■インターネット新聞『JANJAN』から、共謀罪関連の記事を転載。■反対する市民団体の集会の概要を紹介したものだが、なかなか論点がうきぼりになっていて、便利。■リンクは、末尾のもの以外、ハラナが、かってにつけた。

治安維持法の教訓と共謀罪
2006/04/28

 「治安維持法公布から81年、いま共謀罪を問う市民の集い」と題した集会が4月25日夜、東京都文京区民センターで開催されました。「共謀罪MOVIE(ムービー)『共謀罪、その後』第一話」ビデオの上映後、社民党の保坂展人衆院議員と党首の福島みずほ参院議員が、現在衆議院法務委員会で審議されている共謀罪について状況を報告したあと、一橋大学教授の渡辺治さんと弁護士の山下幸夫さんの講演がありました。
【国会議員からの報告】
 保坂展人さんは衆議院法務委員会での様子を連日のように自身のHPで伝えています。保坂さんの報告によると、与党は野党の反対を無視し、与党だけの質疑を行い、28日の採決に向けて突き進んでいるそうです。保坂さんは数の力で押し切ろうとする与党の非民主的なやり方を厳しく批判すると同時に、28日の強行採決に野党が共闘し全力で反対したい、と決意を述べました。その上で、人数で圧倒的多数の与党に対抗するために、共謀罪のことを一人でも多くの人に知ってもらい、世論を盛り上げ、一体となって戦っていかなければならないとし、行動を伴った運動を強く訴えました。

 福島みずほさんは、現在の状況を「盗聴法が成立したときに似ている」と述べ、この二つの法案は「連動している」と指摘しました。盗聴法のときも国政選挙がなく、今年も国政選挙はない。選挙をやる前にどんどんやってしまおう。数の論理で成立させてしまおう、という魂胆がミエミエである、と述べながら、現在が危機的な状況にあるとの認識を示しました。その上で、与野党問わず、共謀罪の問題点が浸透していない状況での採決には断固反対するとの決意を述べました。共謀罪は党派や思想を越え、すべての人に襲いかかることや、組合や市民運動にその矛先が向けられることなど、個人の思想と信条の自由を弾圧し、改憲に向かう動きを阻止したいと述べ、ともに行動を起こしていくことを呼びかけました。

【渡辺治さんのお話】
 渡辺治さんは「共謀罪と治安維持法」をテーマに話しました。渡辺さんは、治安維持法破防法、共謀罪に共通しているのは「予防性」であり、ターゲットは組織運動であるとの考えを述べた上で、共謀罪の問題点を知るために、治安維持法を教訓としながら、当初の狙いとその後の展開について詳しく説明をしました。

 1925年に治安維持法が制定されるにあたって、帝国議会の大反対にあったそうです。それに対し、当局は対象を国体変革(天皇制を倒すための革命運動)を目的とする組織に限定すると答弁をしました。その対象であった共産党を徹底的に弾圧したあと、変質を遂げ、宗教団体などが対象となり、創価学会も弾圧されました。35年に特高が登場し、戦争の梃となる役割を果たしました。さらに、41年の改正によってあらゆる組織が対象となり、言論が弾圧され、当局が反動とみなすものは検挙され、弾圧を受けました。

 そのあとにできた破防法(1952年)では、同法が適用されて共産党員が4名捕まりましたが、全員無罪になりました。このとき世論の激しい反対運動があったとのことです。このことは、法律ができても役に立たない法律は使えないことを明らかにしている、と渡辺さんは指摘します。治安維持法は阻止できなかったが、破防法は適用させなかったので、これで「一勝一敗」。共謀罪は破防法の挫折の教訓を踏まえて出てきた、との認識を示しました。

 渡辺さんは警鐘を鳴らします。治安維持法が最初から危険な法律として登場してきたわけでなく、15年経って、当初の対象であった共産党とかけ離れた関係のない人たちが対象となった。改正と活用の中で変遷を遂げ、最後はその対象が市民運動に向けられる。そのことをしっかり認識し、市民の自由を規制するものに対してはきちんと見ていかなければならない、と述べました。その上で、「危険なものは根元から断つ。いまの段階で使えなくすることが大事である」と述べ、破防法を使えなくすることで戦前の治安維持法の再来を防いできたように、「共謀罪も防ぐことができる」と明言しました。

【山下幸夫さんのお話】
 山下幸夫さんは、「組織犯罪処罰法と共謀罪」をテーマに話しました。山下さんは、組織犯罪処罰法が出てきたときから、共謀罪を成立させるという強い意志を感じる、と述べました。この二つはセットであり、二つが成立しなければ満たされないからです。その上で、本来は越境組織犯罪防止条約を批准するためのものであったのに、条約とかけ離れ、国内の犯罪を処罰の対象にした法律を作ろうとしていることに疑問を投げかけました。

 現在、この条約を批准しているのはG8加盟国ではフランスとカナダだけだそうです。アメリカもイギリスも批准していないこと、また、フランスやカナダは日本のような形での600以上もの犯罪を対象にしたようなものではないことを紹介しました。

 当初、日本政府は共謀罪を作らないと答弁していたそうです。それが方向転換をしたのは、政府は認めていないとしながら、おそらくアメリカの圧力があり、政治的判断によって共謀罪を受け入れたのではないか、との推測を述べました。

 しかし、実際に犯罪を実行していなくてもただ目配せをしただけでもつかまるということは、犯罪の定義を根幹から変えることであり、「あまりにむちゃくちゃな論理」と厳しく批判し、だれも被害を受けていないのに処罰をするのは恐ろしいことだ、とその危険性を指摘しました。また、実行行為がないため、なにをもって犯罪とするかは当局の主観によるものであること、当局が危険だと判断すれば適用できるということが共謀罪の一番の問題点である、と指摘しました。法務省は危険な組織だけが対象だとしているが、時間とともに運用が変わり、最後は警察が使いたいように変わることは明らかであり、法務省が言うことが守られる保障はない、と法案の問題点を厳しく批判しました。

 万が一、与党が強行採決したとしても、この法律がとんでもない法律であることを伝え、世論を盛り上げることが大事だと訴えました。破防法や盗聴法のように、この共謀罪もとんでもない法律であることを世間に訴え、反対の声が大きくなれば、使えない法律として追い込んでいくことができるからです。採決を阻止し、廃案に追い込むために、一人でも多くの人が参加し、連携をとって行動を起こしていくことの重要性を訴えました。

 なお、5月11日には東京・永田町の衆議院第一議員会館第一会議室で、共謀罪の新設に反対する市民と表現者の集い、6月1日夜には、東京・日比谷の野外音楽堂でも集会があります。

 【質問】
 最後に会場の出席者と発言者の質疑がありました。
 「憲法に違反するような法律が次々にできているが、日本という国はいったいどういう国なのか。憲法と法律はどっちが上なのか」という質問に対し、渡辺さんは、「それは明らかに憲法が上」とした上で、「明治憲法下で治安維持法ができたとき、とめることができなかったのは、明治憲法下では裁判所が違憲かどうか審査する場がなかったからである。いまは違憲立法審査制があり、法律ができても憲法違反の法律は裁判所が審査することができる。国会で通っても、憲法に違反する法律は国民が裁判にかけて適用できなくさせる可能性がある。憲法を守るというとすぐに護憲だ護憲だと騒ぐが、そうではなく、憲法を使うことだ。その意味では憲法は生きている」と述べ、憲法に反する法律に対しては国民が「ノー」を突きつけることができる、と強調しました。

 山下さんも「憲法が上」とした上で、司法の役割に期待を寄せながら、権力に対して「弱い」日本の裁判所の現状に不満を述べました。

※連絡先 「盗聴法に反対する市民連絡会日本消費者連盟

(ひらのゆきこ)

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