■とびいし連休のすきまに「監視社会=オーウェル『1984年』私論3」でもかいたことだが、記録・複製・転送技術のハイテク化で、権力がわの欲望の理想像にちかづくと、ソボクな「監視型社会」から、「検索型社会」へと劇的に事態が悪化する。■先日の、『情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士』の「警察官が自分の妻の指紋を調査先の指紋と偽って報告?これでも改訂されていいのか,入管法」の記事は、くるべきものがきてしまったかという、感じ。
入管法改訂案が,実は「顔写真・指紋データ収集法」であることは,ここ←などで述べてきた。指紋や顔写真がとられるという不安について悪いことしないから,とられても大丈夫…なんても思っていたら,大変なことになる,というのが分かるいい例が報道されました。

毎日新聞(ここ←)によると,

【警部補は成城署生活安全課員として同署に設置された「宮沢みきおさん(00年12月の発生当時44歳)一家4人殺害事件」の捜査本部に所属していた01年5月?04年6月、虚偽の捜査報告書35通を捜査本部に提出した疑い。報告書には、事件現場近くの住民ら43人に面接し話を聞いた記録と、協力を得て採取したとする指紋が添付されていたが、報告内容は虚偽で、26人には面接すらしていなかった。指紋は警部補自身か妻のものだった。】

という。

というころ〔「と」?〕は,いずれ,データとして残っている指紋データを利用して,現場に指紋を残すことだって可能になるだろう。そうなると,上記のような一部の不心得者が,早く事件を解決しようとして,例えば,近くで恨みをもっているという情報のある者の指紋データを利用して,現場に遺留指紋をつくるかもしれない
【以下略】
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■「入管法改訂案が,実は「顔写真・指紋データ収集法」であること」を、おおかたの人物は「不良外国人のとりしまりには、いたしかたない」と、自分に火の粉がふりかかってくるなんて、おもっていないだろう。■しかし、当局がそんなアマちゃんのはずがない。外国の要人は当然のように、そんな監視からはずされ、むしろ周囲の「信用ならない日本国籍者」が徹底的に監視されるだろう。■そして、いずれ「外国人に準じて危険な層」の「顔写真・指紋データ収集」が着々とすすめられるはずだ。
■おそろしいのは、この弁護士さんが懸念されているとおり、「指紋データ」が過去へと遡及的(「ソキューテキ」:時間的に さかのぼった)かたちで権力に利用(しばしば悪用)されるだけでなく、「でっちあげ事件」というかたちで、「未来」へと援用=悪用される危険性が具体化しつつあるってことだ。■「社会学的密室」は、通常、被害者が事実上外部にのがれられない包囲構造をさしているが、「社会学的密室」は、なにも警察署の取調室だけかんかじゃない。鑑識など警察が証拠がためをしている過程そのものが、完全な「密室」なのだ。そこがビデオ撮影などで、のちほど公判などで証拠映像として提出が命じられたことがあるだろうか? ない。警察官があきらかに証拠をでっちあげたといった、今回のような不祥事が発覚して はじめて、裁判所は警察権力のなかでの不正についてといただすが、刑事被告弁護がわが、証拠のあやしさを指摘しても、鑑識などの過程そのものが可視化=透明化されることは、ない。■今回、刑事事件の取調べ過程を、必要とみとめればビデオ資料として証拠として提出することを検察庁が検討していて、当局の一部などは反発しているそうだが、警察・検察の捜査・取調べ過程が「密室」として隔離されているがゆえに、「でっちあげ犯罪」が、ちょくちょくおきてしまうのだ(日弁連などの主張する「可視化」問題)。■そして、こういった体質をのこしたままで、「指紋データ」が悪用されるようなことになれば、当局にとって「つごうのわるい人物」を、別件で逮捕し、まったく「ぬれぎぬ」によって、犯罪者にしたてあげることも可能になるということだ。■もう一度再確認しよう。「記録・複製・転送技術のハイテク化」によって、「検索型=過去遡及的監視社会」がすすむだけではなくて、「事後的冤罪製造社会」が、きかねないと。

共謀罪などとの呼応は、いうまでもない。「指紋データ」以外に、電話盗聴やら、電子メールの「ぬすみよみ」など、当局がマークすれば、なんでもありになるわけで。■「不安をあおりすぎ」と、たしなめようとする御仁は、こういった論点をかんがえたことがあるのだろうか?