■先日何度もかいた一連の記事「阪神大震災「首長判断遅く2千人犠牲」 石原氏が発言(朝日)」「「説明不足は反省する」は、選挙圧勝で追認されたわけではない」「東京都民は震災関係者を愚弄した議論をあとおしした責任をおうべきである」の続編。■『共同通信』配信の記事を転載。



自衛隊出動要請「遅れた」
阪神大震災で石原知事再び

2007年4月27日(金)20:26

 東京都の石原知事は27日の定例記者会見で、阪神大震災発生時の兵庫県知事の対応について「自衛隊の出動がもう少し早ければ、いろんな形での(被災者の)救済はできたと思う。内閣官房にも責任はあるが、知事の(出動)要請は遅れました」と述べた。当選後の今月8日の会見で「首長の判断が遅かったから2000人余計な人が死んだ」と発言した部分は「ちょっと数字が違うかもしれない」と釈明した。
■論点はすでに かきつくしてしまっている。■が、一応簡単に復習しておく意味はあるだろう。
■?石原氏は 2000人といった キリのいい数字をだして、《震災の大規模犠牲者の相当数を救助しえたのに、グズグズして自衛隊救援を要請しなかった当時の自治体首長らは、みごろしにした》といった主旨の発言をしたわけだが、そのシミュレーションの具体的根拠は、全然あきらかになっていない。■にもかかかわらず、攻撃ととれる発言を、ほとんど無関係といえる自分の当確インタビューの席でぶつという行為は、不適切そのものだった。■しかし、そういった問題性については、全然反省していないどころか、完全にひらきなおっている、ないしは全然きづいていないかもしれないことが露呈した。
■?当人はきづいていないだろうが、この発言は自治体首脳部だけでなく、被災者、消防隊など救助部隊関係者はもちろん、自衛隊関係者までも侮辱する発言であり、結局はそれをひらきなおるかたちとなった。
■?「説明不足は反省する」はとおらないとのべておいたとおり、今後「説明不足」弁明発言があっても、ことはおさまらないのだが、今回は自説を撤回しないどころか、反復したわけだから、侮辱の水準は倍加したというほかない。
■?「東京都民は…責任をおうべきである」とのべておいたとおり、選挙民のなかで石原氏に投票した層はもちろん、単なる無気力ゆえに投票にいかなかった層は、その責任をおわねばならない。■かずかぎりない侮辱発言をくりかえしながら、国政をふくめて、再三再四当選させてきた原罪=永年の共犯者という意味で。■「かれは依然としてその政治責任をおう必要がない」「かれの言動は基本的にただしく、指導力を感じる(から、期待できる/かっこいい)」といった感想をもつ層は、以上の自己責任に対して、具体的に弁明すべきである。


■一応、関連の記事を『朝日』から。




前兵庫知事、「石原発言見当違い」 
阪神大震災巡り反論

2007年4月27日(金)11:52

 東京都の石原慎太郎知事が3選を果たした今月8日、「神戸の地震の時なんかは首長の判断が遅かったから、2000人余計に亡くなった」と発言したことについて、95年の阪神大震災時に兵庫県知事だった貝原俊民氏(73)が26日、「とんでもない見当違い」とする反論を冊子にまとめ、公表した。

 「阪神・淡路大震災の教訓」と題した冊子で貝原氏は、地震直後について「県庁は通信システムや災害対策の部屋が壊れ、情報空白、交信途絶の状態だった」と説明。「自衛隊の本格出動には一定の時間が必要で、ようやく出動できる状態になったのは(県が派遣要請した)午前10時ごろ」とし、「当時の状況の中で最善の対応をしたと自負していた」と記した。

 さらに、震災の教訓の一つは「都市にすべてを集中させた文明のもろさ」だったと総括。一極集中が進んだ東京について、「教訓をしっかり生かした施策が展開されることを期待してやまない」とつづっている。


■貝原氏らが、被災者に対して、「当時の状況の中で最善の対応をしたと自負」できるという具体的根拠を明示し、のちの大都市震災などに対する教訓としてのこすべき責務はあるだろう。■Wallerstein氏が指摘するとおり、被災者に対する同義的責任は充分にはたされていないとおもうから。■「冊子」といったかたちでなく、「報告書」としてだす必要がね。
■石原氏が具体的数値をもって批判できるとしたら、そういった責任ある「報告書」を充分吟味して、専門家によってシミュレーションができてのちのことであったはず。■でもって、今回も、かれは何ら具体的なシミュレーションはやらなかったはずだ。■自衛隊出動ありきの右派勢力が、自衛隊協力におよびごしだった社民勢力たたきに援用しただけだろう「議論」でもって、攻撃していいはずがなかった。