先日紹介した 元産廃Gメンの行政書士、尾上雅典(おのえ まさのり)氏のメールマガジンの最新号を転載【冒頭部の口上、省略】。
■産廃処理の巨視的状況が、非常によくわかる解説。

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よく分かる!!廃棄物問題(第35号) 2006.4.27 発行
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□ 統計資料から読み解く産廃処理業界の実情


 前回までのメルマガでは、データをあまりお示ししませんでしたので、今回と次回のメルマガでは、データをふんだんに示します(笑)。

 まずは、こちらの環境省のHPから、最新版の統計資料(PDF)を入手してください。

 平成15年度
 産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況

 http://www.env.go.jp/recycle/waste/kyoninka/kyoninka_h15.pdf

 この資料は、今年の3月31日に公開されたばかりの資料です。
 最新版であるにもかかわらず、平成15年度分というのがご愛嬌ですが(笑)

【中略】

 最初のページには、「産業廃棄物処理施設の設置状況について」という資料が載っています。

 その中の、「表1?1 産業廃棄物の処理施設数」という表をご覧ください
 この表には、日本にある、産業廃棄物処理施設の件数が載せられています。

 産業廃棄物を埋立てる、最終処分場が2,547件 埋立てる前に焼却したり、破砕したりするための中間処理施設が19,916件となっています。合計で、22,463件です。


 前年(H14年)と比較すると、

             H14年    H15年度

 最終処分場     2,641件 ⇒  2,547件

 中間処理施設   19,284件 ⇒ 19,916件  となっており、

 全体の数字的には、わずかに増加しています。

 しかし、最終処分場などは、新規設置数24件に対し、廃止した処分場が52件と、新規設置の倍以上の処分場が廃止されています!

 これは、どういう事態になるかと言うと・・・
 ますます、最終処分場の枯渇化が進むということです。

 日本の将来のためには、脱埋立てを図るのが正解なのですが、急激にその状態まで産業構造を変革するのはかなり困難です。
 そのため、あと数年のうちに、脱埋立て社会を目指し、産業構造を変革していく必要があるのです!

 最終処分場は減少傾向にありますが、中間処理施設はどうでしょうか?
 同じく、表1?1を見てみましょう。
 注目すべきポイントは4つあります。

 まず、「廃プラスチック類の破砕施設」と「木くず又はがれき類の破砕施設」をご覧ください。

 この2つの施設は、新規設置数が異常に多く、廃止数の6倍以上も新たに設置されています。

 なぜ、この2つの施設だけが、たくさん設置されているのか?

 それは、前述した、最終処分場の枯渇化の影響が一因となっています。 

 大ざっぱにご説明すると、概ねこのような流れがあるからです。

 埋める場所が無い ⇒ ゴミをできるだけ小さくする ⇒ リサイクル

 木くずは、破砕して、燃料として売却
 プラスチックも、破砕して、燃料または原料として売却


 このように、燃料または原料として売却する方が、ゴミとして処分するよりもいくばくかの利益が残ります。

 最終処分場の枯渇化という危機的な状況に瀕して、ようやく新しい処理ルートができつつあります。

 しかしながら、一挙に処理施設が増えすぎたため、需要と供給を比較すると供給側(産廃処理施設)の生産能力が過剰になってしまいました。

 その結果、価格の下落が起こり、莫大な設備投資をしたにもかかわらず、経営難に苦しむ業者が増えてしまいました。

 需要と供給のバランスを考えることは大切です。

 最後に、「廃プラスチック類の焼却施設」と「その他の焼却施設」をご覧ください。

 この2つの施設数は、最終処分場と同様、縮小傾向にあります。

 このことが、日本において、脱焼却化が進んでいる証拠になるのなら、素晴らしいことなのですが、実情は、ダイオキシン対策に多大な経費が掛かるためといった、専ら、経済的な原因によるものです。

 その証拠に、費用対効果をあまり真剣に考えなくても良い、市町村の焼却炉の場合は、「ゴミの減量化」を一方で叫びながらも、ゴミが今より大量に発生する条件を想定した、過剰な能力の焼却炉を続々と設置しています。

 事情やことの経緯はどうあれ、民間部門においては、焼却離れが進みつつあるのも事実です。

 このまま良い方向に向って欲しいものです。

 次回に続く。


 尾上 お薦めの良書

 「ごみ処理のお金は誰が払うのか
 服部 美佐子 (著), 杉本 裕明 (著)  合同出版
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