■きのう、教科書検定の結果が公表された。■比較的まともな『朝日』の社説と記事を転載。■まずは、きょうの社説。


集団自決―軍は無関係というのか

 高校生が使う日本史教科書の検定で、沖縄戦の「集団自決」が軒並み修正を求められた。
 「日本軍に強いられた」という趣旨の記述に対し、文部科学省が「軍が命令したかどうかは、明らかとは言えない」と待ったをかけたのだ。
 教科書の内容は次のように変わった。

 日本軍に「集団自決」を強いられた→追いつめられて「集団自決」した

 日本軍に集団自決を強制された人もいた→集団自決に追い込まれた人々もいた
 
 肉親が殺し合う集団自決が主に起きたのは、米軍が最初に上陸した慶良間諸島だ。犠牲者は数百人にのぼる。
 軍の関与が削られた結果、住民にも捕虜になることを許さず、自決を強いた軍国主義の異常さが消えてしまう。それは歴史をゆがめることにならないか。
 この検定には大きな疑問がある。
 ひとつは、なぜ、今になって日本軍の関与を削らせたのか、ということだ。前回の05年度検定までは、同じような表現があったのに問題にしてこなかった。
 文科省は検定基準を変えた理由として「状況の変化」を挙げる。だが、具体的な変化で目立つのは、自決を命じたとされてきた元守備隊長らが05年、命令していないとして起こした訴訟ぐらいだ。
 その程度の変化をよりどころに、教科書を書きかえさせたとすれば、あまりにも乱暴ではないか。
 そもそも教科書の執筆者らは「集団自決はすべて軍に強いられた」と言っているわけではない。そうした事例もある、と書いているにすぎない。

 「沖縄県史」や「渡嘉敷村史」をひもとけば、自決用の手投げ弾を渡されるなど、自決を強いられたとしか読めない数々の住民の体験が紹介されている。その生々しい体験を文科省は否定するのか。それが二つ目の疑問だ。
 当時、渡嘉敷村役場で兵事主任を務めていた富山真順さん(故人)は88年、朝日新聞に対し、自決命令の実態を次のように語っている。
 富山さんは軍の命令で、非戦闘員の少年と役場職員の20人余りを集めた。下士官が1人に2個ずつ手投げ弾を配り、「敵に遭遇したら、1個で攻撃せよ。捕虜となる恐れがあるときは、残る1個で自決せよ」と命じた。集団自決が起きたのは、その1週間後だった。
 沖縄キリスト教短大の学長を務めた金城重明さん(78)は生き証人だ。手投げ弾が配られる現場に居合わせた。金城さんまで手投げ弾は回ってこず、母と妹、弟に手をかけて命を奪った。「軍隊が非戦闘員に武器を手渡すのは、自決命令を現実化したものだ」と語る。
 旧日本軍の慰安婦について、安倍政権には、軍とのかかわりを極力少なく見せようという動きがある。今回の文科省の検定方針も軌を一にしていないか。
 国民にとってつらい歴史でも、目をそむけない。将来を担う子どもたちにきちんと教えるのが教育である。

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■つぎに、きょうの朝刊紙面にものった、きのうのウェブ上の記事。



沖縄戦集団自決「強制」記述に修正意見 
教科書検定
2007年03月30日19時30分(asahi.com)
 文部科学省は30日、06年度の教科書検定結果を公表した。地理歴史・公民では、沖縄戦の集団自決をめぐって「日本軍に強いられた」との記述に修正を求める検定意見が初めてついた。今回も、イラク戦争や靖国参拝などについて、政府見解に沿う記載を求める傾向が続いた。

 今回の対象は、高校中学年(主に2、3年で使用)の教科書。224点が申請され、検定意見を受けて各出版社が修正したうえで222点が合格。不合格の2点は、いずれも生物2だった。

 地歴公民のうち日本史では、沖縄戦の集団自決に関して「日本軍に強いられた」という趣旨を書いた7点すべてが「命令したかどうかは明らかと言えない」と指摘され、各社は「集団自決に追い込まれた」などと修正した。日本史の教科書は昨年も申請できたが、その際にはこうした意見はつかなかった。

 文科省は、判断基準を変えた理由を(1)「軍の命令があった」とする資料と否定する資料の双方がある(2)慶良間諸島で自決を命じたと言われてきた元軍人やその遺族が05年、名誉棄損を訴えて訴訟を起こしている(3)近年の研究は、命令の有無より住民の精神状況が重視されている――などの状況からと説明する。昨年合格した出版社には、判断が変わった旨は知らせるが、すぐに修正を求めることはしない方針だ。

 地歴公民では、他にも時事問題で政府見解に沿った意見が付いた。その結果、イラク戦争では、「米英軍のイラク侵攻」が「イラク攻撃」に、自衛隊が派遣された時期は「戦時中」から「主要な戦闘終結後も武力衝突がつづく」に変わった。首相の靖国参拝をめぐる裁判では、「合憲とする判決はない」という記述に「私的参拝と区別する必要がある」と意見がつき、「公式参拝を合憲とする判決はない」となった。

 南京大虐殺では今回も、「犠牲者数について、諸説を十分に配慮していない」との意見が日本史5点についた。一方、政治・外交問題となり、中学の教科書からはなくなった「従軍慰安婦」(「慰安婦」「慰安施設」を含む)の問題は16点で取りあげられたが、意見は一つもつかなかった。

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■「教科書検定(日経/朝日編)」「沖縄・渡嘉敷島の「集団自決」問題」「慶良間諸島の集団自決は日本軍の命令?米軍公文書発見」「学徒隊動員:沖縄戦の「鉄血勤皇隊」編成、県が主体的役割(毎日)」「沖縄住民に押しつける「集団自決」責任(薔薇、または陽だまりの猫)」など、一連の記事でかいたことだが、もう一回論点整理。

■?「慶良間諸島」の自決命令の有無問題、一件ぐらいで、沖縄諸島各地でおびただしく発生した「集団自決」の実体・実態は、明白だ。手榴弾・青酸カリなど自決用の兵器・薬剤を、民間人が自宅に常備しているはずがなかろう。■これらは、日本軍が「自決」を事実上強要する目的でわたしたか、住民を集団催眠かけるような言動をくりかえしてきたことの産物とみるべきだ。■「軍民一体」幻想の構築、「オトコは惨殺され、オンナは強姦される」といった風聞を「定着」させ、集団心中的心理においこんだのも、日本軍兵士の外地での心理・実態の反映とかんがえるのが自然。
■?文部科学省は、検閲などしていないと、家永裁判ごろから一貫して主張しているが、教科書会社が不合格をおそれて萎縮し、「自主規制」してきた構図は、あきらかなこと。■みえすいたウソは、もうやめろ!
■?教科書会社というか、執筆陣も、シッポをまいて「自粛」してしまうばかりでなく、実質記述をかちとった例もある。■ガンバレ!
■?以前も紹介したとおり、経済界の御用新聞『日経』でさえも、「民間が発行する教科書がその国の国際関係や歴史認識に基づいて多様な表現を伴うのは民主主義の下では当然だろう。記述の客観性など、教科書が教材としての適正な基準を満たしているかどうかを判断する仕組みに国が直接関与して修正を指示することが、なお必要なのか」と、教科書検定に疑問を呈している。■検定制度など、愚劣な検閲は廃止すべき。
■?というか、「以前紹介した『イデオロギーとしての「日本」』『日本人という自画像』でも、検定制度など偽善的な制度はやめて、教科書を素材として批判的にとりあげられる教員を養成しろと論じていた。そうすれば、扶桑社版も充分、「よいテキスト」だ」。■その意味では、検閲制度でできあがった、「当局公認」のテキストを、市販の教科書傍用資料集とつきあわせて、「資料批判」するような授業こそ、実践されるべきだ。
■?結論的には、教科書検定という国家検閲は愚劣きわまりないが、教科書を聖典視するような愚劣な歴史教育こそ改善されるべきであり、それさえととのえば(現実には、大学教育の現状をみるかぎり悲観的になるほかないが)、国家検閲の是非に感情的議論をたたかわすこと自体が愚劣で、充分大衆蔑視だ。■「従軍慰安婦」「南京大虐殺」「集団自決」等々、「教科書にかかれていないから、おしえなくていい」とか、「おしえられない(基本的知見=主流説を定着させられない)」とかぬかす歴史教員は「退場」すべし!■「従軍慰安婦」「南京大虐殺」「集団自決」等々の「否定」派たちは、史資料批判のイロハもわきまえない連中なので、論外の失格者というべき。

■日本は、安倍首相の「従軍慰安婦」発言につづいて、ますます「うしろむき」で「無反省」な野蛮国「Yapoo」として、単なる「Homo oeconomicus」あつかいをうけるだろう。■「Sumoo/Kabuki/Tennoo」など古色蒼然とした「伝統」でカムフラージュしつつも、間欠的に蛮行をくりかえす連中と。
■「日本の常識は、世界の非常識」。すくなくとも、歴史認識については、ただしい。■ほぼ近似的事実の復元に成功した歴史家が、いわれのない中傷をあび、「学校にもちこめない学説」あつかいをうけるという知的野蛮。「世界標準になじまない非常識」が、「国家標準」として注入されることが自明視される洗脳国家。■「近親憎悪」か、(台湾以外の)近隣の国家公認史観を「カルト」よばわりするが、それより多少マシといった程度でしかないくせに、誇大妄想的に修正をくわえた自画像をめでるナルシスト集団だ。
■21世紀後半に、「日本」という国家体制が存続しているかあやしいところだが、かりにあったなら、子孫たちは、われわれ先祖たちをうらみ、軽侮するだろう。



●「歴史教科書から「沖縄戦で日本軍が住民の集団自決を強制」削除
●「沖縄戦:歴史教科所書き換え「命令」を海外メディアも大きく報道
●「歴史教科書検定で「政府見解と同化」圧力
●「国の教育介入はアブナイ!<教科書検定、教育法案、道徳教育>+都知事終盤選
●「過去と向き合わない自民党政権
●「集団自決はなかったの?
●「教科書検定と心の交流と・・・
●「【うちなー讃歌】を大絶賛する
●「沖縄戦の集団自決?日本軍の強制を修正【高校教科書検定】

●「沖縄戦60年への視線」「無意味な8月15日」「転載:沖縄戦(読売新聞・沖縄版)

●「トラックバック・ピープル 安倍晋三