■別処珠樹さんの『世界の環境ホット!ニュース』のバックナンバーから転載【リンクは、ハラナによる追加】。■シリーズ第18回。■いつもどおり、ハラナがかってにリンクをおぎなっている。

【シリーズ記事】「転載:枯葉剤機密カルテル1」「」「」「」「」「」「」「」「」「10」「11」「12」「13」「14」「15」「16-7



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世界の環境ホットニュース[GEN] 603号 05年08月31日
発行:別処珠樹【転載歓迎】意見・投稿 → ende23@msn.com     
枯葉剤機密カルテル(第18回)     
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枯葉剤機密カルテル         原田 和明

第18回 日本版枯葉作戦の始まり

1966年になると、林野庁は 6月14日付通達で飛行機(ヘリコプター)による除草剤散布を認めました。

通達では集落の近くや水源地には散布しない、散布エリアに作業者がいないことを飛行前に確認するとなっていますが、全林野新聞には山に入っていた作業員の頭の上から塩素酸ソーダが降り注いだ、弁当の上にも降ってきた、水源のイワナが死んだ、養魚場の魚が 全滅した、放牧していた牛馬が死んだ といった記事がたびたび掲載されるようになりました。
空中散布は「省力ならびに経費節減」が目的という林野庁の説明でしたが、66年10月に早くもその理屈は突き崩されています。全林野前橋分会が除草剤は人体への影響がある問題ばかりでなく、人間による下刈りよりも高価につくというデータを具体的に示したのです。(1966.10.6 全林野新聞)記事によると除草剤使用の場合は人間による下刈りの約2倍のコストがかかるとのことです。

事故が続いても、コスト高になっても、住民の生活が脅かされても、反対運動が各地で起きても、林野庁長官は散布を中止しない、延期するつもりもないと言い続けました。厚生大臣が「除草剤使用には慎重を期したい」と言っても林野庁長官・松本守雄は「とりやめる考えはない。」「住民には夜遅く朝早く出かけて行ってでも説得に努める。」と並々ならぬ執念をみせています。(1970.10.9 衆院社会労働委員会)そして、実際、営林署と関係深い製材業者である町議をまず切り崩し(1970.12.8 衆院農林水産委員会)、反対署名した住民に対し、下請業者や営林署管理職が夜討ち朝駆けで戸別訪問し、署名撤回を要請、住民は地域社会を分断する行為に困惑しました。

また、林野庁は「除草剤・塩素酸ソーダは食塩と同じ成分で安全」と説明、安全性を疑問視する住民に問い詰められて営林署管理職が除草剤を飲んで見せるという事件まであって、住民は「営林署はキチガイ同然」と呆れました。(1970.12.29 全林野新聞)
そのような林野庁の 努力の結果、散布量は年々増加し、67年度52900ヘクタール、68年度6万、69年度 74300ヘクタールに散布(1970.10.9 衆院社会労働委員会)、種類別では 69年度の実績で、塩素酸ソーダが 面積で 54000ヘクタール(製剤量5280トン)、245Tが 面積で19200ヘクタール(製剤量で570トン、このうち 245T 原体は7トン)、スルファミン酸系は全体の使用量の1%程度(1970.10.27参院農林水産委員会 林野庁長官・松本守雄答弁)、民有林で69年度の使用面積は36000ヘクタールに達しました(1970.12.8衆院農林水産委員会林野庁長官・松本守雄答弁)ただし、民有林での除草剤使用は林野庁が強力に要請した事例もあったことがわかっています。

このように、山林に散布された除草剤は245Tよりも塩素酸ソーダの方がはるかに多いのです。なぜ林野庁は「キチガイ」呼ばわりされるほどの執念で、林業試験場も問題だと指摘する塩素酸ソーダの散布にこだわったのでしょうか?

そもそも塩素酸ソーダとは何でしょうか? まず塩素酸ソーダの製法をみてみます。塩素に苛性ソーダを反応させると塩素酸ソーダと食塩ができます。この反応式から、林野庁が「除草剤は食塩と同じ成分」と宣伝していた意味が少し理解できます。正しくは「除草剤には(精製していないので)食塩と同じ成分が残ったままになっている。」というだけの話で安全かどうかとは別問題です。

3Cl2  +  6NaOH  →  NaClO3  +  5NaCl  +  3H2O
(塩素)  (苛性ソーダ) (塩素酸ソーダ) (食塩)    (水)

ただ、これだけを見ても林野庁と塩素酸ソーダの関係は見えてきません。ところが、これに枯葉剤原料245TCPの生産工程(第16回参照)を重ねて表示してみると、林野庁の執念の理由が見えてきます。

四塩素化以外の塩素化ベンゼン→除草剤PCP(農林省が推進)

ベンゼン+塩素→塩素化ベンゼン→四塩素化ベンゼン→245TCP→245T
↓(余剰の塩素)苛性ソーダで吸収   (豪・ニュージーランドへ)
[塩素酸ソーダ+食塩](林野庁が散布していた除草剤)

枯葉剤原料を含む有機塩素系農薬の製造には塩素ガスが使われます。化学反応で使われなかった余分の塩素ガスは有毒なのでそのまま排気するわけにはいかず、苛性ソーダなどのアルカリ剤で中和・吸収して塩素ガスを処理するのです。このとき、副生してしまうのが塩素酸ソーダです。

枯葉剤原料を作ろうとすると、その製造段階でできてしまう副産物(産業廃棄物)を処分しなければなりません。副産物の処分ができなければ製品も作ることができなくなります。そのような重責を担って、ベンゼン由来の副産物は農林省の担当で「除草剤」として水田に、塩素由来の副産物は林野庁担当でこれも「除草剤」として山林で「処分」することにしたのでしょう。日本の国土は枯葉剤の産業廃棄物処分場となったのです。林野庁が何と言われようと除草剤散布をやめなかった理由がここにあったと考える以外に、林野庁の執念を説明できません。

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■林野庁というのは、森林資源管理を監督することで、水害などを予防し、農林業の基盤整備をするべき部署であり、自覚はあまりないかもしれないが、水産資源の維持のためにも重要な業務をこなすための機関だ。■そして、農業経済学的には、過疎地の荒廃をくいとめ、列島の環境行政の基盤づくりに貢献すべき組織でなければならない。■しかし、実際には米軍のベトナム戦争の後方支援体制に完全にくみこまれ、あまっさえ、その産業廃棄物ならぬ軍需廃棄物の廃棄場を確保するために、農民・市民の健康被害も無視するという、実に野蛮で売国的な組織と化したのである。