■別処珠樹さんの『世界の環境ホット!ニュース』のバックナンバーから転載【リンクは、ハラナによる追加】。■シリーズ第16-7回。■いつもどおり、ハラナがかってにリンクをおぎなっている。

【シリーズ記事】「転載:枯葉剤機密カルテル1」「」「」「」「」「」「」「」「」「10」「11」「12」「13」「14」「15



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世界の環境ホットニュース[GEN] 601号 05年08月22日
発行:別処珠樹【転載歓迎】意見・投稿 → ende23@msn.com     
枯葉剤機密カルテル(第16回)     
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枯葉剤機密カルテル        原田 和明

第16回 PCPの正体

このシリーズ第1回でとりあげた楢崎弥之助社会党)の枯葉剤国産疑惑告発の1年前に、既に朝日新聞が三井化学(当時、後に三井東圧化学を経て現・三井化学)の枯葉剤製造疑惑をスクープしていました。(1968.7.12朝日新聞夕刊)記事によると、

「三井化学大牟田工業所(福岡県大牟田市)で枯葉剤 245Tと同種の除草剤 245TCP(トリクロロフェノール)の 製造工程で 皮膚疾患患者が大量に発生、『他の職場に移りたい』と訴える 作業員が 続出している。同工業所が245TCPを作り始めたのは1967年10月で、BHCリンデンなどの殺虫剤の残りカスが原料。日本では 三井化学だけがつくっており、現在月産50-55トン。出荷先については一部の労働組合は「ベトナムの枯葉作戦用に輸出している。」というビラをつい最近まいたが、これについて会社側は「とんでもない誤解だ。うちでは全部オーストラリアやニュージーランドなどに牧場用として輸出している。」と言っている。」

この記事では「245TCP は枯葉剤と 同種の 除草剤で、BHC やリンデン(BHCの一種)などの残りカスが原料」となっていますが、「245TCPはBHCの残りカス」どころではなく、「目的物が245TCPで、BHCはその残りカス」であると考えられます。その理由を枯葉剤の主成分のひとつ245Tの製造工程で示します。

ベンゼン+塩素 → 塩化ベンゼン類 → 四塩化ベンゼン → 245TCP → 245T (A)

蒸留で分離 ↓

四塩化ベンゼンを除く塩化ベンゼン類 → 塩化フェノール類(PCP もどき) (B)
(BHC もどき)      (本来の PCP は五塩化フェノール)


この式で紛らわしいのは数字の意味が異なる点です。「245TCP」の245は 塩素がついている位置を 表していて、塩素の 付加数としては3です。一方、「四塩化ベンゼン」の四(4)は 塩素の付加数を 表します。塩素がついている位置は表記していませんが、表記すると「1245」となります。今回は塩素の位置表記と付加数を区別するために、位置表記をアラビア数字、付加数表記を漢数字としました。

ルートBが主反応と考えれば新聞記事通り「245TCPはBHCの残りカス」となりますが、BHCを作るためなら四塩化ベンゼンを抜き取る必要はありません。一方、245Tを作るには塩化ベンゼン類から四塩化ベンゼンのみを抜き取らなければなりませんから、主反応はルートAでなければならず、「残りカス」はBHCであって、245TCPではないのです。

上の245T製造工程から、不純物はクロロベンゼン類であり、これを加工して「PCPもどき」とするか、クロロベンゼン類をそのまま「BHCもどき」として処分するかの選択となります。従って、245Tの需要が増せば、それに比例して「BHCもどき」あるいは「PCPもどき」も大量に発生することになり、処分方法としての「BHCおよびPCPの商品化」が必要になります。

三井東圧化学(福岡県大牟田市)の子会社・三光化学では操業開始から1964年までの間は上の反応式の末端にあるPCPとBHCの2種類の農薬を生産していました。そして、その一方のPCPは本来の5塩化フェノールではなく、塩素数の異なる塩化フェノール類の混合物「PCPもどき」であったことがわかっています。

1960年代前半から「PCPもどき」を「除草剤PCP」として農林省の全面的バックアップの下、需要拡大政策がとられたということは、既にその時点には日本政府と三井東圧化学とが一体となって枯葉剤生産に関与していたことを意味するものと思われます。枯葉剤原料の245TCPの生産開始時期は、冒頭の朝日新聞の記事にあるような「1967年10月」ではなくて、少なくとも肥料取締法改正案が上程された1962年6月には既に始まっていたと考えられます。

「1967年10月」はおそらく枯葉剤の一成分245Tそのものを生産し始めた時期をさしているのではないかと思われます。

オーストラリアやニュージーランドに運ばれた三井化学(または三井東圧化学)の245TCPが輸出先で加工されて、ベトナムに運ばれたことは既に説明したとおりです。

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世界の環境ホットニュース[GEN] 602号 05年08月26日
発行:別処珠樹【転載歓迎】意見・投稿 → ende23@msn.com     
枯葉剤機密カルテル(第17回)     
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枯葉剤機密カルテル         原田 和明

第17回 林野庁からの委託研究

枯葉剤国産化に林野庁も一役買っていたという疑惑についても触れなければなりません。米軍がベトナムで枯葉剤を散布していた時期に、日本では林野庁が国有林に塩素酸ソーダを中心とする除草剤を散布していました。そして三井東圧化学が枯葉剤245Tを生産しはじめると、林野庁もまた245Tを国有林に散布しはじめたのです。林野庁の一連の行動は「日本版枯葉作戦」と呼ばれ、林野庁は省力化を口実に労働組合を敵視し、住民を欺き、大臣の発言を無視して散布を強行しました。そのような暴走はベトナムでの枯葉作戦が中止された後も続き、林野庁が残した負の遺産はあまりにも大きなものでした。

ミミズ研究で有名な中央大学名誉教授・中村方子の「ミミズに魅せられて半世紀」(新日本出版社2001)の中に「人間として許せない出来事」という項目があり、ここに林野庁からの「委託研究」に関する記載があります。(以下引用)

その出来事は、アメリカのベトナム侵略戦争のさいの
枯葉作戦との関わりであった。「枯葉剤は人畜無害であ
って、これを用いるのは敵の隠れ場所をなくして友軍の
安全をはかるだけの作戦であり、非常に人道的な作戦で
ある。」と報道しながら米軍は連日多量の枯葉剤をベト
ナムで散布し、その結果がもたらした人命や自然に対す
る計り知れない破壊行為は今では弁明の余地はない


こうした中で、日本でも多量の枯葉剤が森林の下草
管理を目的として散布され、東北に住んでいる分布北限
ニホンザルに多くの奇形児が生まれ問題になった。
この散布が実施される前に、この枯葉剤散布を是とする
ための「研究」が求められたのである。それはかつて
水俣において有機水銀中毒患者が発生したとき、工場
排水に原因があることの真相追及をはぐらかすために
複数の御用学者が関わったこととも類似していた
東北
のブナ林の下草管理を人手に代わって、枯葉剤散布に
切り替えようとした営林署が、事前に枯葉剤散布は環境
に悪影響を及ぼさないというデータを出してくれること
をK先生に頼んできたのである。そのデータを学会誌等
に発表しないことも含めてK先生は引き受けられたので
ある。私は当然協力を拒否して批判した
。(引用終わり)

K先生の怒りはいかばかりだったでしょう。中村は幸い教育公務員特例法によって解雇を免れたものの、15年間研究者として「干された」状態にされました。文中に「出来事」の時期は明示されていませんが彼女の経歴から逆算すると1963年のことと推定されます。当時 林野庁が国有林に散布していた除草剤は ほとんど塩素酸ソーダでしたから、林野庁が委託した試験は枯葉剤以外にも複数の薬剤がリストアップされていたと思われます。

営林署が塩素酸ソーダの散布を始めてから、この薬剤に由来する事故が多発、青森では死亡事故まで起きていて、国会でも塩素酸ソーダ散布の是非が問われています。(1962年10月30日参院決算委員会)

北村暢(社会党)「除草剤は市販品をそのままいきなり事業化して使っているのですか?」

林野庁長官・吉村清英 「そうでございます。」

北村 「軽率ではないか?20年近く林業試験場で研究されている除草剤と市販の除草剤とどんな比較検討をして市販品を選択したのか?」

林野庁長官 「いろいろな試験をして塩素酸ソーダが適当だということになった。」

北村暢 「農薬検査所や、林業試験場に確認したところ、塩素酸ソーダを使うのは危険であるとの意見があった。枯れ草に付着すると引火の危険が高いという。山林除草剤に使うなら引火性のない塩素酸石灰を奨励するのが普通だ、こういう意見があることを承知しているか?」

林野庁長官 「塩素酸石灰があることは承知しているが、その方が適当だとの意見までは聞いていない。」

北村 「林業試験場の長年の研究成果がどう生かされて塩素酸ソーダを使うことになったのか?経済効果はあるのか?」

林野庁長官 「一度の散布で比較すると除草剤使用の方が高くつくが、一度散布すると2年間は草がはえないという前提で考えている。効果の確認には試験面積を広げる必要がある。」

北村 「植栽木には害はないのか? 実際には植栽木のまわりは鎌で草きりをしてから散布していると聞いた。それで合理化効果はあるのか? 試験なのに技術的にそのやり方でいいのか? 鉄道沿線では5m離れた桑の木が散布で葉が落ちたということがあった。」

(この件については回答なし)

北村 「試験散布といいながら、死者が出た青森では、監督もいない、使い方の指示もない、ただ作業員に撒けというだけで、彼らに手で撒かせている。試験の体制でもない。いったいどういうことか?」

林野庁長官 「予め十分な注意をしたと報告を受けている。事故があったのでさらに厳重に注意をした。」

北村 「林野庁は昭和電工の塩素酸ソーダを使っているが、青森営林局の経営部長の指示を書いたプリントを見ると、メーカーの昭和電工が出した宣伝ビラを文書にしただけではないか? 林業試験場の結果に基づいて使用方法を決め、その方法ならばこんな効果がでるというものがなければならないのに、市販であるというだけで林野庁は使っている。使うことになったから、しゃにむに使うというやり方は軽率ではないか? 私には理解できない。」

ここで委員長が速記を止めさせていて その後どのようなやり取りが あったかはわかりません。質疑もここで終わっています。営林署が都立大学K先生に「散布薬剤は安全だとの試験結果」を要請したのはこの後まもなくのことと見られます。

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■御用学者ってのは、かならず登場するっていうか、いろんなエサがまかれて、養成されるんだね。「アメとムチ」をつかって。■中村さんが「15年間研究者として「干された」状態」をみて、周囲の研究者は、さぞや保身へとはしったことだろう。こんな理不尽な暴力がときどきおきるだけで、惨状は伝説化し、体制護持のうすぎたない人脈が自然とくみあがるとおもわれる。■『ヤバい経済学』が指摘しているとおり、KKKなど、テロ集団によるリンチなど凶行は、ごくときどきで、効果絶大らしい。「はむかうと、ああいう風にやられる」って、みんながこおりつくだけで、体制は充分に保守化するってこと。■ときどき「鉄砲玉」の人物を利用して、ゾッとするような野蛮をやらせれば、効果を長期間利用できるって、体制派は、そのことを熟知しているわけだ。