■『朝日』の記事から。

少年の親殺害が急増 
家族消去したい衝動か
2007年05月15日18時53分(asahi.com)

 未成年者による親の殺害や未遂事件はこの1、2年、急に目立つようになってきた。警察庁のまとめでは、刑事処分対象になる14歳以上の子どもによる実父母の殺害(未遂など含む)は97?04年までは年3?9件で1けただったが、05年に17件に急増。06年分は集計中だが、2年連続で2けたに上りそうだ。親への単純な憎しみをもとにしたものより、自分の居場所を取り戻そうと家族や家庭を消し去ろうとする衝動が目立つとの指摘もある。

 昨年6月、奈良県では、医師の父から良い大学の医学部に進学するよう期待されていた高1男子が自宅に火をつけて母親、弟妹を死なせた。男子生徒は「今までの自分の生活を消し去り、新たに生きていきたかった」と話したという。
 神奈川県で同年4月、母親の首を刃物で刺し、殺人未遂の非行事実で補導された中1の男子生徒は、家族はいらないと考えるまで追い込まれていた。事件後、「勉強しろ、部屋を片づけろと小言を言われていらいらしていた。うざったくなった」と語ったという。

 このほかにも、7月には、千葉県で19歳の無職少女が家族を殺害する目的で自宅に放火し父親を殺害する事件が、8月には、北海道で男子高校生が友人と共謀し、自宅で母親の首を切りつけ殺害する事件などもあった。

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■「少年の親殺害が急増」って、ホントかよ? っていう、ソボクな疑念がもたげてくる。
■「少年犯罪データベース 肉親に対する犯行」などをみるかぎり、たしかに親を殺害した事件が2ケタにのぼった年は昭和期以降みあたらないようだ(みおとしがあるかもしれないが、あっても例外的だとおもう)。■その意味で2年つづけて2ケタというのは、「急増」にうつるかもしれない。

■もともと、少年による凶悪犯罪が近年激増したというのは神話であることが、統計からたしかめられている(「少年による殺人統計」など)。■そのなかで、近年倍増が定着していくとすれば、それは転換点を意味するかもしれない。しかし、これらの重大事件には、コピー犯罪という連鎖現象が予想されるわけで、単なる一時的な流行の可能性も否定できない。■「2ケタ」で、「たかどまり」するという統計が数年以上確認できないうちは、かるはずみな原因の推測はすべきでなかろう。

■そもそもだね。1千万人をうわまわる10代人口のうち、数人とか十数人といった実数は、あまりに例外的な少数だ。■ってことは、ちょっとした構図がかわることで、おおきくブレかねない性格のものだってことだ。■むしろ、近年になるまで、ほとんど親殺しをする少年少女がいなかったという統計的事実=構造の方こそ、おどろくべき発見なのではないか?■オヤのことを、ころしたいぐらいにくんでいるコドモは、それこそ5万どころではなく、数十万人水準でいるだろうに、実行犯がヒトけたって事実は、おもたくないか? だって、介護づかれで殺人をおかすオヤジたちとか、乳幼児をころしたり、しなせたりするオヤたちが、年にヒトけたってことはなかろう? ■少年たちは、ころされることはあっても、ほとんど反撃しないできたってことだ。その意味では、反撃がはじまったという事実の方が正常な気さえする。

■してみると、この記事の記者というか、「自分の居場所を取り戻そうと家族や家庭を消し去ろうとする衝動が目立つとの指摘」とかをおこなって、深刻ぶっている御仁の認識の妥当性自体をうたがうできでないか? かりに、そういった新傾向が散見されるとしてだ、それが人口の100万人にひとり前後の確率でしか実行におよばないという現実こそ、再検討すべきだろう。■「オヤにいたぶられても、基本的にはめだった反撃もせず、やられっぱなし=イジメられっ子としての少年少女たちの不元気ぶり」って問題意識だよ。

■いまのところ、ハラナからすると、この記事の問題意識は「俗流若者論」の典型のような気がする。


●『新・後藤和智事務所 ?若者報道から見た日本?