■きのう紹介した、というか絶賛にちかいかたちで推薦しておいた古長谷稔ほか『放射能で首都圏消滅のデキにケチをつけるつもりはないのだが、出版の経緯など、少々補足することで、この日記が環境保護運動や消費者運動のいきすぎにも寛容であるかのような誤解をあたえることを、さけようとおもう。

■執筆者になをつらねている組織名としての「食品と暮らしの安全基金」というNGOについてだ。
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1000年先の子供たちのために?「食品と暮らしの安全基金」

日付: 20040617
カテゴリー: Food/Water,Chemicals
プレイヤー: NGO/Citizen
1984年、子孫を人工化学物質による被害から守るため、食品添加物や農薬などの遺伝毒性のテストを民間主導で行なっていこうとスタートした「日本子孫基金」が、設立20周年を迎えた2004年、新たに「食品と暮らしの安全基金」に名称変更し、さらなる活動を続けている。

ポストハーベスト農薬のスクープと全容解明をはじめ、シックハウス、遺伝子操作食品、ダイオキシン問題、環境ホルモン等、暮らしに潜む様々な危険性を指摘し、人々の安全な生活に向けて活動を続けてきた。

2002年発刊の「食べるな、危険!」はベストセラーとなり、翌2003年には「食べたい、安全!」「食べ物から広がる耐性菌」を発刊。2004年2月には、人権擁護活動の尽力者に贈られる「東京弁護士会人権賞」を、環境分野では初めて受賞した。

同基金事務局長の小若順一氏は、「新しい視点で問題点を見つけ、インパクトを与えて改善させるのが、市民団体として私達ができる最高の仕事ではないか」と考え、「これからも、発想が固定化しないよう課題を多角的に見つめながら活動していきたい」と語る。

活動経費は、会員の会費(月刊誌の年間購読料:個人1万円、グループ3万円)や寄付、出版物の売上で支えられており、初年度70名だった会員数は2004年現在4,400名まで伸びている。

http://tabemono.info

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BSE問題でも「日本子孫基金の小若順一事務局長は毎日新聞のインタビュー取材に応え、「米国は BSE は出ないという大前提に立ち、欧州並みの対策すら取ってこなかった」ことを挙げて米国の対応を批判、米国での BSE 発生に違和感を感じないと述べ、さらにオーストラリア産牛肉など、安全上比較的リスクの少ない市場へシフトしてこなかった企業の対応を批判した」など、非のうちどころがないように、一見みえる、たのもしい組織だが……。

〈練馬の里から〉ゆったり反戦通信 その11

発信者=井上澄夫(戦争に協力しない!させない!練馬アクション) 発信時=2001年10月5日
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自衛隊による原発警備を主張するNGO「日本子孫基金」を批判する

 本年9月11日に米国で起きた「同時多発テロ」への小泉政権の対応は、衝撃的な事態の発生を徹底的に悪用して、ドサクサ紛れに日本の「戦争国家化」を強行するものである。 日本のマスメディアは、政府に追随してテロへの恐怖を煽り、ひたすら米国による報復戦争の準備を伝えるなど、まるでホワイトハウスの広報部のようである。だが事件から日が経つにつれ、一時過熱した世論も、徐々にバランスを回復しつつあり、国内でも海外でも報復戦争反対の声が湧き起こり始めた。ワシントンではすでに、1万人もの人びとが参加する反戦デモが行なわれた。 ブッシュ政権が報復戦争への支援・協力を期待する「国際社会」も、次第に面従腹背の姿勢をあらわにしている。そういう世界情勢にもかかわらず、対米協力の主役たらんと〈勇躍〉前面に踊り出て、はしゃいでいる小泉政権と英ブレア政権の滑稽ぶりは際立っている。 にもかかわらず、日本政府とマスメディアによる扇動を真に受けて、治安の強化を要求する市民団体が登場してきた。9月25日、特定非営利活動法人「日本子孫基金」(事務局長・小若順一)は、原子力安全委員会に対し、次のように申し入れた。
 〈テロリストが、日本にも潜入している可能性があると報道されています。潜伏したテロリストが、影響力の大きな原子力発電所を攻撃の標的にすることは、十分に考えられます。テロ対策として、防護フェンスや監視カメラの設置、24時間の巡回警備など、警戒を強めているようですが、アメリカで起こったテロの手口を見た限り、そのような対策で、安全が保障できるとは思えません。したがって、原発周辺の住民のみならず、多くの国民が、不安な日々を送っております。そこで私たちは、日本の安全を確保するために、下記の事項を申し入れます。 原子力発電所施設の警備を強化するため、すべての原発を自衛隊に常時警備させること。〉
 原発を常時、自衛隊に守らせよというのである。同基金は、その二日後にも、警察庁に対し「テロの発生を想定し、それに対応可能な警備陣を(原発に)常駐させること」を要求している。

 同基金は、米国で起きた事件の背景にどのような事情があるのか、テロの原因にいっさい触れようとしない。しかも「テロリストが日本に潜入している可能性がある」という報道を要求の根拠にしているが、その信憑性をまったく問わない。これでは、小泉首相を喜ばせるだけだろう。 
 同基金の要求が実現すれば、原発に自衛隊が常駐する。その銃は、誰に向けられるのか。「テロリスト」のみならず、相次ぐ原発事故に抗議する人びとにも、原発の解体・撤去を要求する周辺住民にも、銃口が向けられるのだ。 しかも武装した自衛隊が原発に常駐するのは、その駐屯部隊が、いつでも原発を乗っ取ることができるということでもある。自衛隊は発足の当初から旧軍の幹部によって育てられた。もとより「シビリアン・コントロール(文民統制)の原則」など眼中になく、クーデターの願望を胸中に秘めている。そんなことがあるものかと考える向きには、三島事件(1970年)を自衛隊側から暴露した、元陸将補・山本舜勝著『自衛隊「影の部隊」』(講談社)の一読をお薦めする。
ところで「日本子孫基金」の〈活躍〉は、これで終わらない。上述のように、自衛隊と警察が原発をテロから守るよう申し入れたところ、「9月28日に首相が原発のテロ対策を指示したので、30日に柏崎原発の見学に行ってきました。現地を見た結果、テロ対策は不十分であることがわかりました。そして、一般の人を原発の建屋に入れる限り、現在の施設では、テロ対策は万全にできないと確信したので、本日(10月1日)、九電力会社と、日本原電、核燃料リサイクル機構に、(一般市民の)見学中止を申し入れました」というのである。申し入れ書には、こうある。
〈比較的対策が進んでいる柏崎原発を見学してみると、原発の建屋に見学者を入れることが最大のウィークポイントになっていると思いました。検査は金属探知器を用いるだけなので、セラミック等のナイフや、プラスチック系の爆弾なら持ち込むことができます。また、武器がなくても格闘技のできる人が一人いれば、コントロールルームを乗っ取られる可能性があります。〉
 これは、〈気分はもう治安当局〉のノリだ。マスメディアのテロ撲滅キャンペーンに乗せられて、一般市民の見学者が「テロリスト」に見えるのだ。
 「日本子孫基金」は、「食品や暮らしにひそむ化学物質の安全性についてテスト、調査を行うため、1984年に設立された環境NGO」だそうだ。それならその役割は、化学物質の安全性に関する政府や企業の対応を、きびしくチェックすることだろう。とすれば、原発の危険性も十分に認識しているはずである。テロによって原発が破壊されたらどういうことになるか、そこに深い危機意識を持っているなら、自衛隊に原発を守らせて電力供給を確保するのではなく、原発の運転停止、解体・撤去を要求すべきではないのか。 愛媛県八幡浜(やわたはま)市で地方紙『南海日日新聞』を発行している斉間満(さいま・みつる)さんが、10月2日付同紙のコラム「海鳴り」に、病院で久々に会った伊方(いかた)原発建設反対運動の仲間で、伊方町に住んでいるNさんの証言を紹介している。
 〈アメリカであんなことがあって、もしテロや戦争にでもなったら原発が一番に狙われるのではないかと心配です。隣近所の人も「おとろしい。どうなることやら」とみんな言うとります。やっぱり原発みたいなものはいりません。わたしら反対してきたことまちごうてなかったと改めて思いますぜ。何か起こってからでは遅いですけんな。何かがおこらな、みな気が付かんのでしょうかな。(原発の建設で)初めの頃はええ目を見た人もおりましたが、今は他所から来た人ばかりが仕事もろて地元の人間はええことありません。原発のせいで心配ばかりせないけんのです。〉
 斉間さんは、続けてこう記している。「穏やかに、しかし鋭くNさんは一気に喋った。80歳と言えども世界情勢に敏感で、社会の動きに鋭く反応する衰えない本能的な危機感覚。これが原発現地の伊方に住む人の生活感覚なのだと改めて教えられた」。
 9月11日以来、米軍と自衛隊は、最高レベルの厳戒態勢をとっていて、公安調査庁・警察庁も、治安対策を極度に強化している。日本子孫基金には、この国がすでに事実上の「戒厳令」下に置かれているという認識がないようだ。同基金の姿勢は、小泉政権が企んでいる自衛隊法改悪に追い風を吹かせ、脱原発をめざす人びとへの抑圧に手を貸すことである。

Created by toshi. Last modified on 2002/04/17

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■どうだろう。批判する井上さんもかなりあつくなってはいるが、このNGOのメンバーがどんなに善意であろうと、その体質には警戒をおこたることができないよう気がしてこないか?■そして、「食品と暮らしの安全基金」という、いかにも中立的な名称にも警戒・監視が必要だろう。その本質は、「日本子孫基金(Japan Offspring Fund)」という、ナショナリスティックで優生学的なふんいきを表出した旧称が象徴しているような気がする。
■有害物質の健康リスクの指摘・整理、おおいに結構。■しかし、かれらの運動は、自然界にある化学物質をふくめて偶然=統計学的分布の一環として誕生してくる障碍者や病者たちへも、自業自得的な「まなざし」、あるいは産業社会のもたらした「モンスター」的な位置づけをしかねない、体質をかかえこんでいるようにおもわれる。■それは、「意識のたかい自分たちの周囲には、有害物質による健康被害や異常出産を最小限にとどめるのが責務」という、倫理的潔癖主義(階級差別・階層差別的意識をはらんだ)をともなっているだろうし、それが同心円状に適用されれば、日本列島の安全確保という排外主義的な防衛姿勢につながりかねない。■その典型的なあらわれが、原発施設をリスク要因と位置づけながら、それをまもるために自衛隊・警察を配備せよ。テロリストがこわいという、発想ではないか?

■「あらての化学物質・新種も、第二の自然で適応・共存しなけば」などといいたいわけではない。■しかし、かれら「正義の味方」たちの姿勢と発想には、「すぎたるは、なお およばざるがごとし」という格言がちらつくし、有害物質=健康リスク要因を徹底的に排除した日常生活がおくれる、中間層というより、特権的な階層の非寛容性という印象をぬぐえない。

【関連記事】「食育イデオロギー 1」「食育イデオロギー 2