■「ネットイナゴをはじめとする広義の「あらし」の熱情の背景」の末尾にかいたが、「一部の戦闘的なゲリラ・ジャーナリズム以外、当局発表のタレながしや、既存の体制の補完機能をはたしているなか、ブロガーはかなりのラディカリズムを実践している。既成政党や専門家たちが 効果的な批判能力をみせられないなか、一部とはいえ、ブロガーの影響力はあなどれない」という直感・情勢分析があるからこそ、「無名のブロガーも、スキあらばつぶしておけ。影響力をそげ。という、かれらの狂気ともいえる熱情は、体制の潜在的危機への「草の根保守」運動なのかもしれない」。
■それは、年頭ちかくにかいた「ローコストな社会運動装置としてのウェブログ」でものべたとおり、ちいさな負担・危険で運動可能という点で、ウェブログは画期的だという論旨とかぶる。■対面的な「ミニコミ」「くちコミ」もバカにならないが、時空をこえた、そして匿名かもしれないが、そこそこ安定した主体が配信・応答が可能だという点で、ひろさ・はやさ・たしかさを かねそなえた、革命的なネットワークの登場なのだとおもう。■だからこそ、「(既存の体制が)ゆるぎなくつづいてもらわないとこまる」と、確固たる利害をもつ層はもちろん、幻想上の利害にもとづいて依存症的に、体制批判に神経をとがらせる層にとって、危機感があおられるのではないか?
■ここで着目すべきなのは、Wallerstein氏が指摘している「都合の悪いコメントは速攻削除で何ら問題はない。ブログを攻撃することの限界性に気付いているのは他ならない「荒らし」の方なのであろう。コメントを削除したり、トラックバックを拒否したりすると決まって「言論封殺だ」という、とんちんかんな批判を始める。あるいはブログのエントリは掲示板のスレ立てと同じだ、という無茶な主張をする。…彼らは「荒らし」による「世論誘導」がブログでは通じにくいことを彼ら自身が気付いていて、焦っているのであろう。だからこそことさらに掲示板との差異をないかのように言い立てる」という、コメント欄の機能をめぐる、せめぎあいというかポリティクス(政治)である。
■もし、自然発生的で相互の組織的連携がない バラバラなネットイナゴでなく、組織として面識がある、ないしはオフラインで面識はなくまた匿名ではあっても「ウェブ上の戦友」関係にあるネットイナゴ・チームに、以上の分析があてはまるなら、つぎのような推測が可能になるとおもう。■それは、ウェブログが介入にやっかいな装置・空間であるがゆえに、かれらが運動として、ローコストにやれる、そして安定的にうてる戦術は、匿名によるコメント波状攻撃と、それによるコメント欄の機能不全だと。
■「自然発生的で相互の組織的連携がない バラバラなネットイナゴ」は、おそらくWallerstein氏の指摘どおり、「非常に孤独でやり場のない憤懣をぶつける相手を日夜探して、ターゲットを見つけ、そこに書き込む、…対象はあくまでも管理人」だろうが、組織的なネットイナゴは、ギャラリーの動員・動揺こそが重要で、乱暴なこといえば、「管理人」の存在など、どうでもいいのである。■だから、管理人が不用意にスキをみせれば、ここぞとばかりに、ゲリラ戦の橋頭堡をきずき、まんまと「戦果」をあげる。「炎上」そして「コメント欄閉鎖」、そして究極の目標は、「管理人の退場=ウェブログ自体の閉鎖」だが、そのどの段階でも、ひと騒動やらかせただけで「戦果」なのだ(笑)。■そして、そのなかで、ブロガーがかりに防衛的な姿勢にでても、かなりの確率でかちとれる「戦果」が、「コメント欄が自由なかきこみ空間として機能しなくなる」という事態だ。
■その意味では、コメント欄が管理人の承認をへないと表示されない、という事態は、それ以上の攻撃が不能になったという、「一歩後退」にみえて、消極的ながら、「一歩前進」なのだ。■「おまえらが、すきかってに、自由闊達な議論でもりあがることは、できなくなっただろう」「これからも、そんな議論空間の維持などゆるさん」って、感じか?(笑)
■つまり、「ローコストな社会運動装置としてのウェブログ」って問題は、それに危機感をもつ層にとっても、「ローコストな社会運動」としての、コメント欄攻撃というものが、つきまとうということになりそうだ。■この構図に対して、コメント欄の管理姿勢は、もちろんブロガー次第だ。「自由な議論の空間」を少々犠牲にしても、整然としたうつくしい制御空間を維持するか、かなりの「アレ」を覚悟しつつ、敢然と「自由な議論の空間」を死守するか。■「ローコスト」なのは、どちらかは、いうまでもないだろう(笑)。しかし、それは、攻撃者のおもうツボだということも覚悟しなければなるまい。■いまのところ、超人気サイトとして影響力をもってしまったら、メール以外うけつけない、コメント欄・トラックバック欄不在って手法まで後退するほかないかもしれない。それでも、きっこさんみたいに、充分破壊的ともいえる影響力を行使している御仁もいるしね。