慮して、「ギリギリのレベルで修正に応じ、協議終了後、修正した原稿(…最終原稿…)を速やかに提出した」。「筆者は最終現行の提出によって……完全に終了していたと考えていた」が、あまかった。「(2003年)3月18日、部会長からの電話によって初めて、廃棄物対策課からの大幅な修正要求によって筆者の原稿が原型をとどめないものにされたことを知る」
〔p.14〕
■「廃棄物対策課が原稿の修正を要求した理由」は、?「全体の印象はまだ御嵩町寄り」。?「岐阜県廃棄物問題検討委員会の資料は慎重に討議を重ねて唯一公式の県の見解としてまとめられたものであり、この検討委員会で確認されたことだけが事実」だから、「全てこの資料に基づいた文章でなくてはならない」。?「町長襲撃事件は産業廃棄物問題と関連があるのか、現在のところは判明していない。それと結びつけるような書きぶりは困る」。?「この本は県が金を出している」「県の刊行物なので、県の立場を書くべき」。?「これが世に出たら問題が起こる。もし、こちらの意見を取り入れずにこの原稿のまま出版したら、環境局長から厳重に経営管理部長に抗議する」。
〔p.15〕
■以上5項目は、「あくまでも県史編集スタッフから筆者に渡されたメモ(調整記録)に基づくもので」、「二度にわたる修正要請をしてきた県史編集室」も、「この時はさすがに県史刊行のタイムリミット」から「これ以上の原稿修正には応じられないという、強い態度を示したと聞いている」だから、「調整記録」の客観性には問題がのこるかもしれないとする〔同上〕。■しかし、「配慮して欲しい」という まったく あいまいなコメントだけをくりかえしてきた部局が、事実訂正どころか、内容の妥当性にまで くちばしをいれ、「大幅な修正要求によって」「原稿が原型をとどめないものにされた」という事実は異常だし、「これ以上の原稿修正には応じられないという、強い態度を示した」編集室が、わざわざ やりとりのメモを 筆者に ながすもの、異様だ。■「県史は県の正史であり、県庁を批判的にとらえるような記述はゆるさん」というなら、官僚と御用学者が「公式資料」をきりばりして「作文」すればよかろう。諮問委員会やら検討委員会同様、「学識経験者は、権威主義的な おかざり」という実態は、学識経験者による県史執筆という過程にも、当然適用されるというなら、そうふるまえばよい。■まともなジャーナリストや研究者は、「大本営発表」=B級二次資料として重宝するだろうし、健全な市民も、官僚制/御用学問の病理例をしりたいときだけ図書館にたしかめにいくことだろう。
■御嵩町長の柳川さんが襲撃され瀕死の重症をおった事件を、時期と被害者から、産廃ビジネスを「しのぎ」とする アウトローと推定するのは、ごく自然だ。■むしろ、これに「関連があるのか、現在のところは判明していない。それと結びつけるような書きぶりは困る」とかいって検閲してくるのは、岐阜県がアウトローと、ウラでつながっていると、うたがわれてもしかたがなかろう。■ましてや、「御嵩町寄り」とか、「これが世に出たら問題が起こる」といったセリフは、御嵩町長をなきものにしようとたくらんだ アウトローたちと、利害が一致していますと、白状しているようなものではないか? ■まるで、「水戸黄門」の悪役コンビなみの 茶番劇というほかない。

■参考までに、「この検討委員会で確認されたことだけが事実」だから、「全てこの資料に基づいた文章でなくてはならない」と 、岐阜県廃棄物対策課にいわしめた「岐阜県廃棄物問題検討委員会」の内実を、以下に 紹介しておく。
■それと「岐阜市産業廃棄物不法投棄対策検討委員会」も参考まで。■岐阜県の産廃問題などについての充実した情報源としては、「てらまち・ねっと」がイチおし。




岐阜県廃棄物問題検討委員会(第19回)
日 時 :平成15年10月27日(月)16:30?18:40
出席者
[岐阜県廃棄物問題検討委員会]
 座長 金城俊夫 座長(岐阜大学名誉教授)
 委員 安江多輔(岐阜大学名誉教授) ★★
      堀内孝次(岐阜大学農学部教授) ★★★
     六川詔勝(弁護士)
     青木誠二(弁護士)
[オブザーバー]
岐阜県町村会(塩谷事務局長)
[岐阜県]
棚橋副知事、杉江理事兼経営管理部長、成原環境局長、
鎌宮経営管理部参事兼企画管理課長、
松村健康福祉環境部課長兼廃棄物対策室長、
佐竹前県史編集室長
議事録要旨

岐阜県廃棄物問題検討委員会(第20回)
日 時  平成16年1月16日(金)10:00?12:10
出席者
[岐阜県廃棄物問題検討委員会]
 座長 金城俊夫(岐阜大学名誉教授)
 委員 安江多輔(岐阜大学名誉教授)
     堀内孝次(岐阜大学農学部教授)
     六川詔勝(弁護士)
     青木誠二(弁護士)
[オブザーバー]
岐阜県市長会   小椋 卓(事務局長)
岐阜県町村会長 水野隆夫(笠原町長)
[岐阜県]
棚橋副知事、杉江理事兼経営管理部長、成原環境局長、
鎌宮経営管理部参事兼企画管理課長、
松村健康福祉環境部課長兼廃棄物対策室長、
佐竹前県史編集室長
岐阜県史の「定義」及び「編集方針」の策定について(経営管理部企画管理課)
議事録要旨


▲「御嵩町産業廃棄物処分場問題の「岐阜県史通史編 続・現代」への掲載原稿問題に係る岐阜県廃棄物問題検討委員会の検証結果報告について
平成16年2月20日(金) 13:00?13:20
出席者
金城俊夫 座長(岐阜大学名誉教授)
安江多輔副座長
県側
 棚橋副知事
 杉江理事兼経営管理部長
 成原環境局長
検証結果報告書

★金城俊夫 座長(岐阜大学名誉教授)の専門は、獣医学のなかの公衆衛生学らしいから、産廃問題のしろうとのはず(ま、養豚場の廃棄物の処理・衛生管理とかいう点では、まったく無関係じゃないかもしれない、といった程度)で、単に岐阜大もと学長・名誉教授って権威だけが必要だったんじゃないか?
★★安江多輔副座長の学位論文題名は「レンゲ種子の硬実の成因および消去に関する研究」で、このかたは、産廃問題については完全にしろうとだろう。
★★★堀内孝次(岐阜大学農学部教授)氏の専門は「作物学、作物栽培学、植物生産環境学、地力維持と植物体内養分」である。「環境水俣賞(熊本県水俣市)・1994年受賞」とあるが、「各務原地下水研究会」のメンバーだったことをさしているだろう。■各務原地下水研究会『よみがえる地下水―各務原市の闘い』〔京都自然史研究所,1994年〕も、内容は「豊富で清浄だと信じてきた地下水の汚染。原因は土地の主要な農産物の肥料だった。生命の水は呼び戻せるか。不可能を可能にした科学者と行政との連携は現代における僥幸としかいいようがない……」といった領域であって、地下水汚染の専門家として、一応適任者か? ■しかし、「汚泥採取場所、時期ならびに炭化処理温度が炭化汚泥の諸特性と陸稲の肥料反応に及ぼす影響」「土壌中における生分解性プラスチックの分解速度調節」「各務原水盆における地下水汚染とニンジン施肥量の推移」といった研究テーマをみても、産廃関連の業績・学識で委員にえらばれたというには、少々ムリがありそうだ。