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世界の環境ホットニュース[GEN] 638号 07年06月3日
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枯葉剤機密カルテル(第51回)         
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枯葉剤機密カルテル          原田 和明

第51回 在日アメリカ軍依存体質

在日アメリカ軍が駐留を継続できるよう岸が尽力したのは、アメリカからの要請があったからだけでなく、それが日本の経済界からの要請でもあったからです。
マーケッティ元CIA副長官補佐官は「岸は我々のエージェント(代理人、スパイ)ではなく、同盟者だった。」と語っています。日本で直接CIAが秘密工作をするのではなく、岸にカネを渡して、後は自民党にお任せというスタイルをアメリカはとりました。(春名幹男「秘密のファイル・CIAの対日工作」共同通信社 2000)アメリカ軍と日本の経団連は利害を共有していたのです。

朝鮮戦争で景気回復した日本経済は、休戦とともに大量の在庫を抱え、再び深刻な不況に陥っていました。朝鮮戦争が勃発したことにより三井化学は爆薬製造を再開したものの、休戦合意で需要を失い、工場閉鎖に追い込まれた苦い体験を、三井東圧化学の社史は告白しています。(以下要約)

朝鮮戦争勃発以降、国内での爆薬生産再開への要請が高まり、通産省は過去の実績、将来の受給を考慮して、日本油脂が月産百トン、三菱化成が同二百トン、三井化学が同二百トンの供給力を整備する計画を立てた。三井化学は定款を変更、一億七千万円を投じて 工場を再建した。ところが朝鮮戦争停戦(1953年7月)で特需が激減、1954年7月の自衛隊発足でも 爆薬需要は伸びず、結局工場は試運転しただけで休止。1957年からは防衛産業施策維持費補助金を受けて工場を温存していたが、1959年に爆薬事業から撤退した。」

専守防衛の自衛隊では、大企業の生産力に見合う兵器需要がありませんでした。在日アメリカ軍の存在は、軍需産業の復活を目指す産業界にとって必要不可欠だったのです。
産業界は軍需産業の復活を政府に要求し始めます。朝鮮戦争が7月に停戦になると、9月には経団連・防衛生産委員会に新兵器生産のための部会が設置され、将来、誘導弾の国産体制を整えることを目的とした「誘導弾部会」が最初に設置されました。(1953.9.30 朝日新聞)

1954年末に首相就任した鳩山一郎吉田茂のアメリカ中心の外交を転換しようとしましたが、日本の自立への動きとしてアメリカは警戒しました。

1955年4月に、日本の防衛(兵器)産業の実情を調査するため来日していた ロス米国防次官補代理が「最近の米軍予算削減方針から日本の防衛産業への特需発注は1千万ドル程度しか予定されていない。」と発言(1955.4.9 朝日新聞)したのも鳩山のアメリカ離れに対する不快感の表れでしょう。その後ロスは発言自体を否定し(1955.4.21 朝日新聞)、「日本政府の態度次第ではさらに二千万ドル程の発注増加をアメリカ本国に勧告してもよい。」とか「今年度の特需発注額は具体的には決まっていない。」など、相当含みのある発言を繰り返していました。
(1955.5.6 朝日新聞)

このようなロスの発言には、従米路線へ戻すよう日本の産業界から鳩山政権に圧力をかけさせる目的があったと考えられます。このころは自衛隊が発足してまだ1年足らずであり、三井東圧化学の社史からもわかるように兵器の需要はアメリカ軍頼りだったからです。

ところが、アメリカの作戦は裏目にでました。鳩山は産業界の軍需産業復活要求と国民の反米感情を背景に、アメリカの再軍備要求を逆に利用して、自衛隊を増強する代わりに在日アメリカ軍の撤退をアメリカに提案しました。そして懸案だった日ソ国交回復を成し遂げたのです。対日政策の矛盾を突かれたアメリカ政府は苦虫を噛み潰す思いだったことでしょう。日本の自立に向けた主張は次の石橋湛山内閣でも続きます。

鳩山内閣で通産大臣だった石橋湛山は日本の経済復興をアメリカ軍に頼らず、戦前からアメリカに次ぐ貿易相手国だった中国との貿易再開に期待していました。当時、アメリカの妨害により日中貿易はほぼゼロの状態でしたので、石橋は首相に就任した直後の1956年暮れ、表敬訪問に訪れたロバートソン 米 国務次官補に対し、「西欧諸国は かなりの量の 規制品目を ソ連経由で中国に輸出している。(日本だけ対中貿易を閉鎖されるのは)一貫性がないのではないか。」と不満を示しています。さらに、「日本経済は不安定であり、日本の生命は貿易にかかっている。しかし、日本の貿易は対米、対中の両方向で規制されるのは理解できないとの感情が国民の間に広がっている。」と注文をつけています。ロバートソンは「アメリカは、日本が輸出市場を開拓する必要性を認識しており、アメリカはあらゆる方法で支援する。」となだめて会談を終えています。(春名幹男「秘密のファイル・CIAの対日工作」共同通信社 2000)

石橋の構想は、日本が自らの市場確保のために中国共産党と政治的に妥協をはかり、アメリカと距離を置くようになるという、アメリカの覇権という観点からは極めて深刻な事態を招きかねないものでした。そこでアメリカが注目したのが東南アジアでした。ここは中国革命の影響がただちに波及しかねない地域であると同時に、政治的・軍事的に確保できれば、とくに中国市場に代わる市場が必要であった日本の経済再建にとって、極めて重要な意味をもちうる地域とみなされました。(古田元夫「歴史としてのベトナム戦争」大月書店1991)つまりベトナム戦争とは軍事的にベトナムから中国の影響を排除する一方、日本に新たな戦争特需を与えて、経済的に日中を分断するために起こされたとも言えるのです。

ちなみに日中間でしばしば問題となる靖国神社の合祀問題ですが、最近になって、旧・厚生省が積極的に神社側に戦犯合祀を要請していたことが国会図書館の「新編靖国神社問題資料」で明らかになりました。(2007.3.29 読売新聞)

1958年4月9日(第4回 打合せ会)旧・厚生省が「個別審議して、目立たないように合祀に入れてはいかが」と提案。

同年9月12日(第7回打合せ会)旧・厚生省が「全部同時に合祀することは種々困難もあることであるから、まず外地死刑者を目立たない範囲で了承してほしい。」と発言。

これらの動きが日中貿易再開を妨害して、日本の従米政策を固定化したいという動機をもつアメリカが岸・佐藤に秘密資金を渡していた時期と重なることに何か関連があるのかどうか
、さらなる情報公開を待ちたいと思います。

岸信介はアメリカの嫌がる対中国貿易の再開は求めず、アメリカが代替案とした東南アジア市場に目を向け、首相就任後初の外遊に東南アジアを選んでいます。しかし、市場規模の小さい東南アジア貿易はすぐに行き詰ってしまいました。そのため、産業界は在日アメリカ軍の需要に期待することになっていったのです。鳩山・石橋の抵抗に苦戦していたアメリカが、期待通りに動いてくれる岸を「同盟者」「最良にして唯一の賭け」と評価し、秘密資金を提供して支援したのも当然といえるでしょう。 

経団連・防衛生産委員会(郷古潔・会長=三菱重工社長)は日本兵器工業会(郷古潔・会長)、日本航空工業会(古田孝雄会長)、GM協議会(岡野俣次郎会長)の事務当局者を招き、兵器業界を再編成するため4部会共同で研究機関を設けることを協議しています。(1958.6.5 朝日新聞)

翌年にはさらに具体化して「経団連副会長・植村甲午郎、防衛生産委員会審議員(自民党代議士)・保科善四郎らが、ドレーパー援助調査団に『将来防衛産業界としては、誘導弾を含む新式兵器をアメリカから買うだけでなく、この新兵器を国産化したい』と要望」するまでになったのです。(1959.2.4 朝日新聞)枯葉剤やナパーム弾の国産化もこの流れの一部であると考えられます。

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■「資本家が戦争を引き起こすというのは本当ですか? いいえ。「金持ち喧嘩せず」が真実です。」などと、「アメリカの軍需経済と軍事政策」までも全否定する暴論がみられる〔別宮暖朗『軍事のイロハ―バカな戦争をさせない88の原則』並木書房〕が、平時の軍隊需要をあてこんだ業者は実在する。■それは、日本でも同様だ。
■前回の記述でも「経団連は軍需産業を復活するために三井三池の争議をしかけて最強の三池労組を粉砕」したとある。やはり、直接的な「死の商人」=兵器産業でないにしろ、産業界は、機会さえあれば「特需」をゆめみているのであり、潜在的な軍需産業は広大なひろがりをもつものとかんがえられる。■現に、日本の高度経済成長は、朝鮮特需など、米軍需要=後方支援産業の好景気ぬきにはありえなかった。■「沖縄は3K(基地・観光・公共工事)依存経済なのだから、米軍基地需要・雇用は必要悪だ」といった、したりがおの議論をヤマトゥンチュがしばしばする。■しかし、日本列島の相当部分が「2K(基地・公共工事)」経済なのだ。「シッタカー(しったかぶり/半可通)」だからこそ、うまれる沖縄蔑視といえそうだ。

■安倍政権にかぎらず自民党勢力がずっと改憲をうりにしてきたのは、米軍基地・自衛隊需要依存にとどまらず、列島全体がアメリカ型の「軍産複合体」にシフトし、「武器輸出三原則」とか、憲法9条とかをかなぐりすてて、「死の商人」として世界のとみをむさぼりつくせたら、ラクラクもうかるのに、という産業界のドスぐろい欲望を代表するだったからだろう。■これを、安直な陰謀論というなら、そうでないという潔白さの証明は産業界がみずからするほかない。


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