■死刑制度についての基本見解については、以前何度かかいたし、その後も見解にかわりはないので、ここではくりかえさない。■今回は、ひさしぶりに、『死刑廃止と死刑存置の考察・BLOG版』での文章に反応してというか、文章を一部転載。■ちなみに、この筆者は基本的に死刑存続に賛成するたちばだが、実に冷静な議論を展開しているし、資料的なサイトの運営者として尊敬の念をうしなったことはない。

2006年06月21日
山口母子殺害事件審理差し戻しで考えたこと

またまた出張中ですみません。昨日の判決です。

1999年4月14日山口県光市で発生した山口母子殺人事件で殺人罪などに問われた当時18歳の元会社員の被告(25)の上告審判決で最高裁判所第3小法廷は「罪責は誠に重大で、特に斟酌すべき事情がない限り、死刑の選択をするほかない」として、無期懲役を言い渡した2審広島高裁判決を破棄し、審理を同高裁に差し戻しました。

この事件は被害者遺族である本村洋さんが積極的にマスコミに出て被害者遺族の声をあげたことからマスコミからもかなり注目を受けていました。また被告が拘置所から友人に出した手紙が検察側の控訴理由となったことも注目された理由のひとつかと思います。

さて判決ですが、一審・控訴審ともに無期懲役を言い渡しました。この無期懲役が軽すぎるというのが本村さんの主張でした。被害者遺族の言葉としてこれは理解できます。しかし「事件」の内容自体は「殺人罪」「被害者2名」です。これから判断すれば無期懲役という判決自体はそれほど不当とは思えません。勿論被害者遺族としては「不当」と思うのは無理のないことですし、その思いを訴えるのは自由でしょう。また最高裁が「死刑妥当」という判断をしたことも、弁護団が主張する異常な判断とは思えません。犯行の残虐性、被告の態度等を考えれば死刑判決も十分選択としてあると思います。いうなればボーダーライン的な事件ではないでしょうか?広島高裁に再審理をせよという最高裁判決は極めて妥当だと思います。

しかしながらマスコミの論調が問題です。昨日本村さんは各TV局のニュース番組にでており、最高裁が原判決を破棄して死刑を言い渡すべきだという主張をしておりました。TBS系列以外の番組はこの主張を支えるような報道姿勢に見えました。(管理人の主観が入っていますが。)最もTBSの姿勢は管理人の考えから最も遠い構成でしたが。

今までこのHPをまとめていての結論に近い考えなのですが、近代法治国家の裁判では被害者遺族の処罰感情を判決に反映させるべきではないと思います。例えばシンドラーエレベータに殺された高校生のご両親の悲しみと悔しさ、本村さんの悲しみと悔しさに量的・質的な差が”驚くほど”あるのでしょうか?裁判は事実を捉えて審理すべきです。社会的制裁としての死刑はあるべきでしょうが、私的制裁の代行としての死刑は存在するべきではありません。

死刑制度を適正に法治国家が維持するためにも、最低限判決は慎重であるべきです。最高裁の判断は正しいと私は思います。なお個人的な思いを言わせていただければ、犯行の残虐性等を考慮すれば死刑判決は妥当だと考えます。

また本村さんが「18歳以上の犯罪者に少年法の恩恵を与えるべきではない(正確には覚えていませんが)」と主張されていましたが、これには完全に同意です。

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■あいかわらず冷静な議論はこびで、たちばが全然ちがうが、さすがという感想。
■問題は、この記事に反応したコメントの一部。
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1. Posted by 一悪一滅 2006年06月21日 22:14
色々な評論家先生たちの話によるとこの鬼畜に死刑が確定するのはほぼ間違いないという事なので一安心です
鬼畜には死刑が執行されるその日まで恐怖に慄けと言いたい物です 
それでも本村さんを癒す事は出来ないでしょうが
しかし腹立たしいのは鬼畜の父親がテレビの取材において「息子は反省している」の一点張りでまるで息子への死刑判決が不服だと言わんばかりの傲慢な態度には「お前も死んで詫びろ」と心の中で叫んでいました

一日も早く鬼畜がこの世から消え去る日がくる事を願っています。

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■最高裁が無期懲役判決を批判して さしもどした以上、高裁が死刑以外の判決をださないだろうことは、しろうともでもわかる。判例からいって、この事例は死刑がでても不思議でないし(現状では被告弁護がわが「異常な判断」などとリキんでも)、無期懲役がでても、同様だということだ。■それにしても、出張中だという、Shinさん(運営者)が、このかきこみに「完全に同意」などとは、返答しないとおもうが、気分がわるくなってくる。
■問題はShinさんのように、冷静に死刑制度が維持されるべきだといっても、このかきこみのように、異様な執念で死刑を正当化する人物がたえないだろうこと。■おそらく、このかきこみは男性で、しかも事件の当事者などではないはず。だとすれば、遺族のたちばになどたてないのに、かってに同情・共感したつもりで、「私的制裁の代行としての死刑」をまちこがれているのである。■なんと、サディスティックな心理か。ハラナが死刑に賛同できないのは、こういったヤカラの欲望を充足するために、なんのつみもない刑務官が、代理殺人の執行者として利用されていることだ。
■あと、某もと死刑囚のように、処刑されることを、自分ではやりきれない自殺の代行に利用するヤカラも、少数ながらでることもね。■死刑制度を悪用した「時間差ムリ心中〔シンヂュー〕」に、まきこまれたら、うかばれないぞ。なにしろ被告は死刑判決をのぞんでいるんだからな。国家権力を利用した嘱託殺人だ。■それこそ、サディスティックに加害者をいたぶりたいなら、終身刑しかなかろうが……。

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