■だいぶまえにかいた「過小評価される「負け犬」論」の続編。■もちろん、ここのところ、話題のひとである、柳澤(柳沢)厚生労働大臣の発言がらみのネタ。

■以下、引用するのは、有名なブロガー『404 Blog Not Found』による『負け犬の遠吠え』へのツッコミ。

2005年06月05日 18:41 [Edit]
犬に失礼にもほどがある
酒井順子さん、タイトル間違ってますよ。


79982de4.jpg
正しいタイトルは、「負け犬のつぶやき」でしょ?








負け犬の遠吠え
酒井順子

いや、それはずいぶんと犬に失礼なタイトルかもしれない。少なくとも、犬はちゃんと吠えますから。

わざわざ私のだいっきらいなハードカバーを我慢してまで買ったのは、世にも名高い貴女の吠えっぷりを堪能するためでした。

どこでもどこにも吠えてないじゃないですか。あるのはつぶやきと甘えばかり。明らかに看板に偽りがあります。PL法に基づき返金をお願いしたく存じます。いや、以下引用をいくつかしますので、その分の印税は相殺してください。
というわけで政治家および役人のみなさん。晩婚化や少子化は、女をどうにかすれば解決する問題ではないのです。オタ夫が生身の女性に興味を持つようにし、ダレ夫に責任感を持たせ、ジョヒ夫に高望みをやめさせ、ブス夫にはもっと押しを勁くするよう指導し、ダメ夫のダメさを矯正する。これだけで日本の将来はずいぶんと変わるのではないかと思うのですけど....って、そんなことが可能だとは、私もさらさら思ってはおりませんけれども。

香ばしいまでのイヤ汁が滴っております。「オタ夫が生身の女性に興味を持つようにし、ダレ夫に責任感を持たせ、ジョヒ夫に高望みをやめさせ、ブス夫にはもっと押しを勁くするよう指導し、ダメ夫のダメさを矯正する」のは、まさに女にしか出来ぬ仕事にして生き甲斐なのではないですか?

もちろん、「卵が先かニワトリが先か」という問題はあります。男が萎えれば女が腐り....というセフレ、もといデフレスパイラルに一方的な責任者はいません。

ですが、どちらが先かというのははっきりしています。

人を生むのは、女性にのみ可能です。男も女も母から生まれてくるのであって父から生まれてくるのではないのです。

いい男を求めて吠えるのは、女の特権にして義務です。きちんと吠えてください。男達は、みんな聞き耳たててますよ。そして言い寄ってきた男が気に入らなかったら、だらだらとつきあうふりをするのではなく、欠点をきちんと指摘した上で突き放す。そうして男は育っていくのではないですか?

「あなたは女として幸せではない」というのが「負け犬」さんたちに対する最大の殺し文句だそうですが、負け犬のみなさん、貴女達はどれだけの努力をしたというのですか?「乾燥ポルチーニと生ポルチーニの違いがわかるようになった」?そうですかああそうですか。

「負け犬」のみなさんはずいぶんと「仕事ができる」そうですが、貴女達の「仕事ができる度」を読み進むと、「自分の食い扶持を稼ぐ」程度で、上を見ても「自分用にマンションを買った」という程度。申し訳ないですが、その程度で「仕事ができる」というのはずいぶんと仕事というものをバカにしております。配偶者と子供を養えて、やっと「仕事がふつう」ぐらいです。「できる」というからには「いないと会社がつぶれる」「いないと雑誌がつぶれる」ぐらいでないと。

本当に「仕事ができる」女性の皆さんは、きちんと「吠えて」いらっしゃいます。いい男をつかまえているとは必ずしも限りませんが、それを男のせいにするようなつまらない女はいないと断言できます。

「負け犬」のみなさんにとって愛情より大事なのは、「友情」だそうですが、これも読み進むとずいぶんと安い。それこそドンキに山積みにされているような感じ。

「わかるわかる。そうなんだよねえ」
と言ってくれるだけで、人の心は安らかになるものです。


この程度であれば、赤の他人のはずのTVの司会者でもしてくれます。一番得意なのはホストでしょう。友情というからには、絶好覚悟でも言うべき事を言い、それで一晩落ち込んでも壊れない、そういうものなのではないのですか?

はっきりいいましょう。いい女とは、責任を自覚し全うする女です。

そういう女達だけが、いい男を育てることができるはずです。

繰り返します。

きちんと吠えるか、返金なさるかどちらかをお選び下さい。
……

----------------------------------------
■ウケをねらったネタなんだとおもう。■したがって、まにうけてツッコミをいれるというのは、オトナげないし、不毛にうつるかもしれない。■しかし、柳沢発言の含意とかさねあわえると、「404 Blog Not Found」氏のオトコ中心主義を、単なるネタ=おふざけとして、放っておくのは、もったいない。柳沢発言より、ずっと知的で洗練されているようにみえるエッセイがかかえる、オトコの論理の問題性だね。
■前回もかいたとおり、「大都市部での それなりに やりがいのある職種に ありつけている。心身が基本的に健康で、タフだ。だから、趣味や旅行で「いきぬき」「自己実現」もはかれるといった、めぐまれた条件をそなえていない層には、すくいにならない、という点……既存のセクシュアリティというか、異性愛者の女性性とか趣味を、ともかく自明のものとして、議論をすすめてしまっている点」などの問題点をかかえつつも、酒井さんが提起している問題は、少子化の原因とされている晩婚化や女性の育児からの「逃避」問題を、かなりエグっている。■それを、引用した文章を参照しつつ、検討してみよう。

■まず、「404 Blog Not Found」氏の こズルい点は、「いい女」とか「仕事ができる」とかの水準を、エラく たかく設定してしまっている。■これは、大都市部で小市民としていきることを前提にしている酒井さんたちの設定する基準とは、全然かみあわない。なので、まさに「ないものねだり」なんだが、わざとやっているんだよね? だとしたら、かなり イジワル。■でないとしたら、読解力不足で、論じる資格なし(笑)。
■はっきりいって、「「オタ夫が生身の女性に興味を持つようにし、ダレ夫に責任感を持たせ、ジョヒ夫に高望みをやめさせ、ブス夫にはもっと押しを勁くするよう指導し、ダメ夫のダメさを矯正する」のは、まさに女にしか出来ぬ仕事にして生き甲斐なのではないですか?
」とか、なにを、つごうのいいこといっているの?■「404 Blog Not Found」氏のいうような、「仕事ができる」「いい女」たちが、なんでそんなリスクだけたかくて、みかえりがいかにもちいさそうな「ボランティア」をかってでるわけ?■かのじょたちには、それこそ「仕事ができる」「いい男」とつきあうチャンスがたくさんあるだろうし、自虐的に「オタ夫…ダレ夫…ジョヒ夫…ブス夫」を「飼育」するのは、小説ネタ・ドラマ ネタにはなるだろうけど、不自然だろう。■最低でも「仕事ができなくても かわいい男」といった、「ヒモ」ないし「年下君」にふさわしい男性だろうって。■なにが かなしくて、「まさに女にしか出来ぬ仕事にして生き甲斐」などと、「難事業」「火中の栗」にてをだすわけ?(笑)

■こうかんがえてくると、「もちろん、「卵が先かニワトリが先か」という問題はあります。男が萎えれば女が腐り....というセフレ、もといデフレスパイラルに一方的な責任者はいません。

ですが、どちらが先かというのははっきりしています。

人を生むのは、女性にのみ可能です。男も女も母から生まれてくるのであって父から生まれてくるのではない
」とか、完全に、オトコのあまえ。

いい男を求めて吠えるのは、女の特権にして義務です。きちんと吠えてください。男達は、みんな聞き耳たててますよ。そして言い寄ってきた男が気に入らなかったら、だらだらとつきあうふりをするのではなく、欠点をきちんと指摘した上で突き放す。そうして男は育っていくのではないですか?」にいたっては、なにをエラそうに説教しているわけ?
■「欠点をきちんと指摘した上で突き放す」が、ちゃんとそだって、つぎの「いい女」にひろわれるってか? そんなわけなかろう。「ひろう神」なんぞいないから、「オタ夫…ダレ夫…ジョヒ夫…ブス夫」とかいわれるわけだ(笑)。


■ネタへのツッコミは無粋。という批判をあえてかぶろう。■柳沢氏の「産む役目の人が一人頭でがんばってもらうしかない」発言と同様、女性たち個々人の「ボランティア」に期待をかけるような発言は、過剰な要求だ。■「リスクがでかい」「心身にシンドイ」「やりがい・いきがいをみいだせといわれても、条件・環境がわるすぎる」…といった、かのじょたちの実感をどうするんだ?
■そうなのだ。「晩婚化」→「少子化」の「デフレスパイラル」の因果関係の「原因」は、オトコだ。■モニタリング能力にかけた「オタ夫/ダレ夫/ジョヒ夫/ブス夫」をそだてあげるような主婦、それを容認するような社会を、のぞんできたのはオトコだろう。「『オタ夫/ダレ夫/ジョヒ夫/ブス夫』のどこかわるい」とひらきなおり、「ガマンしろ」といいはってきたのも、オトコだろう(笑)。■そういった、オトコたちの「みがって」への拒絶反応/反乱こそ、晩婚化/少子化という巨視的現象なんだ。
■おまけに、オヤジたちが既得権にしがみつくために、エセ「成果主義」とか「スタッフ要員以外の外注」とかをおしすすめて、わかものイジメをくりかえすから、「結婚したくたって、さきだつものがない」世代がうまれてしまった。■ここのところは、業界によっては好景気で、就職戦線も「うりて市場」らしいけど、それはいつまでつづくわけ? また景気後退で、採用削減→結婚できな世代の再現、って、なんの長期的なみとおしもない、単なる短期的対応をくりかえすだけなんでは?

■柳沢氏周辺の言動・感覚を擁護しようとするみなさん。■みなさんは、以上のように『負け犬の遠吠え』という、かっこうの素材をまのあたりにしながら、読解力にかけるために、単なるベストセラーにとどまらせてしまったのですね。
■ちなみに、「404 Blog Not Found」氏に、いまひとつツッコミをくわえるなら、本書の表題は「遠吠え」でなにも問題ありません。■「遠吠え」ってのは、とおくでほえるから、よわよわしげにしかきこえないんですね。ですから、酒井さんが、「ごく普通のOLさん」たち同様に、「同類あいあわれむ」式の「つぶやき」をくりかえしているかぎり、オトコたち、オバサマがたには、全然きこえなかった。■とおくからでも、おおごえでほえたからこそ、ベストセラーとして、大衆的関心をかちえたと。■でもって、実際「ほえた」はずなのに、柳沢発言や擁護論をふくめて、みなさん全然学習成果がでてないじゃないですか?

●「トラックバック・ピープル 安倍晋三