■シリーズするつもりもないのに、「大相撲力士の実力1」「」などと連作したのが、3月中旬。■また、大相撲が終盤戦にさしかかっている。
■さて、今回も幕内力士の実力問題について整理をこころみる。■お題は、新入幕ながら終盤戦まで優勝あらそいにくいこんでいる、エストニア出身力士把瑠都凱斗(ばると・かいと)と、日曜日千秋楽の取り組み問題。

■結論からいうと、「幕内最高優勝という制度は、所詮大相撲という興行のよびもの=『おまつり』なのだから、優勝のゆくえにあまりこだわるのは本末転倒」ということだ。■もちろん、「新大関白鳳の横綱昇進へのあしがかりになるかどうかなどもに かかわっているのだから、優勝のゆくえは大問題」という意見があるのは、承知のうえである。
■問題意識としては、「大相撲力士の実力1」と、だいぶまえにかいた「スポーツからみた日本社会2」とで展開した論点の基本的変更をみとめる必要性を感じていない。■「幕内最高優勝」という制度を名実ともに確立したいのなら、サッカーのJリーグのように総あたりが可能な範囲だけに幕内を限定すべきである。■1場所あたり15番で、同部屋対決をさけるという原則をまもるにしても、現行でいえば、横綱・三役で10人、くわえて前頭数枚で充分ということだ。

■では、この議論の意味を、数値で実証してみよう。■モデルは、「大相撲力士の実力1」および「2(コメント欄)」でご登場いただいた、木村さんの番付による点数化=数量化である。■幕じり=前頭16枚目=1点。……前頭1枚目=16点。小結=17点。関脇=18点。大関=19点。横綱=20点と換算し、かった分を加算していく。自分の地位やまけたときの点数化はしないから、実に単純な勝ち点方式だが、かなりの程度客観的な勝ち星の意義の累積数=場所への貢献度〔関脇以下なら、三賞の敢闘賞・殊勲賞あたりに関連する〕を表示するといえそうだ。

■それで換算すると、優勝あらそいしている、白鳳は186点、もと大関の関脇雅山は182点なのに、把瑠都は たった89点と、半分にさえみたない。■ちなみに、ほぼ優勝圏外にさった大関 千代大海でも154点で圧倒しているし、勝ち越し自体があやぶまれる大関 琴欧州でさえ86点で大差ない。幕内下位にある把瑠都が、後半前頭上位と数人あたって少々点数をかせいだといっても、その程度の価値しかないといえよう。あすの取り組みで雅山をたおし、朝日新聞などの予想どおり千秋楽で旭鷲山までもたおしたとして、総点は119点。■番付編成会議で意表をついた白鳳-把瑠都戦が実現して、まさかの番狂わせがおきたとしても126点どまりで、はなしにならない。白鳳・雅山があす・あさってと連敗して優勝決定戦ぬきで「幕内最高優勝」が把瑠都にころがりこんでもね。■前頭上位5枚目以上にいない力士の「平幕優勝」というものの意味は、その程度だと、わりきるべきだ。
■このような「番付加重型勝ち点モデル」で、前半戦の1勝で数点しかかせげないというのは、しかたがない。その程度の地力=実力だから、下位にいるのだし。■というか、把瑠都を実力者というなら、2日目「栃乃花(前頭10枚目)」、4日目「北桜(前頭15枚目)」にやぶれているのは、非常に印象がわるい。■小結経験者の栃乃花にやぶれたのはともかく、幕じりちかくで負け越しそうな北桜(最高位が前頭9枚目)にやぶれるといった事態が、横綱はもちろん三役力士にかんがえられるだろうか?

■こういった構造が「興行」としてもいいものなのかどうか、横綱昇進のように、連続優勝などのタイトルがらみの制度とどうからめるのかを、かんがえるなら、最大限前頭5枚目(勝ち点12点以上)のあいだだけの基本的総当りリーグ戦を真剣に検討すべきだろう。■負傷休場力士の欠場分の保険としてユトリをみるにしても、最低でも幕内力士を2分割し、「S1リーグ」「S2リーグ」ぐらいで優勝あらそいをさせるべきだろう。■興行的にもそれで充分おもしろいはずだ。十両と幕じり=前頭最下層力士の交流戦みたいな感じで、状況により「S1」「S2」間の取り組みをまじえてもいいが、基本的に別個のリーグで、降格・昇格をきそいあうというのは、興行的にも充分検討にあたいする改革案のはずだ。■そして、前回・前々回検討したとおり、幕内力士は番付以上に勝率・通算勝ち星数という両方で、歴然とした実力差が厳然とあり、それは「身分差」といってさしつかえない実体的格差なのだから。