■「「佐藤元1佐の「駆け付け警護」発言は人間として正しい」という、こまった「論理」」の続編。■このこまったさんの「論理」とは正反対の、実にもっともな批判が新聞の投書にあがっていた。
■おなじ18日の『朝日』の「声」欄から転載。

イラクやはり「戦場」だった
 会社員 浅田 洋治(千葉県松戸市 66歳)
 「灼熱と砂漠のイラクから、今度は逆風の吹き荒れる新たな戦場に到着した思いだ」。先の参院選比例区で自民公認として初当選した元自衛隊イラク派遣先遣隊長の佐藤正久氏は初登院した際、国会前でこう述べました。しかし、私は聞き流すことができません。
 新たな戦場という以上、旧「戦場」はどこなのか。彼が隊長として派遣されたイラク・サマワを指していることはいうまでもないと思います。
 しかし、思い出して下さい。4年前、イラク復興支援特別措置法案の国会審議で、当時の小泉首相ら政府は「自衛隊は非戦闘地域での人道支援」と繰り返しました。そして、「イラクのどこが非戦闘地域はわかるわけがない」とか、「自衛隊の行くところは非戦闘地域なのだ」などと、聞くに堪えないこじつけや強弁の結果、与党の賛成多数で可決しました。まだ記憶に新しいことです。
 政府が非戦闘地域としてきた派遣先を、元隊長があっさりと「戦闘地域」だったと認めたと思われても仕方がない発言をしたことが問題です。このような人が立法府の一員となったことにも驚きです。この夏、ヒロシマやナガサキで「憲法の規定を順守」と述べた安倍首相に空々しさを感じました。

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■「「イラクのどこが非戦闘地域はわかるわけがない」とか、「自衛隊の行くところは非戦闘地域なのだ」などと、聞くに堪えないこじつけや強弁」をくりかえす首相を、圧倒的人気でささえていた日本国民。■その知性と民度がしれるのは毎度のことだが、ちゃんと正直者はいるわけで、もと隊長みずからが、「灼熱と砂漠の(戦場)イラクから、今度は逆風の吹き荒れる新たな戦場に到着した思い」と、ちゃんと現実を表現していると。■ま、そりゃそうだろ。政府・歴代内閣がふみださないできた「駆けつけ警護」はもちろんのこと、「「情報収集の名目で現場に駆けつけ、あえて巻き込まれる」という状況を作り出すことで、憲法に違反しない形で警護するつもりだった」といった、完全に立法の趣旨をはきちがえた感覚の人物であり、あまっさえ「日本の法律で裁かれるのであれば喜んで裁かれてやろう」などと、カッコをつけたつもりで、完全に確信犯だったことまで白状する人物だもんね。■「私服組がなんととりつくろうおうと、制服組がでていく最前線は戦場」っていう、ごくあたりまえの認識が露呈したと。
■それにしてもだよ。自衛隊法を公然と無視することを、軍人として当然。国際社会のなかでの常識みたいな人物は、完全に旧日本軍の「先祖がえり」じゃないか?■与党自民党は、こういった人物をかかえこむことで、自衛隊内部にいる、「ミニ佐藤」が急激に復活・増殖、軍隊の暴走に政府がふりまわされ、そのうち完全にひきずられて国際社会のなかで破局をむかえる(追米ポチ政権として、テロ攻撃をうけることをふくめて)…。そういった最悪のシナリオをえがかなかったのだろうか? いや、公認しているんだから、かれは代弁者なんだよね。自民党タカ派(たとえば、安倍総理)の心情・信条を威勢よく、「現場」の体験からかたれるね…。

■問題は、結局自民党というポチ政党を戦後ずっと容認してきたとか、超法規的、いや旧日本軍的に文民統制をなんともおもわない狂信的軍人の先祖がえりとかを当選させてしまう、この日本列島の多数の住民の知性と民度にある。
■憲法をかえるという公約をかかげる政党が与党をつづけること、世界中のだれもが軍隊だと位置づける組織を前首相になってようやくひらきなおるとか、現行憲法の空洞化はずっとまえに定着していた。■だから、早晩、任期中に憲法をかえるという公約をかかげる人物が首相にすわることは、宿命ともいえた。「憲法の規定を順守」などと、こころにもないタテマエをくちにしても、なんら良心のいたみを感じない感性がはっきりしている以上、従軍慰安婦ほか強制連行ないし詐術による動員の被害者への、くちだけ(イヤイヤ)謝罪とおなじく、なんら内実をともなうはずがない。
■これら厚顔無恥の人物を、圧勝させた自民党という体質は、日本人の体質の構造的産物だった。それが、いくらスキャンダルにまみれているとはいえ、急に支持をやめるというのは、一貫性にかけるものであり、産経・読売あたりの論調同様、右旋回内閣を必死に支持しつづければいいものを…。


●「「新たな戦いの始まり」 ひげの隊長、転身の佐藤氏」〔山陽新聞〕
●「初登院!これからが新たな戦いの始まりです。」『佐藤まさひさ オフィシャルページ』
●「トラックバック・ピープル 安倍晋三