■辺野古に掃海艇をおくって威圧するなど、安倍政権は、沖縄県民を再三いきどおらせているが、なかでも沖縄戦下での日本軍による「集団自決」強要の事実を教科書検定で除外させた件では、極に達した観がある。■「検閲機関としての文部科学省」シリーズが、こんなにつづくとは、とても予想できなかった。

■『中国新聞』の記事から。


検定撤回求める意見書要旨 
沖縄県議会

 沖縄県議会と県内の全41市町村議会で教科書検定意見の撤回と「集団自決」に関する記述回復を求める意見書が相次いで可決され、県や市町村と連携して要請を行ったが、文部科学省は「教科用図書検定調査審議会が決定するところであり、理解していただきたい」との回答に終始し、要請を拒否している。

 しかし今回の教科書検定で、文科省はあらかじめ合否の方針や検定意見の内容を取りまとめた上で同審議会に諮問したこと、諮問案の取りまとめにあたって係争中の裁判を理由にし、かつ一方の当事者の主張のみを取り上げたこと、同審議会の検討経緯が明らかにされていないこと、これまでの事例ではほぼ同省の諮問通りに答申されていることなどから、同省の回答は到底容認できない

 また、県議会と全市町村議会で県民の総意が明らかにされたことの重みに配慮が十分でなかったのは遺憾である。

 沖縄戦で「集団自決」が日本軍の関与なしに起こり得なかったことは紛れもない事実であり、沖縄戦の実相を正しく伝え悲惨な戦争を再び起こさないようにするためにも、検定意見撤回と記述回復が速やかに行われるよう再度要請する。
(初版:7月11日11時43分)
■おつぎは、『朝日』の記事。

沖縄県議会、2度目の意見書可決 
「自決強制」削除
2007年07月11日11時52分

 沖縄戦の際、日本軍が住民に集団自決を強制したとの記述が教科書検定で削除された問題で、沖縄県議会(定数48、欠員1)は11日、検定意見の撤回と記述の速やかな回復を求める意見書を可決した。6月22日に同趣旨の意見書を可決したが、文部科学省が撤回に応じる姿勢を示さなかったため。県議会事務局によると、同じ定例会で2度、同趣旨の意見書を可決するのは初めてという。

 沖縄側はこの問題で、県議会や41の市町村議会すべてで同様の意見書が可決されたのを受け、安里カツ子副知事や仲里利信・県議会議長、首長会や議長会の代表計6人が4日に文部科学省を訪ね、要請をした。これに対し、文科省側は「(検定意見を決めた)検定調査審議会の決定に口を挟むことができない」との姿勢を崩さなかった。このため、県議会が再び意見書を出すことになった。

 意見書は文科省が審議会の決定を理由に撤回を拒否していることについて、実際には同省が検定意見の内容をとりまとめて審議会に諮問していることなどを指摘し、「同省の回答は到底容認できるものではない」と批判している。

 また、文科省で大臣に面会を求めたにもかかわらず、官房審議官が対応したことを念頭に、「県民の総意が明らかにされたことに対する重みへの配慮が十分でなかったことはまことに遺憾」と指摘している。

 採決では議員1人が退席し、残る議員の全会一致で可決した。意見書は首相や文科相らに送る。

 意見書の可決を受け、仲井真弘多知事は「県民の総意だと極めて重く受け止めている。集団自決において、手榴(しゅりゅう)弾が配られるなど広い意味での日本軍の関与があったと思っており、その記述が削除・修正されたことは誠に遺憾。今後とも県議会をはじめ(首長会など沖縄の)地方6団体で歩調を合わせて対応していく」とのコメントを出した。

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■もちろん、地元紙がとりあげないはずがない。


『沖縄タイムス』社説(2007年7月11日朝刊)

[「検定撤回」再可決]

歴史の改ざんを許すな

 県議会はきょうの本会議で、文部科学省の検定により高校歴史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に日本軍が関与したとする記述が削除されたことについて、検定意見書の撤回と記述回復を求める意見書を可決する。
 同一の問題で、会期中に二度同じ意見書を可決するのは初めてのことだ。

 異例といっていいが、歴史的事実に目を背けようとする文科省への県民の怒りである。文科省は、歴史を改ざんする動きに県民が警鐘を鳴らしていることを認識する必要がある


 県議会が最初に意見書を可決したのは、六月二十二日の本会議だ。県内四十一市町村議会、県市長会、県市議会議長会、県町村会、県町村議会議長会も同様の意見書を可決、採択し、六団体で文科省に要請した経緯がある。

 今回の可決は、県民の総意で行った要請が、「教科用図書検定審議会が決定したことに、口を挟むことはできない」(布村幸彦文科省審議官)として拒否されたことが理由になっている。

 だが、それよりも大きいのは、県議会文教厚生委員会が実施した渡嘉敷島、座間味島での聞き取り調査で、重く口を閉ざしていた体験者から新たな証言を得たから
だ。

 その多くは、旧日本軍の関与なしに「集団自決」は起こり得なかったというお年寄りたちの肉声である。沖縄戦という歴史の底に横たわる事実は、私たちがきちんと受け止めていかなければならない深いテーマを含んでいる。

 生々しい証言からは、教科書から沖縄戦の実相が削られることへの怒りが見て取れる。それはまた、「親や兄弟、叔父、叔母たちの悲惨な体験だけでなく、自分の記憶までも否定しようとする動きを許すわけにはいかない」という強い意思とも重なる

 仲里利信県議会議長は本紙のインタビューに、「検定結果は、(集団自決による)死者を冒〓している。歴史の事実を否定するとまた戦争への道を歩んでしまう」と答えている。

 その上で「一部の人たちが戦争を美化し、歴史の事実を歪曲するということは祖父、父、弟を失った者として決して許すことはできない」とも述べた。

 県子ども会育成連絡協議会、県婦人連合会、県PTA連合会が検定の撤回を求める県民大会を呼び掛けているが、史実をゆるがせにしないためにも党派を超え、県民が一丸となって訴えていくことが重要だ。

 沖縄戦にどう向き合い、史実を語り継いでいくか。私たち一人一人の意識が問われていることを自覚したい。

※(注=〓は「さんずい」に「売」の旧字)

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■安倍首相はもちろん、文部科学省の官僚たちのおおくも、なんでこんなに猛抗議をうけるのか、全然わからないだろう。■自分たちのこれまでの「失言」同様、その根本的原因が全然つかめないし、そのうち「ほとぼりがさめて、にげきれる」といった、能天気な感覚が支配的なのだとおもう。■それこそ、沖縄戦から米軍支配、そして施政権返還後もほとんど前進しない米軍基地の集中状況という、地域差別・民族差別の典型的な産物だ。

■何度ものべてきたことだが、政府に協力的な保守政治家までが、いきどおりをあらわす事態をだれがまねいたのか? それをじっくりかんがえるべきだ。

目取真俊さんの短編「希望」のような いかりのマグマがたぎっていることを、為政者たちははやく自覚しないとね。■くれぐれも、年金問題など国政に直撃をあたえるものでない、などと、タカをくくらないこと。早晩とりかえしのつかない事態をまねくだろうことを指摘しておく。
■数十年ものの古酒(クースー)は、さぞやおいしいだろうが、60年以上にわたる抑圧・搾取の蓄積は、爆発しない方がフシギなのだから。

●「トラックバック・ピープル 安倍晋三