■以前、「マッチョでネオリベしか東京の首長になれないというが」という文章のなかで、石原氏らの東京自慢のはずかしさを批判しておいたが、東京都という行政区画が経済的規模として、大国なみであることもたしかである。■小文で転載したとおり、本川裕氏による『社会実情データ図録』の「図録主要国と都道府県の経済規模(GDP)順位」があきらかにするとおり、東京都は、GDPで単純に比較するかぎり、新興の準経済大国BRICs=ブラジル(B)/ロシア(R)/インド(I)/中国(C)のうち〔文脈によっては、末尾“s”が複数形でなく、S=南アフリカばあいもある〕、中国以外の3国よりも、経済規模がおおきいからだ。
■だから、「東京東京と、エラそうにいうな」式の感情的反発については、つぎのように批判をくわえておいた。

■「東京都」という空間は、単なる日本の首都の所在地ではない。■政治経済、そして文化の中心であることは、否定できないのだ。あくまで夜間人口4000万人の「首都圏」全体を後背地とした、埼玉・千葉・神奈川などの都市部(=「狭義の首都圏」)を総動員した人口・インフラ・ネットワークの集積の総体だけどね。■経済規模でいえば、したの図表のように、韓国やBRICs(中国をのぞいて)などを東京都単体でうわまっているし、北欧など(先進地域ではあっても小国)を圧倒している事実を直視しよう。■大学の半分、出版社の大半が「東京都」周辺に集中している事実は、「東京一極集中」の病弊ではあるが、そこからめをそむけても、なにもはじまらない。

■だが、列島人口の3分の1を後背地にもつ昼間人口1500万人の東京かいわいは、やはり異様な肥大ぶりであることも、否定できない。■実は、世界的にも東京圏の人口集中ぶりはとびぬけていたのだ。

■「世界の大都市圏ランキング
(行政区域をこえても郊外周辺部をふくめた都市集積=大都市圏の人口,上位30位2000年=国連統計2005年)という図表だ。
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 1900年には世界の都市人口は1億6000万人で世界の総人口の10分の1に過ぎなかった。ところが21世紀に入った現在、もうすぐ都市人口は世界人口の半分(32億人)に達する見込みである(第2図)。まさに21世紀は「都市の世紀」となる。

 都市の定義を行政上の都市区域でなく郊外地域を含めた都市集積地域とするなら、この国連のまとめでは、世界の都市の中で最大の都市は東京(東京大都市圏)である。2000年の東京圏の人口規模3,450万人(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県からなる南関東の人口)は、第2位のメキシコシティー1,810万人、第3位のニューヨーク1億7,800万人の約2倍にあたる巨大さである。

 世界の大都市上位10位の中には、ラテンアメリカからメキシコシティーの他、ブラジルのサンパウロ、アルゼンチンのブエノスアイレスが入っている。米国からはニューヨークの他、ロサンゼルスが第10位に入っている。

 アジアでは、東京の他、インドのボンベイ、カルカッタ、デリー、そして中国の上海が10位までに顔を出している。


アオ字部分は、本川氏によるコメント部分だが、ここで少々気になるのは、国連統計の「東京圏」という概念が「東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県からなる南関東の人口」という、単なる行政区画による都県人口の総和だという点。■ま、そりゃね、東京都の奥多摩町(6727人)とか、神奈川県の湯河原町(27131人)、千葉県の九十九里町(20086人)といった周辺部分の人口を全部かきあつめめても100万人にいくかどうかといったところだろう。したがって、それを わりびいたって、ラクラク3000万人をこえているメガロポリスが実在することは、まちがいない。
■しかしだね。「都市圏」ってことで、市街地・住宅地の連続性を重視するなら、うえにあげたような町は、市街地の周縁部として連続体にひっかかってはいない。■人工衛星で夜間のひかりぐあいを撮影したら、たちどころにわかるだろう。これらの町村は、鉄道や道路で東京都心に連続はしているが、市街地の連続体の一部ではない。あきらかに人口集中地の断絶がある。
■逆にいえば、茨城県の南部や栃木県野木町などは、東京のベッドタウンであり、かつ市街地が完全にきれているとは判断しづらいだろう。
■ま、この辺は地理学者かお役人のおしごとだとおもうんで、実体としての東京圏の輪郭をあきらかにしてほしいね。

■それにしても、この集中ぶりは、異様だ。ニューヨークの2倍、ロサンゼルス・阪神・モスクワ・パリの3倍だっていうんだから。■中国の大都市部がたくさんあり、中国全土で日本列島の10倍以上の人口が集積していることは驚異的事実だが、東京圏の集中は、別の意味で驚異的であり異様というほかない。