■先日につづいて、インターネット新聞『JANJAN』から、「比嘉康文の沖縄通信 」の最新号を転載【リンクをかってに追加】。


宜野湾市の伊波洋一市長が7月に3度目の訪米へ 〔2006/05/29〕


  海兵隊基地・普天間飛行場の危険性を訴えるため宜野湾市伊波洋一市長は7月16日から訪米することを決めた。これが実現すると3度目の訪米となる。

 アメリカには12日間滞在、ワシントン、ハワイで米国防省、連邦議会関係者、太平洋軍総司令部などを訪問、普天間飛行場の危険性の除去と早期閉鎖、全面返還を求める。伊波洋一市長のほかに宜野湾市基地政策部の山内繁雄次長ら職員3人が同行する。

 伊波市長は普天間飛行場の危険性は極限状況にあり、政府が計画している8年後の代替施設建設までは待てない、との認識である。

 政府は「外交は国の専権事項」というが、なぜ沖縄では米国に直訴するのか。他府県には見られない行動であるだけに、そうした疑問が当然起こるはずである。それは日本政府よりもアメリカ政府の方が民主的で、直に話し合いができることを体験的に知っているからである。27年間という長い米軍占領下で、沖縄人が体得した知恵である。
 また、米軍といえども誠実に訴えれば、理解があり、民主主義のルールを守ることを知っているからである。日本政府は一度決めたら、どんな理不尽であっても、変更しないところがある。しかし、アメリカの場合にはルールに合わないことは潔く認め、受け入れる場合が多い。

 その事例を挙げてみよう。土地闘争で知られる伊江島で米兵が演習で来島した際、民間地への被害などを説明したところ、押し問答はあったものの、結局米兵たちは引き上げてしまった。

 沖縄の革新勢力の代表として知られる元読谷村の山内徳信村長(後に沖縄県出納長)は、その著書『憲法を実践する村』(明石書店刊)の中で、アメリカのジミー・カーター大統領に手紙で訴えた事例を紹介している。それによると、「那覇防衛施設局の2番目か3番目の偉い人から電話が入ってきました。『直訴の主旨はわかった』『マスコミ報道で政治問題となってしまった。そのまま工事を続行するわけにはいかない。少なくとも村長が出した手紙によって、在沖米軍も知らんふりをして工事を進められなくなった』というのです」と述べている。

 山内村長は政府から「外交は政府の専権事項である」と叱られたことを紹介しながら「私がやったのは、民交であり自治体外交ですよ」と反論している。

 普天間飛行場をヘリコプターから視察したラムズフェルド 米国防省長官もその危険性を認めている。日本政府にはその危険性の認識が希薄である。2004年10月、当時の町村外務大臣沖縄国際大学米軍ヘリコプターの墜落現場を視察した際、米軍操縦士の腕前の良さには感心したが、普天間飛行場の危険性については言及せず、発言を撤回する騒動がおきたことは記憶に新しい。(関連サイト:http://university.main.jp/blog/archives/002068.html

 このように日本の閣僚には、ラムズフェルド長官のような誠実さがない。そうした日本政府に訴えるよりも米国政府に直訴した方が効果的なことを、沖縄は体験的に知っている。宜野湾市長をはじめ首長らをアメリカ行脚させるのは、すべて日本政府に責任がある、と言わざるを得ないだろう。宜野湾市の伊波洋一市長の直訴について外務省などが米国の関係機関に先回りをして「普天間飛行場は日本の国内問題」と言わせないことを願いたいものである。
比嘉康文

---------------------------------------------
■「外交は国の専権事項」という、ころしモンクは、政府の十八番だが、そうすることで、実はアメリカ政府関係者から、「それは日本の内政問題だから、日本政府と交渉してくれ」と、ていよく、いなされてしまうのだ。■比嘉さんがいわずとも、いや「外務省などが米国の関係機関に先回り」などしなくても、アメリカ政府は、ちゃんと、こずるくたちまわるだろう。■34年まえに日本に琉球列島を施政権返還してしまったことを、後悔などしていない。「日本政府」という衝撃吸収材があることで、アメリカは事実上の軍事植民地を低コストで維持できる。「思いやり予算」とやらもあってね。
■とはいっても、沖縄の自治体は、しぶとくねばるわけだ。政府首脳やら防衛庁幹部などと、やりとりしたって、抜本的前進なんて絶対にありえないが、アメリカに体当たりすれば、たまには事態が改善するような言質がとれる可能性がのこされているし、なにしろ「論理」が通用するんだよね。■すべて、まるめこみしか政治とこころえていない某国とは、雲泥の差だ。

■それにしても、町村信孝ってオヤジは、どうしようもない。「(米軍の)操縦士の操縦がうまかったこともあって、ヘリ事故で重大な被害が出なかった」「事故を機に学生が勉強をサボったりしないように」だとさ。