■先日、「ひきこもり」の わかものを自立させるとうたうNPO法人の入寮者男性が、外傷性ショック死で死亡した事件の続報転載:NPO施設で男性死亡、入寮直後から拘束続く 名古屋」「転載:26歳死亡、引きこもり更正NPO施設検証
■まずは、『朝日新聞』
〔名古屋本社版:社会面,2006/04/28〕の記事を転載。

事件後 退寮者相次ぐ

 アイ・メンタルスクールの寮に在籍していたのは事件当時、約70人で、未成年者も4割近くいたという、だが、事件以降は警察が親に連絡するなどした結果、退所者が相次ぎ、今は50人弱に減ったという。
 寮は今、屋上に設置された大きな看板がブルーシートで覆われ、建物の1階部分に付けられた看板はスクールの名前が削られた。
 20代の男性は事件後、「とにかく親に会いたい。(親は)事件のことも詳しく知らないのではないか」と言って寮を出た。
 杉浦代表によると、スクールを創設したのは91年。訪問カウンセリングを行いつつ、東海3県を中心に引きこもりや不登校の人を受け入れてきた。入所の状態を見ながら職場を紹介、自立するよう促していくという。
 入ってくるのは、家庭内暴力をふるったことがある人が少なくないといい、死亡した男性をはじめ、本人が入寮に同意していない場合でも、親に懇願されると無理にでも連れ出してきたという。
 入所施設は、東京のNPO法人青少年自立援助センターの推計で全国に100カ所ほどある。18歳以上なら児童福祉法に基づく保護制度は適用されない。家庭内暴力があり、親にとっては「手に負えない」成人を受け入れる公的な制度はなく、民間に依存しているのが現状だ。

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■この特集記事では、杉浦代表が、朝日新聞の記者のインタビューに応じた一問一答が掲載されている〔記事は、そちらがメイン〕。■杉浦氏は、なぐりかかってくるなどしたため、それをとめ、おさえこんだだけとして、暴力をふるっていない。本人に自傷行為があった(それで、結果的にショック死した)と、主張して(かんがえて)いるようだが、
母親から相談を受けた。母親と兄が寮を見学して気に入り、今月14日、私と職員3人、入寮者2人が東京の自宅へ迎えに行った。男性を説得したが、殴りかかってきたので体を抑えて手足に手錠を掛けた、職員が両側から挟むようにしてワゴン車に乗せた。寮でも暴れるので胴に鎖を巻いて柱にくくった
(鎖などが必要な人は)どこに連れていっても引き受けてくれないから。他の入寮生に殴りかかることがある。夜に職員が仮眠を取るときなどにも使う。鎖は2、3年前からで、5人程度にしか使っていない。手錠は昨年暮れからだが、2、3回しか使っていない
などと、かたっているところをみると、これが拉致(らち、Abduction)/逮捕・監禁罪暴行罪といった、れっきとした犯罪を構成しているという自覚がまったくないらしい。■こういった、同様の行為が例外的に正当化されるのは、被疑者/現行犯逮捕を実行する警官、あるいは緊急措置入院といった、切迫した状況を処理するばあいの精神科医・消防隊員などに、かぎられるはずだ。■しかも、これらの権力行使自体が、違法である・不当であるといった当事者からの批判をうけることが、しばしばなのだから、なんの権限もない人物・組織が、民間でかってにやっていいはずがない。死者がでたというのは、論外として、それ以前に、犯罪行為がくりかえされていたこと、その自覚がなく運営がなされていたことは、「鎖は2、3年前からで、5人程度にしか使っていない。手錠は昨年暮れからだが、2、3回しか使っていない」といった、セリフに、正直に告白されている。

■精神医療の人権軽視の風潮がねづよいこの国土で、「家庭内暴力」をともなった深刻な事態を、公的な施設に収容するという制度化が、危険なことはいうまでもない。■しかし、本人が当事者能力をもちえないほど錯乱しているなら、精神医療の対象だし、そうでないなら、「家庭内暴力」への対応ど同質の処置をとるほかあるまい。■暴行・傷害をくりかえす人物は、それを自発的に自制できるようにならないかぎり、共同生活をつづける権利がないし、違法行為は封じられねばならないのだから。
■「家族だから」という、心理が「家庭内暴力」を共依存的に悪化させていくように、「自分のコドモだから」といった位置づけが、暴力を誘発しているはずだ。■家庭から退去させるか、自分たちがにげるか、どちらかしかあるまい。■それを、民間施設にあずけて「矯正」「更生」ができるかのような夢想にすがっているところに、これら家族の悲劇があるとおもう。■そして、こういった民間組織を放置してきた厚生労働省や自治体は、猛省すべきである。

■もちろんこれらは、当事者がくるしんでいる、たちなおりが困難だ、といった個人的には深刻な問題構造を、全部、よこにおいたうえでの議論である。■しかし、うえにのべたような、わりきりかたをしないかぎり、オヤが子をバットでなぐりころすような惨劇に、おいこまれるのは、さけられないだろう。


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