■まずは『読売』の記事から。

志賀原発99年の制御棒脱落、
出力急上昇の「即発臨界」か
 1999年の北陸電力志賀原子力発電所1号機(石川県志賀町)の臨界事故は、出力を調整する制御棒が3本脱落した後、出力が瞬間的に運転時の15%まで上昇した恐れがあることが同電力の解析で分かった。

 ウラン燃料の核分裂反応が急速に進み出力が急上昇する「即発臨界」という危険な状態だった可能性があり、経済産業省原子力安全・保安院は専門家の意見を聞きながら分析を進めている。
 志賀原発では、制御棒を動かす水圧調整弁の誤操作で、89本の制御棒のうち3本が毎秒47ミリ・メートルの速度で脱落。緊急停止システムが作動しなかったため、臨界に達した後も中性子が増え、出力も上昇を続けた。

 出力がどこまで上昇したかを直接記録したデータはないが、北陸電力は2通りの想定に基づいて上昇幅を解析した。部分的に残された中性子量の計測値に基づく解析では出力は停止信号の6秒後に運転時の2%まで上昇。一方、過去に実施した1号機の臨界試験データを基にした場合、2秒後に15%まで上昇した。この条件下では即発臨界だった。

 即発臨界になると、出力の急上昇に伴い燃料が破損し、放射性物質が冷却水中に流出する危険がある。ただ、国の安全審査では、今回の臨界事故よりはるかに厳しい即発臨界を想定した上で、原子炉の安全を維持できることを確認している。

 志賀原発の場合も、いずれの解析結果でも、出力はいったん急上昇した後、核分裂しにくいタイプのウランによる中性子の吸収量が増えて核分裂反応が抑えられ、一転して低下した。燃料で発生したエネルギーも、安全審査基準の半分以下で、燃料破損の恐れはなかった。

 一方、78年に東京電力福島第1原発3号機で起きた臨界事故は、即発臨界の恐れはなかったとされている。

(2007年4月11日14時35分 読売新聞)

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■関連の『朝日』の記事。


志賀原発、最悪なら即発臨界も 
日本原子力技術協が解析

2007年04月11日11時44分

 北陸電力志賀原発1号機(石川県)の臨界事故を受けて、日本原子力技術協会が当時の状況を解析したところ、最悪なら急激な核反応が一気に起きる即発臨界の状態になっていた可能性があることが11日、わかった。即発臨界はチェルノブイリ事故でも起きた現象だが、志賀原発の場合は即発臨界が起きていたとしても、局所的なため、燃料の温度は損傷で危険な状態となるまでは、ほど遠かったとみている。

 事故は運転停止中に、原子炉の制御棒が意図せずに3本抜け落ちて臨界状態が約15分間続いた。同協会が、制御棒が抜ける速度や順番を分析したところ、最も厳しい条件で即発臨界になっていた可能性があったという。

 核分裂反応は通常、温度が上昇すると減少する抑制効果がある。しかし、即発臨界だと、核分裂反応が減少することなく一気に進んでしまう。燃料の温度が3300度を超えるような状態になると、核燃料が破損したり、水蒸気爆発を起こす恐れがあることから、起こしてはならない反応と考えられている。

 同協会によると、志賀原発の場合は、臨界が起きたのは局所的だったため、仮に即発臨界状態であっても、燃料の温度は150度程度で燃料破損が起きる状況にはならなかったという。

 同協会の石川迪夫理事長は「今回は大事故につながる状態ではないが、炉内については暴走状態になっていた可能性がある」と話した。

 原子炉の設計上は制御棒は1本抜けても臨界にならない状態しか想定していない。しかし、今回の事故は弁の操作の誤りで、3本同時に制御棒が抜け落ちたことで臨界状態になったことが明らかになっている。

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■毎度のことだが、「国の安全審査では、今回の臨界事故よりはるかに厳しい即発臨界を想定した上で、原子炉の安全を維持できることを確認している。…志賀原発の場合も、いずれの解析結果でも、出力はいったん急上昇した後、核分裂しにくいタイプのウランによる中性子の吸収量が増えて核分裂反応が抑えられ、一転して低下した。燃料で発生したエネルギーも、安全審査基準の半分以下で、燃料破損の恐れはなかった」とか、「即発臨界はチェルノブイリ事故でも起きた現象だが、志賀原発の場合は即発臨界が起きていたとしても、局所的なため、燃料の温度は損傷で危険な状態となるまでは、ほど遠かった。…「今回は大事故につながる状態ではない」という大本営発表が妥当なのか、しろうとにはわからない。
■たしかにいえることは、連中の報告は基本的にデタラメないしウソがまぎれこんでいること、基本的に事態をかるくみせようと、工作したきたって経緯で、全然信頼がおけないってこと。■「北陸電力」や「日本原子力技術協会」って組織はもちろん原子力安全・保安院って、政府の監視機関自体が信頼ならないってことだ。
■「日本原子力技術協会」なんてところは、「原子力事業者からの独立性を有し、客観性をもった第三者的立場からけん制機能を働かせます」なんて、うたっているけど、「原子力資料情報室」みたいな団体の批判もうけつけているんだろうか? ■おなじ業界内部での「第三者機関」などによるチェックについて、「先日の日本相撲協会の八百長の有無を「事情聴取」したのと大差ない。顧問弁護士のように、基本的に「内部」の人物しか介在しない、第三者のからまない査定・調査なんて、信用できるはずがない」とかいたが、はっきりいって、反原発派からの批判に充分こたえられないようじゃ失格だとおもうぞ。■「原子力資料情報室」みたいな団体は、科学的なてつづきにのっとって事態を冷静に分析できる、専門家集団なわけで、かれらをなっとくさせるようなデータ・論理を用意できないかぎり、ゴマカシ・デタラメがあるんだとおもう。
■「手前みそ」的「おてもり」チェックなど有害無益だし、批判的なNGOの専門家たちをなっとくさせられない報告・しろうとむけ「大本営発表」なんて、税金のムダであり、悪質なプロパガンダと大差ないだろう。■「オレたち専門家が安全だ、って『おすみつき』つけてやっているんだから、つべこべいわず、安心してまかせていればいいんだ」って姿勢は、とおらない。
■それにしても、大新聞社の科学部/社会部は、当局タレながし報道ではなく、ウラとりした独自取材を敢行してほしい。■それができないのなら、政府・業界のスポークスマン代理ってところだろう。


●「原発事故隠し 志賀1号炉・福島第一3号炉で臨界 制御棒落下は底なし」(『原子力資料情報室通信』号外より)

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