■以前、6月に成立した「国民保護法」(正式名称「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」)について、事実上の有事法制だ。そんなことより、原発震災の対策として「住民避難」こそプランづくりが急務と批判的にとりあげた。■そこで 指摘しておいたとおり、福井県での「国民保護訓練」というものが、実際に27日実施された。
 他国からの武力攻撃や大規模テロから住民を守る方法を定めた国民保護法に基づく初の実動訓練が27日、福井県で実施された。国籍不明のテロリストが関西電力美浜原発(同県美浜町)を迫撃砲で攻撃し、放射能漏れの危険性が高まったいう想定。地元住民をはじめ、国や県、自衛隊、民間企業など約140機関の約1300人が参加、有事の連絡体制の確認や避難訓練に取り組んだ。
=2面に、「時時刻刻」
 訓練は午前7時に始まった、美浜町内の現地対策本部と首相官邸間でテレビ会議を開設。対策本部に詰めた西川一誠知事らと、首相官邸の野田健内閣危機管理監らが、住民の域外避難の指示などで連絡を取り合った。
【「原発テロ想定し訓練 国民保護法で初」『朝日新聞』2005/11/28,1面】

■「国民保護法で初の訓練 福井県で140機関参加(共同通信)」「国民保護法で初の実動訓練・原発攻撃想定し住民避難(日経新聞)」「テロ有事訓練:福井・美浜原発攻撃で実施 国民保護法で初(毎日新聞)

■官僚たちが かんがえがちな 机上の空論で 訓練なんぞやらかして、責任感にかけるよね。■「国籍不明のテロリスト」とか、よくいうよ。「北朝鮮」だって、仮想敵国は もともと明確な クセに
(笑)
■「午前8時、敦賀半島の北部。漁業と民宿が主な生業の静かな集落に、警報発令のサイレンが響いた。すぐに美浜原発周辺の美浜町丹生地区などに屋内待機が指示された。正午過ぎには、避難のため住民約70人がバスに乗車。銃座の付いた自衛隊の軽装甲機動車に誘導され、避難が始まった。
 県内には原発15基が立地し、敦賀半島に7基が集中する。これまでも事故を想定した防災訓練はあったが、迷彩服姿の自衛隊員が護衛する避難は初めてだ。【中略】
 ……政府などは当初、シナリオの一部を公開せず、現場に瞬発的な対処を迫る訓練も検討した。だが「有事アレルギーを強める可能性がある」(政府関係者)として結局、公開の避難救助活動が中心の訓練とした。
 「世論」への配慮は随所に表れている。テロリストの迎撃作戦などは図上の想定にとどめた。自衛隊の治安出動はなく、有事色を極力抑えた。被曝患者の発生は原子炉建屋内の偶発的な事故のためで、テロによる放射能漏れも想定しなかった。……
」【『朝日』同上2面「時時刻刻」】

■?「迎撃作戦」は、スパイがいることなども心配すれば、さらしたくないだろう。そう正直には発表できないだろうが。しかし、■?「原発が攻撃されたら船を待つ時間はなく皆が自動車で逃げる。現実味がない
〔同上〕と参加者に指摘をうけるような、非現実的な設定で「避難救助活動」を訓練して、どうするのだろう? ■?そして、迫撃砲で攻撃をくわえるテロリストたちが、首尾よく原発を破壊できるかどうかという想定は、わるい方で設定して訓練するのが普通だろう。「テロによる放射能漏れも想定しなかった」といった願望をまじえるなら、避難訓練なんてするなよ(笑)
■?迫撃砲で攻撃をくわえるテロリストたちが、放射能用の防護服でみをつつんでいるにしても、そのうちに メルトダウンするかもしれない原発周辺で、さらに進撃しつづけるとは、とてもおもえない。つまりは、迫撃砲で破壊工作に成功したら、まずは すたこらにげるだろう。日本の混乱の様子を偵察機や人工衛星などでしらべたうえで、別働隊が つぎの攻撃想定目標へと、かかる……と。■とすれば、「テロリスト」たちが 自爆系の集団でないかぎり、「銃座の付いた自衛隊の軽装甲機動車に誘導され、避難」するなんて訓練は、不要だろう。■テロリストが、原発が集中しているような過疎地の一般住民を わざわざテロの対象として ころしつづけるなんて、ありえないからだ。

■もう 読者にもおわかりだろう。政府や関係者は、地元住民の保護なんてことを想定して、訓練なんかやってない。■?もし、地元住民の安全確保が第一なら、原発が破壊され、メルトダウンに移行しようとしているといった想定で、1986年のチェルノブイリの教訓にてらした避難・消火訓練がなされねばならない。■「幸運にも、テロによる放射能漏れなどおきなかった」なんて、あまえた想定は、それこそ「平和ボケ」だからだ。■?そうなると、「テロリストの迎撃作戦などは図上の想定にとどめた」なんてのも、ウソくさい。■「迎撃作戦」が成功したなら、住民は避難しないですむし、失敗したなら、にげる「テロリスト」をつかまえるといった、無益な行為に時間をさくよりも、どうやって「チェルノブイリ」状況をおさえこむかという、それこそ「有事」となるからだ。■?はっきりいおう。どこかの国に武力攻撃をうけて、日本政府が降参し、占領下におかれる過程よりも、チェルノブイリ規模の原発事故がおきてしまうことのほうが、ずっと大規模な死傷者と長期汚染という、一大事になるんだ。■これが、「想定」できないような「危機管理論」は、非現実的で、そんな連中に、「国民保護」なんて不可能だよ。
■?では、この訓練の目的はなにか?■明確だ。「有事アレルギー」をよわめる。いや、マヒさせて「自衛隊の治安出動などが(訓練)に入る」という、地ならし作業に、きまっている。■関係者のねらいは、?「銃座の付いた自衛隊の軽装甲機動車に誘導され」「迷彩服姿の自衛隊員が護衛する避難」訓練に、住民がマヒすること。さらには■?そういった「有事対策」が 列島各地で実施されることが、「国民保護」という大義上 当然だと、国民の4わりぐらいは ダマされて、信じこむこと。そういった 「基礎票」を もとに、「挙国一致内閣」的な もりあがり、自民党じゃなくて「日本国民党」とかに改称されているかもしれない、ファッショ体制の 下地づくり、ってことにちがいない。■?ひょっとすると、「9・11テロ」に準ずるような 「有事」が 実際に おきてほしいんじゃないか? 「テロ後」の アメリカ国民のファッショ的ふんいきは、すごかったからね。対処可能な「外患=対外危機」さえ そろえば、「内憂=内政上の諸矛盾/巨悪」なんぞは、ぜんぶ ふっとぶと。
■石原都知事が、東京で さかんに 治安悪化をさけび、危機感をあおることで その政治人気を維持しているように、そして軍事パレード観閲や閲兵が 大すきなように、小泉/ポスト小泉政権の ゆくすえは、石原都政の きなくさが 相当程度 暗示しているとおもうよ。

■イラク戦争にかぎらず、「国際貢献」「安全保障」といった 憲法の論理をこえた次元=「軍事同盟」で、実質改憲をはたしてきた 保守政治の伝統。■今度は、「外患」をあおることによって、「内政」上の諸矛盾を ゴマかし、政敵/国民をだまらせるという、60年まえまで、くりかえしおこなわれた手法が 洗練させたかたちで あらわれている。■憲法の理念は 「国連」や「日米同盟」といった「外圧」と、「テロ不安」という「侵入した外圧」=「内圧」とによって、「はさみうち」にされている。「風前のともしび」といえそうだ。

■以上の諸点になっとくがいかないなら、冒頭にもかかえがリンク「国民保護法って?」をご覧いただくことを、おすすめする。充実したサイトだし、まさに時時刻刻、状況を紹介してくれるウェブログもある。