■引用のつづきをいく。■安倍首相(当時「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」事務局長)が、いかに卑劣、ないし自己中心的でおよそ政務にむかない人物か、うきぼりになるはずだ。


   平成四年七月、再び加藤紘一内閣官房長官談話発表

 そこで、この第一次調査の結果を踏まえまして、平成四年の七月に加藤官房長官の発言をまとめております。これは正式にこのために記者会見を加藤官房長官が行っております。これは平成四年の七月六日…であります。
〔中略〕
「私から要点をかいつまんで申し上げると、慰安所の設置、慰安婦の募集にあたる者の取締り、慰安施設の築造・増強、慰安所の経営監督、慰安所・慰安婦の街生管理、慰安所関係者への身分証明書等の発給等につき、政府の関与があったことが認められたということである。調査の具体的内容については、報告書に各資料の概要をまとめてあるので、それをお読みいただきたい」
……
「…政府としては、国籍、出身地の如何を問わず、いわゆる従軍慰安婦として筆舌に尽くし難い辛苦をなめられた全ての方々に対し、改めて衷心よりお詫びと反省の気持ちを申し上げたい」と、このように官房長官の「談話」での述べております。
〔『歴史教科書への疑問』pp.299-300〕
■ウェブ上に外務省が公開している「朝鮮半島出身者のいわゆる従軍慰安婦問題に関する加藤内閣官房長官発表」では、ごくわずか表記がちがうが、おなじもとネタから発した文章であることは、まちがない。■要は、外務省もふくめて、慰安所管理運営について、政府・日本軍の積極的関与を公式にみとめたままだろいことを、まず再確認しておこう。
■もうすこし、石原信雄氏の報告を引用しよう。

…慰安所の多くは民間業者により経営されていたが、一部地域においては、旧日本軍が直接慰安所を経営したケースもあった。それから民間業者が経営した場合においても、旧日本軍がその開設に許可を与えたり、慰安所の施設を整備したり、…利用時間・利用料金、あるいは…注意事項などを定めた「慰安所規定」を軍が作成するなど、…設置や管理に直接関与したということが明らかになっております。
〔p.306,以上、文献資料にもとづいた総括:ハラナ注〕

 今日でも一番問題になっております慰安婦の募集の件でありますが、…軍当局の要請を受けた経営者の依頼によって斡旋業者らがこれに当たることが多かった。…業者らが甘言を弄し、あるいは畏怖させる等の形で本人たちの意向に反して集めるケースが数多くあり、さらに官憲等が直接これに加担するケースが見られたと。
 …これは主として十六人の元慰安婦の方々の聞き取り調査の結果、このようなことが明らかになったということであります。なお、この点につきましては、外政審議室の係官二人が責任者としていきまして、それから現地の日本大使館の職員も一緒にいって、韓国側の協力の下に非常に静かな雰囲気の下で相当時間をかけて当人のお話を聞かせていただきました。
 その結果は実はプライバシーの問題がありますので、一人ひとりの発言内容を公表しないという前提で聞き取り調査をしておりますので公表はしておりませんけれども、誠に聞くに耐えないような状況の下で承諾させられた、あるいは募集に応じさせられたというケースがありまして、ヒアリングを行った担当官の心証としては、これは明らかに本人の意に反する形での募集があったということは否定できない、という報告でございました。
〔中略〕
 そして大変悲惨なのは、敗戦状態になりまして、日本軍が敗走するという、その混乱した状況の下で慰安婦の方々が現地に置き去りにされるという事態も…報告がなされております。
 …この第二次調査の結果を踏まえまして、河野官房長官の「談話」が平成五年八月四日に行われたわけであります。
〔pp.307-8〕

…私自身も戦後、五十年近く…過ぎた頃、なぜこういう問題が出てきたのかというふうに疑問というか、関心を持ちました。
 …慰安婦とされた人々は、それまでは自分の過去の暗い話でもあるし、恥だと。先祖の位牌を汚すような話はしなくないと。…非常に儒教思想の強い国でありまして、性の問題については非常にナーバスなものですから、たとえ強制されたとはいえ…認めることは非常に恥であると。そういうことを言うことだけで隣近所とのつきあいができなくなりという、そういう心理が強く働いていたようです。ですから、…従軍慰安婦であったということを隠して、それを自分の親族にも、近隣の人にも知られないままにしたいという傾向が強かったようです。
 とことが、皆さん、年を取られて、自分の寿命もあとわずかになったときに、…この真実を明らかにして、…自分は好んで慰安婦になったのではないんだ、強制された結果だということを認めてもらいたいんだと。そういう人がでてきたということでした。
〔p.311〕
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■このような石原氏のきまじめで苦渋にみちた報告をついで、安倍氏がくちばしったのが、前述した今、石原さんのお話を伺いますと、ああ、なるほどな、という感じもするわけでありますが、しかし、実態は強制的に連れていかれたということになると、 本人だけではなくて、その両親、そのきょうだい、隣近所がその事実を知っているわけですね。強制的にある日、突然、拉致されてしまうわけですから。横田めぐみさんみたいに連れていかれちゃう。そうすると、周りがそれを知っているわけですね。……なぜその人たちが、日韓基本条約を結ぶときに、あれだけ激しいやりとりがあって、いろいろなことをどんどん、どんどん要求する中で、【そのことを誰もが一言も口に しなかったかというのは、極めて大きな疑問であると言わざるを得ない。】 かつまた、今回、そういう話であれば極めて勇気がいる。……【明らかに嘘をついている人たちがかなり多くいるわけです。】
……もしそれが儒教的な中で五十年間黙っていざるを得なかったという、本当 にそういう社会なのかどうかと。【実態は韓国にはキーゼン・ハウスがあって、そういう ことをたくさんの人たちが日常どんどんやっているわけですね。ですから、それはとん でもない行為ではなくて、かなり生活の中に溶け込んでいるのではないかとすら私は 思っている
」という論理である。
■勇気をだして証言しはじめた慰安婦当事者を侮辱し、同時に性倫理がゆるいくにだから、売春がごく日常なのだろうと、韓国全体を侮蔑し、だから従軍慰安婦として動員されたにしても、大した問題ではなかったはずだといわんばかりの卑劣な論理のすりかえ。■しかも、かれは外交官はもちろん、面前の石原氏の報告の信憑性さえうたがうという、実に無礼で非知性的な態度をあらわにしている。■さらには、統一協会をはじめとして、さまざまなドスぐろいコリアン・コネクションを祖父岸信介以来3代にわたる ふかい「つきあい」があるはずなのに、この侮辱はなんだ?
■これひとつとっても、国政はおろか、あらゆる公的舞台にたつべきでない人物であることは、あきらかだろう。

■みんなで、『歴史教科書への疑問』をよもう。■石原信雄氏など、比較的マシな保守政治家の知性と冷静な議論が印象的だし、吉見義明さんのまっとうな議論も掲載されている。■これらの議論を全部ふまえたはずなのに、「平成五年八月四日の河野官房長官談話は、当時の造られた日韓両国の雰囲気の中で、事実より外交上の問題を優先し、また、証言者十六人の聞き取り調査を、何の裏付けも取っていないのにもかかわらず、軍の関与、官憲等の直接的な加担があったと認め、発表されたものであることも判明しました。」〔p.449〕とかけてしまう、野蛮な知性の全否定ぶりも、確認できる。アメリカまででかけて資料発掘してきた、きまじめな官僚たちの営為を、偏狭なタカ派イデオロギーから全否定してしまうというのは、あまりにグロテスクだろう。だって、官僚の事務処理能力を信用せず、事実上ウソつきよばわりする政治家が総理大臣なんだぜ…。■ききとり調査のウラとりがしづらいという窮状につけこむだけで充分卑劣なヤツだとわかるが、おまけにいい気になって「いさみあし」。官僚の文献探索能力や内閣官房の能吏だった人物の人格までおとしめやがった。


■ちなみに、発行もとの出版社 展転社は、なにをカンちがいしているのか、つぎのような はずかしい「告発文」を公開している。

「週刊現代」記事への小社の見解
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 「週刊現代」4月14日号(講談社)に『「安倍晋三首相は国会議員100人を前に韓国をキーセン国家と言い放った」』という記事が掲載されております。そのなかで小社より刊行した『歴史教科書への疑問』(日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会編)の無断転載があります。『歴史教科書への疑問』の該当頁をそのままコピーしたような画像(文章)です。これは引用の基準をこえて著作権侵害にあたると小社では考えます。
 また、本書内の安倍首相の発言を「暴言」と断定しながら、本人および「従軍慰安婦強制連行」否定論者へのインタビューはなされていません。そもそも記事は平成9年に出版され流通しているものを今回の一連の「騒動」に関連させて取り上げ、韓国の国会議員(柳基洪)にわざわざ記事タイトルのような発言を引き出したものであります。それも原文なのか、韓国語に翻訳を勝手におこなったのか(その場合はどのような文章なのか)は明記していません。しかし、記事冒頭には『歴史教科書への疑問』を手にした柳議員の写真を掲載しております。
 安倍発言を要約すれば、3点になります。「?「強制連行」であるのに、本人以外の証言がないのは疑問である?本人証言の内容が時によって変わることがあり、真実性に問題がある?韓国にもキーセンがあり、売春行為は社会的に認められている」です。以上から、「週刊現代」編集部はどのようにしたら記事のように読解できるのか、まったく理解できません(そもそも「キーセン国家」という言葉はどこにもありません)。
 事実確認を怠り一方的な偏向報道により読者と小社出版物に誤解を与えた「週刊現代」編集部に謝罪と記事の訂正を求めます。

   平成19年4月3日
?展転社

※4月3日、「週刊現代」編集部へ同文面を送付。10日現在、何ら回答なし。

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■じゃ、安倍っちが、石原さんを代表とする文献資料にのっとった政府見解を全否定したという事実は、どう説明するんだね? ■あなたがたが、テープおこしして、ごていねいに「証拠」として、デタラメぶりがあがっているんだが?
■『週刊現代』編集部さん。ちゃんと痛烈に批判してやろうぜ。それだけで、キャンペーン記事になるとおもうが。


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