■いわゆる「国字」については、つぎのような記述が「Wikipedia 国字」にみられる。

漢字に倣って中国以外の国で作られた漢字体の文字
1.日本で漢字に倣って作られた文字
2.日本以外で漢字に倣って作られた文字


■前回「「漢字の日本化の極致――国字の誕生」といったコピーも、大仰であるわりには、無内容」だと酷評したが、東アジアに普遍的な現象だったわけだ。
日本で作られた国字
和字・倭字・皇朝造字・和製漢字などとも呼ばれる。会意に倣って作られることが多い。峠(とうげ)・榊(さかき)・畑(はたけ)・辻(つじ)など古く作られたものと、西洋文明の影響で近代に作られた膵(スイ)・腺(セン)・瓩(キログラム)・鞄(かばん)などがある。主に訓のみであるが、働(はたらく・ドウ)のように音があるものもあり、鋲(ビョウ)・鱇(コウ)など音のみしかないものもある。「錻」には「錻力」と表記したときの音読み「ブ」と、「錻」一字で表記することで音読みから派生した訓読み「ぶりき」がある。

中国などに同じ字体の字があることを知らずに作ったと考えられる文字〔「俥(くるま・じんりきしゃ)」・「閖(ゆり・しなたりくぼ)」・「鯏(あさり)」など〕や、漢字に新たな意味を追加したもの〔「森(もり)」・「椿(つばき)」・「沖(おき)」など〕は、国字とは呼ばず、その訓に着目して国訓と呼ばれる。中国などで意味が失われているもの〔「雫(しずく)」など〕は、中国などで失われた意味が日本に残った可能性も否定できず、国訓ともいえない。国訓のある文字に着目して、国訓字と呼ばれることもあるが、一般的ではない。〔「鱈(たら)」など〕のように中国に輸出されて定着した国字もある。また、「畑(はた)」は中国でも日本人の姓を表記するために用いられて、『新華字典』などの字書にも収録されているが、いずれも、つくりの「雪」や「田」の中国語音で読まれている。〔「鰮(いわし)」・「鱚(きす)」など〕のように、中国にもともと同じ字体の字があり、日本で使われる意味を加えて使っている字もあるが、これらには、現在は使われなくとも、別に漢字本来の意味があるため、国字とは言えない。


日本以外で作られた「国字」
日本以外でも日本の場合と同様に、朝鮮国字・字喃(ベトナム国字)が作られている。日本の国字と異なり、主に形声に倣って作られている。朝鮮国字の場合、構成要素に漢字の他、ハングルが使われる。日本同様に漢字に意味を追加したものを朝鮮では国義字といい、音を追加したものを国音字と呼ぶ。

なお、女真文字・契丹文字も漢字に倣って作られたが、その民族の国家が滅亡して長期間が経過したためか、国字とは呼ばれない。壮族の作った古壮字も漢字に倣ったものであるが、中国の一少数民族であるためか、国字とは呼ばれない。西夏文字も構成方法は漢字を踏襲しているが、部品が漢字とは共通しないので、国字とは言えない。
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■笹原氏は、日本酒製造からうまれた「〔こうじ〕」などをあげることで、「漢字の日本化の極致」と強調したいのであろうが、歴代中華帝国周辺の東アジア・東南アジア諸地域で「国字」がうまれている以上、「地域版」の一種にすぎないであろう。かりに他地域にみられない発達をみせたにしても。
■また、これは「Wikipedia国字」にも通底する問題でもあるが、「壮族の作った古壮字も漢字に倣ったものであるが、中国の一少数民族であるためか、国字とは呼ばれない」といった認識は、漢民族/中華帝国を本質化=特権化する限界をもっている。■つまり「国字」概念は、廃棄すべき分類わくぐみとしかおもえない。
■むしろ、笹原氏がたんねんにひろいあげている、講義ノート/固有名詞などでくりかえしあらわれた「造字」の生成過程であろう〔pp.44-5〕。


【つづく】

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笹原宏之『日本の漢字』1」「」「」「」「」「」「」「」「