■てらまちさんが、全文複写しているが、こちらでも念のため。■リンクは、キャッシュで。
■なぜか、すっかりみおとしていた記事。というか、朝日はサイト内検索で、ひっかからないようにしているわけ? 「「いま」をみつめる」とかいう特集記事に分類するのは、かってだが、ちゃんとひっかかるようにしてほしい。

「提訴 不信の代償大きく」
朝日新聞(2006年06月13日,asahi.com)

【瀬戸・幡中 フェロシルト問題】

 瀬戸市幡中町に埋設されている有害な埋め戻し材フェロシルトの撤去を巡り、石原産業(大阪市)が先月、県の撤去命令の取り消しを求める訴訟を起こした。6月末の株主総会を意識しての行動だが、県や地元自治会の信頼を失った損失は大きい。提訴の背景には予想を超えて膨らむ撤去費用に加え、思ったように処分場を確保できないことへの焦りもあったようだ。(杉本裕明)
●「地元も支持」訴状に抗議

 先月23日。瀬戸市の菱野自治会(1500世帯)に自治会報が配られた。「フェロシルト関連のお知らせ」の題で厳しい内容が並ぶ。あくまでも全量撤去を要請する。封じ込め案については、県と市が了承した案でない限り、(同社の)提案も説明も受けない

《進まぬ撤去》 緊急配布には、理由がある。2月、市役所の会議室で自治会代表と同社の定例会があった。幡中町は撤去作業がまったく行われていなかった。同社はフェロシルト混じりの量を59万立方メートルと推定、期限の8月15日までに撤去するには1日千台のダンプカーが出入りするとの計画書を見せた。

 「まるで現実性がない話だ」。元自治会長の伊藤明さんが他の案があるのかと尋ねると、同社幹部に付き添う建設会社社員が「封じ込め案がある。コンクリート壁を地下に打ち込んで……」と言いながらホワイトボードに絵を描いた。

 質問もないまま散会した。5月15日にも会は開かれたが、撤去について進展はなく、伊藤さんは同社の安藤正義常務に「やる気があるのか」と不信感をぶつけた。が、常務は「処分先が見つからない」。


 6日後の21日に同社は突如、提訴。訴状に「(封じ込め)案は地元住民からも支持を得ていた」とあった。訴状を読んだ伊藤さんの抗議に同社は誤りを認めた

 伊藤さんはいう。「近くには学校もありダンプカーの危険もある。住民にとってどんな選択がいいのか判断材料を得ようと動いていたのに振り出しに戻った。目が株主にしか向かず、住民がどう感じているかには関心がないのだろう

 幡中町の撤去問題を打開するため、県の依頼で市は専門家、市、県、地元自治会代表からなる検討会を4月、発足させた。先月21日に二回目の会が開かれ、次回に石原産業が撤去案を示し、どんな問題点があるのか議論する手はずになっていた。が、その夕刻。同社が提訴し、中止が決まった。


《戸惑う委員》 現地での覆土による封じ込めも対策の一つではある。不法投棄の対策で採用されることが多く、検討会委員の笠倉忠夫・前豊橋技術科学大教授は「環境汚染の危険性が低ければこれでもいい」という。ただ、検討会に提案されたことはなく、突然、訴状で同社が主張するという異例の展開に委員は戸惑うばかりだ

 稲垣隆司副知事は「裁判とは別に石原産業とは話し合いを続けたい」としながらも、「石原産業は産廃を違法に埋設したことがこの問題の原点だと認識してほしい。こんなことでは大量の廃硫酸を四日市港に垂れ流し摘発された37年前の体質が変わっていないと思われないか」と話す。

●処分場探し 業者に一任

 昨年6月に岐阜県がフェロシルトから環境基準を超える六価クロムが検出されたと発表したのを受け、石原産業は「自主回収」を表明。その後、東海3県と京都府が出した撤去命令に従っている。

 だが、撤去は思うように進まない。瀬戸市北丘町、京都府加茂町など、撤去計画書を出し直したところもある。同社は「全国各地で懸命に処分場探しをしている」(炭野泰男・経営企画管理本部長)と言うが、額面通り受け取る行政関係者はほとんどない

《「自ら努力を」》 先月、環境省の産業廃棄物課を産廃ブローカーが訪ねた。「石原産業のために処分場を紹介してほしい」。担当者があきれて言った。「法律に沿って撤去命令が出されたんだ。石原産業が自ら努力しないと」

 同社は処分場探しを複数の産廃ブローカーに任せっきり。民間処分場が受け入れを決めると、今度は処分業者が自治体に搬入許可を求め、最後に石原産業の出番となる

 県の田口延行・廃棄物監視指導室長は「『人任せにせず、自分で努力しないと見つからない』と言っても、『いや会社で決めたことだから』と言い訳するだけ」。搬入を断った東海地方の処分場経営者は「社長ら幹部が来て頭を下げるのならともかく、(業者を介し)電話でお願いしますと言うだけでは」と話す。

《自治体規制》 処分業者が受け入れを決めても難関が待ちかまえる。岩手県、大分県など県外からの産廃流入を規制する県が多く、搬入を阻止されるからだ。

 千葉県は協議の末、4月から3万6千トンの搬入を認めた。だが、当初の申請量は半分に削減された。同県産業廃棄物課は「これ以上、県内にフェロシルトを持ち込ませない」。15万トンの搬入を予定していた大分市も3月末、不許可にした。

 最終処分場への搬入が予定されている福岡市。「名古屋港から船に載せれば大量に運べる」と、愛知県の助言を得た石原産業は北九州市の港への陸揚げを進めた。ところが港を管理する北九州市は「公共の施設は使わせない」。海上輸送は宙に浮く格好となった。

 同社は9日、「計34万トンの搬出が可能」と明らかにしたが、結局のところ三重県の公共処分場の受け入れ分を除くと13万トンにすぎない


【壁埋設で封じ込め危険 住民安心できる解決を】


平田健正・和歌山大教授に聞く

 瀬戸市幡中町のフェロシルトの撤去問題を、どう考えたらいいか。フェロシルトの製造過程から六価クロムが生成される機構の解明などに取り組んだ「三重県フェロシルト問題検討委員会」の座長を務めた平田健正・和歌山大学教授(環境システム工学)に聞いた。

 ――幡中町だけで59万立方メートル(約90万トン)のフェロシルト混じりの土が埋設されている、と石原産業は主張している。

 「もし本当なら、撤去先を見つけ、短期間に撤去するのは不可能に近い。撤去するならどこに持っていくのか決めていないといけない。というのはフェロシルトに含まれる三価クロム(無害)は空気に触れると酸化されて有害な六価クロムになる。撤去すればこの場所のリスク(危険性)はゼロになるが、当てもなく袋詰めしたら逆に危ない。地中にあり、しっかり覆土されていれば酸化は進まずリスクは小さい


 ――同社は、撤去すればダンプカーで粉じん公害が起きる。コンクリート壁を地中に埋め、フェロシルトの層を外部から遮断する「封じ込め」なら安全、と主張している。

 「それも問題。外部と遮断すると降った雨は区域外に出ないから区域内の水位が上がり、フェロシルトから六価クロムが溶け出し、環境汚染の危険性が高まる。もっと厚い覆土を行い、汚染が起きないか継続監視する方法もある」


 ――法律によって対策の取り方が違うことも混乱を招いている。

 「今回は産廃と認定されたため、廃棄物処理法ではフェロシルトは汚泥とみなされ、管理型の埋め立て処分場への搬入が義務付けられている。そこでは汚染のあるなしは関係ない。撤去命令を出した県はその立場。一方、今回適用されなかった土壌汚染対策法では、この汚染レベルだと撤去の必要はなく、何もしなくていい場所となる」


 ――撤去より現地での覆土がいい?

 「そうではない。どの解決策がいいか決めるのは会社でも学者でもない。結局は近隣住民。技術的、科学的に安全性をいくら立証したところで、住民が『安心できない』といっている以上、この問題は解決しない。それを理解しない会社がごり押しすれば大きな紛争になる。県、同社、住民が話し合い、信頼関係を作りながら合理的な解決を目指してほしい。県と同社の対立で困るのは地元の住民だ」


【撤去対象106万トン 4府県】

 フェロシルトは、石原産業が開発、販売した埋め戻し材。チタン鉱石から、顔料にする酸化チタンを製造する過程ででた廃液と汚泥が原料。以前は無機性汚泥として三重県の財団法人・環境保全事業団の最終処分場に埋め立てていた。が、年間数万トン、十数億円の費用負担に頭を痛めた同社は、リサイクル製品の開発に着手、98年にフェロシルトを完成させた。

 中部国際空港の空港島の埋め立て材にと販売攻勢をかけたが失敗。03年に三重県にリサイクル製品の認定を受けたが、1トン当たり500円で買ってくれる業者はほとんどなく、同社は零細の建材業者などを相手に同150円で販売した形をとる一方、「開発費」の名目で同3千円を払ってさばいていた。

 この行為は前社長時代に決裁しており、同社は「正当な商行為」(田村藤夫社長)と主張している。が、環境省は「商品を装っているが、実際には産廃処理費」(廃棄物・リサイクル対策部)と判断、4府県は産廃と認定した。

 一方、岐阜県や愛知県の調査で各地に埋設されたフェロシルトから環境基準を超える六価クロムとフッ素が検出された。フェロシルトの製造過程で鉱石に含まれていた三価クロムが化学反応を起こし、有害な六価クロムが生成されることも同社四日市工場の実験でわかった。また、リサイクル製品として三重県に申請した製法と異なり、費用を浮かすために様々な工場排水で製造していたことも明らかになった。

 愛知県と岐阜県は昨年11月、廃棄物処理法に基づき撤去命令を出し、京都府も含む4府県での撤去が本格化した。しかし、民間の最終処分場の確保が思うように進まず、工場での一時保管も約30万トンに。4府県に埋設されたフェロシルトは、瀬戸市幡中町を除くと約66万トンだが、同社は混じり合った土も含めて撤去対象量を106万トンと想定
している。

 同社は326億円の回収費用を計上、05年度決算で107億円の欠損を出した。愛知県内では瀬戸市、豊田市、長久手町など8市町、14カ所に25万トンが埋設され、うち9カ所で撤去が終了。5月15日が撤去完了日のはずだった北丘町ではなお5万トンが残り、作業は11月末まで延長されることが決まった。

 この問題を巡っては廃棄物処理法違反(委託基準、不法投棄など)の疑いで東海3県の県警と京都府警が昨年12月に合同捜査本部を設置、社員の事情聴取を進めている。一方、同社は「一連の行為は当時の副工場長が独断で行った」(田村社長)と社長はじめ幹部らの関与を否定している。

                 ◇


【費用負担の大きさ 命令是非と無関係】

●産廃問題に詳しい北村喜宣・上智大教授(環境法)の話

 廃棄物処理法は環境保全上の支障がなくても飛散など将来支障が起きる恐れがあれば撤去命令を出せる。同社は支障が起きていないことをもって恐れもないというが、その理由がはっきりしない。費用負担が大きすぎるかどうかは撤去命令が違法かどうかとは関係ない。法律は「お金がない」場合、行政が代執行して撤去、費用を同社に求償し、足りない分は行政が負担する制度になっているからだ。同社がこれらの点をよりどころに命令を無視し、従わないと命令違反罪が成立、県が告発すれば罰せられる。裁判で争っても同社に勝ち目はないだろう。


【迫る株主総会 行政指導困る】

●石原産業の炭野泰男・経営企画管理本部長の話

 株主総会が迫っている。撤去期限が守れないからといってこれ以上、行政指導を受けては困るので提訴を決めた。環境基準を超える六価クロムは検出されておらず、これまで生活環境上の支障は起きていない。また、土と混ざったり、土だけが大量に埋設されたりしており、撤去する量は200万トンにも及ぶ可能性がある。その撤去には膨大な費用がかかり会社の存亡にかかわる。だから撤去よりも現地で遮水壁を設置し、外に出ないように封じ込めた方がいいと判断した。主張を聞いてくれれば取り下げることもありえる。

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平田健正先生は、以前ご登場。信用できる御仁なのか? だれか追加情報を。■ちなみに「今回適用されなかった土壌汚染対策法では、この汚染レベルだと撤去の必要はなく、何もしなくていい場所となる」とか、おっしゃっているが、だとしたら、「土壌汚染対策法」ってザル法なわけ? ■そうじゃないとしたら、「産廃」に認定して撤去が強制される根拠は? ■しろうとかんがえでは、健康被害が直接予想できる程度の有害性がなくたって、くさいとか、集積によって市民生活にとって不愉快な現場がうみだされるんなら、「この汚染レベルだと撤去の必要はなく、何もしなくていい」なんて結論はナンセンスなのでは?■しろうとが なっとくできる水準で説明してよ。

笠倉忠夫先生は、何度もご登場(笑)。■現地封じ込め案を提案した御仁が、石原産業の提訴で、今度は「被害者」?(笑)

■まえの愛知県環境部長 稲垣隆司さん。「石原産業は産廃を違法に埋設したことがこの問題の原点だと認識してほしい。こんなことでは大量の廃硫酸を四日市港に垂れ流し摘発された37年前の体質が変わっていないと思われないか」とは、ずいぶんご立派な発言で。■愛知万博会場そばの大量のフェロシルト埋設は、環境部長時代では?

また環境をテーマに開催された「愛・地球博」でも使用される予定だったのか、閉幕後、元駐車場に大量に山積みされていた」〔Wikipedia フェロシルト


■でもって、杉本裕明記者。取材・攻勢をもって、なにをつたえたいのですか?■先日は、てらまちさんからの批判に擁護論を展開したが、今度の記事は、御用学者さんによる「安心宣言」のための特集記事ですか? ■ま、この日記の熱心な読者のみなさんは、平田先生の解説だけじゃ なっとくしないはずで、セカンド・オピニオンが必要でしょ? 「地中にあり、しっかり覆土されていれば酸化は進まずリスクは小さい」がホントだっていう化学的・疫学的根拠を、専門の第三者にしてもらわないと。