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小児科医の過労自殺訴訟、厚労省が控訴断念 
労災認定へ
2007年03月28日06時16分
 東京都内の民間病院に勤めていた小児科医、中原利郎さん(当時44)の自殺の労災認定を巡る訴訟で厚生労働省は27日、労災を認めなかった新宿労働基準監督署長の決定を取り消した東京地裁判決を受け入れ、控訴を断念する方針を固めた。宿直勤務が月8回に及ぶなど、判決が認めた過重労働による心的負担の大きさを覆すのは難しいと判断した。

 判決によると、中原医師が勤めていた立正佼成会付属佼成病院の小児科では医師の転職や退職が相次ぎ、中原医師の99年3月の勤務は宿直8回、休日出勤6回、24時間以上の連続勤務が7回で、休日は2日。宿直勤務も「疲労を回復し得る程度の睡眠を確保することは困難」として、「業務は精神疾患を発症させ得る程度の危険性を内在していた」と結論づけた。


■おつぎは、この厚生労働省がわの対応をひきだ判決の記事。
小児科医自殺、過労が原因の労災と認定 
東京地裁
2007年03月14日20時41分

 東京都内の民間病院の小児科に勤めていた中原利郎医師(当時44)がうつ病にかかり99年に自殺したのは、過労やストレスが原因だとして、妻が労災を認めるよう訴えた訴訟の判決が14日、東京地裁であった。佐村浩之裁判長は、小児科医が全国的に不足していた中、中原さんが当直医の確保に悩み、自らも多いときは月8回にも及ぶ宿直で睡眠不足に陥ったと認定。自殺は過労が原因の労災と認め、遺族に補償給付金を支給しないとした新宿労働基準監督署長の決定を取り消した。

 過労死弁護団全国連絡会議によると、小児科医の過労死はこれまで2件が労基署段階で認められたが、自殺した医師の認定例はなかった。医師の自殺を労災と認めた判決としても、全国で2例目という。原告側代理人の川人博弁護士は「判決は小児科医の深刻な労働条件に警告を発した。政府や病院関係者は事態を改善すべきだ」と話している。

 佐村裁判長は、小児科の当直では睡眠が深くなる深夜に子どもを診察することが多く、十分な睡眠は困難だと指摘。「社会通念に照らし、心身に対する負荷となる危険性のある業務と評価せざるを得ない」と述べた。

 判決によると、中原医師が勤めていた立正佼成会付属佼成病院(東京都中野区)の小児科では、医師の転職や育児による退職が相次いだ。中原医師が部長代行に就いた99年2月以降は少ない時で常勤医3人、非常勤1人にまで落ち込んだ。同年3月の勤務状況は、当直8回、休日出勤6回、24時間以上の連続勤務が7回。休みは2日だけだった。

 新宿労基署は、うつ病を発症した同年6月までの半年間の時間外労働は月平均約50時間で、「当直中は仮眠や休養も可能」であり、実際に働いた時間はさらに下回るとして、発症の原因は中原さん個人の「脆弱(ぜいじゃく)性」だと主張していた。

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■ところが、これでまるくおさまったわけではなかった。



小児科医自殺、病院の賠償認めず 
東京地裁の判断割れる
2007年03月30日00時45分
 立正佼成会付属佼成病院(東京都中野区)の小児科医だった中原利郎医師(当時44)が自殺したのは当直勤務などによる過労でうつ病になったからだとして、遺族が病院側に損害賠償を求めた訴訟の判決が29日、東京地裁であった。湯川浩昭裁判長は、中原さんの業務は「うつ病を発症させるほど重いものではなかった」と指摘。自殺との因果関係を否定し、原告側の請求を棄却した。

 中原さんの自殺をめぐっては、労働訴訟を担当する同地裁の別の裁判部が14日、「過労でうつ病となり、自殺した」と認定。労災を認めなかった新宿労基署長の決定を取り消していた。勤務実態をめぐり、二つの判決で正反対の評価となった。

 当直勤務について、労働訴訟の判決は「疲労を回復できるほどの深い睡眠を確保することは困難だった」として心身への危険性を認めた。ところが今回の損害賠償訴訟の判決は「急患はそれほど多くなく、仮眠する時間はあった」として、心理的負荷は強くなかったと判断した。

 中原さんは99年8月に自殺。直前半年間の当直は多い時で月8回、平均で月6回程度だった。

 遺族側は約2億5000万円の賠償を求めていた。

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■労働者の人権を積極的まもろうとするどころか、むしろ使用者がわのかたをもつ労働基準監督署は、厚生労働省という組織が、梶田さんらがとくとおり、行政は関係業者の利害調整組織だという酷評どおりのところだということを、またも立証したようなものだろう。
■それにしても、「ひごろは権力の忠実な番犬ないし神学者としてふるまいがちな裁判所が、たまにはいい判決をだすよな」とほめようとおもったら、このざまだ。■毎度のことだが、湯川浩昭裁判長という固有名詞、すえながく記銘しておこう。

■ストレッサーに対する柔軟性は ひとそれぞれ。「「急患はそれほど多くなく、仮眠する時間はあった」として、心理的負荷は強くなかったと判断した」そうだが、こういった判決がでるかぎり、使用者がわは、「最高裁までがんばろう」と、勇気づけられることだろうよ。■だが、こんなことをくりかえしているかぎり、外科医・小児科医・産婦人科などを志願する医学生はへりつづけるだろう。
■「少子化対策」にいそしんでいるという政府は、厚生労働省がこのざまだわ、どうしようもないが、判事は判事で、単なる法務官僚の末端にすぎない。■ま、国家エリートたちが「憂国」にはしったところで、ロク名ことにならないことはたしかだが、連中のビジョンとやらがチグハグであることは、こんなところにも露呈している。


中原先生
小児科医過労自殺民事裁判敗訴
小児科医自殺で賠償認めず
ひとつの決定、ひとつの判決 (03/30)
小児科医の過労自殺 民事訴訟では因果関係を否定
不当と思える判決
夜は家でおとなしく寝ましょう
小児科医自殺、病院の賠償認めず 東京地裁の判断割れる
小児科医過労自殺を巡る2つの判決
医師自殺は過労死と言えない
二つの判決を並べて考えるのも変かもしれない。
小児科医自殺、病院の賠償認めず (03/30)