■先週末からの一連の記事「北電志賀原発 臨界事故を隠ぺい(中日)」「制御棒、歯止め外れ? 志賀原発事故、究明の焦点(朝日)」「マニュアルがどうのとか、人為的ミスがどうのとかいった次元でないズサンさ(志賀原発)」の続報。■『朝日』の夕刊1面トップとかぶさるウェブ上の記事を転載。

浜岡・女川でも制御棒脱落 
沸騰水型、臨界には至らず
2007年03月19日11時47分(asahi.com)
 中部電力の浜岡原発3号機(静岡県、沸騰水型炉、出力110万キロワット)で、91年の定期検査中に制御棒3本が想定外に抜けていたことがわかった。抜けた制御棒の位置がそれぞれ離れており臨界にはならなかったが、同じ沸騰水型炉の北陸電力志賀原発1号機で99年6月に起きた臨界事故が明るみに出たのを受けて、中部電力が19日公表した。また、88年7月には東北電力女川(おながわ)原発1号機(宮城県、沸騰水型炉、出力52.4万キロワット)でも定期検査中に制御棒2本が脱落していたこともわかった。志賀、浜岡、女川のいずれも沸騰水型炉であり、相次ぐ制御棒の脱落に同型の原子炉の信頼性が問われる事態に発展しそうだ。2073a56a.jpg
 経済産業省原子力安全・保安院は「国への報告義務はなく、隠蔽(いんぺい)にもあたらない」としているが、両社とも外部には公表せず、トラブル情報が電力業界で共有されていなかった。
 中部電力によると、定期検査中の91年5月31日、原子炉の状態を中央制御室に知らせるための信号の確認試験を終え、制御棒駆動装置に水が流れるように配管の弁を開ける作業をしていた。制御棒は全部で185本あり、最初の3本の制御棒の弁を開けたという。

中部電力浜岡原発3号機(中央)
=静岡県御前崎市で、本社ヘリから
中部電力浜岡原発=静岡県御前崎市で
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 ところが、その後、操作していないのに、本来動くはずのない制御棒(全長3.6メートル)がそれぞれ全部、3分の1、8分の1抜けたという。トラブルは1時間ほど続いた。ただ、抜けた制御棒3本のうち1本が離れた位置にあり、臨界状態にはならなかったという。
 この作業中、原子炉本体と格納容器のふたは開いており、志賀原発の臨界事故と似た状況にあったという。
 抜けた原因について、中部電力は「途中の別の弁に水漏れがあり、制御棒を引き抜く側に水圧がかかったのが原因ではないか」としている。
 女川原発1号機では、88年7月9日、定期検査をほぼ終えて制御棒が水圧で動くように配管の弁を開ける作業をしていたところ、制御棒89本のうち2本がそれぞれ24分の1、8分の3抜けた。制御棒の位置が離れていたので臨界状態にはならなかった。




浜岡原発、女川原発の地図
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 東北電力では、事故の原因について、制御棒に水圧がかからないようにしようと、水を逃がす弁を閉めたままで作業したために、制御棒が下がる方向に圧力がかかり、脱落したとみている。トラブル時、原子炉本体と格納容器のふたは閉まっていた。
 「弁は開けるようにと作業手順書には書かれており、作業員のミスが原因だろう」と話している。
 東北電力も事故の情報について外部には公表していなかった。
 一方、保安院は19日、臨界事故隠しをしていた志賀原発の緊急調査に入った。





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■ま、これらの事態も「想定内」ではあるが、ほかの原発・電力会社で同様の事態がなかったという「想定」の方が不自然だ。■でもって、これは、まさに「ハインリッヒの法則」系の構図があるはずだ。「ヒヤリ・ハット」系の事故寸前状態が実はたくさん伏在しており、それが、いろいろな水準でかくされてきた。■それらのうち、「運がわるい」と、「原子力事故」として、大惨事にまでいたる。■巨大なものとしては、もちろんチェルノブイリ級、ちいさくても東海村JCO臨界事故クラスの歴史的事件にいたってしまうと。■ということで、事故かくしが、どのくらいあるか、全然見当がつかないし、それもみんな、内部告発っぽいかたちでしか、でないじゃな。こんなかたちで、どんどんふきだすこと自体、実に深刻だ。

■ついでに、おなじ『朝日』の夕刊社会面の記事のうち、やはりウェブ上のデータを。

志賀原発、計器設置ミス見逃し運転 
昨夏の定期検査
2007年03月19日11時12分(asahi.com)
 臨界事故隠しを起こした北陸電力志賀原発1号機(石川県志賀町、沸騰水型炉、出力54万キロワット)が、昨年6月の定期検査で原子炉内の中性子計測器の配線を間違って取り付けたまま、一時的な故障と判断して運転再開していたことがわかった。経済産業省原子力安全・保安院は、北陸電力の運転管理体制や安全上の認識に問題があるとみて厳しく調査する方針。

 設置ミスは、この定検中に原子炉内に80個ある中性子計測器のうち2個を交換した際、ケーブルを逆に接続してしまっていた。

 北陸電力は06年6月、定検の最終段階として原子炉を調整運転中、計測器が適切に作動しないことに気づいたが、当時、十分に確認しないで一時的な「故障」と判断し、そのまま運転を再開した。ところが06年11月、たまたま別のトラブルで停止したため、詳細に調べてみたところ、配線接続の設置ミスに気がついたという。

 保安院は、北陸電力の保安規定における「原子力安全の重視」「不適合管理」「是正措置」などの定めから著しく逸脱している恐れがあるとし、07年2月、北電に対して原因究明と再発防止策を3月15日までに求める指示文書を出していた。


■いまさら、原子力安全・保安院が緊急調査にはいったなんていったってね。■そりゃ、おわってしまったことである以上、まえむきにいくしかないし、そのために徹底的に調査するのが無意味だとはいわない。■しかし、2001年に新設されるまえは、どの部署が監督していたんだ。というか、組織・制度がかりにあったにしろ、全然監督できていなかったってことだよな? 「ほかの事故とちがって悪質だ」などと いまさらいきまいたって、無為無策で、全然規制できずにいたという、無能ぶりを自分でいいたてているようなもんじゃないか?


●ウィキペディア「ヒヤリ・ハット
●ウィキペディア「ハインリッヒの法則
●日記内「ハインリッヒの法則」関連記事