■先日のAFP(フランス)の記事から。

ブッシュ米大統領、
真珠湾攻撃と同時多発テロを
同一視する発言

2007年08月23日 16:39 発信地:カンザスシティー/米国
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【8月23日 AFP】ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領は23日、ミズーリ(Missouri)州カンザスシティー(Kansas City)で行われた退役軍人団体の年次総会での演説で、米軍のイラク駐留を継続させる理由を述べる際、第2次世界大戦中の日本軍による真珠湾攻撃と国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)による米同時多発テロ事件を同一視する発言を行った。

 イラク情勢に関する報告書の提出期限まで1か月を切り、高まるイラク駐留米軍の撤退要求に対する回答を模索していたブッシュ大統領は、「米国が日本を敗戦国から民主主義国へと導いたのと同じ理想と国益により、アフガニスタンおよびイラクに引き続き関与するべきだ」との見解を示した。

 ブッシュ大統領は「われわれを攻撃した敵は、欧米諸国が自分たちの国民を侮辱したと感じて怒りを覚えている。敵は中東地域全体を支配下に置くつもりで戦っている」などと語った。

 さらに「敵は自爆攻撃へと戦略を変更し、米国民を疲れさせ戦いを止めさせるために大虐殺を行うようになるだろう」との見方を示した。

 その上でブッシュ大統領は「これはアルカイダのことでも同時多発テロのことでもなく、ウサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)容疑者が作ろうとしていた宗教支配者による帝国のことでもない。1940年代の旧日本帝国と真珠湾への奇襲攻撃、および東アジアにおける植民地政策のことだ」とし、第2次世界大戦中の日本軍による真珠湾攻撃を引き合いに出した。
 ブッシュ大統領は第2次世界大戦と、今日の「テロとの戦い」の違いを認めながらも、「それらはすべてイデオロギー的な争い」だとし、「適切な人道的見地からすると、日本の軍国主義者や北朝鮮およびベトナムの共産主義者は非情な考え方に動機付けられていたといえる。かれらの考え方を強制する際に米国が邪魔だったため、米国人が殺されたのだ。名前や場所は異なるが、戦いの基本的性質は変わらない」などと発言した。

 イラクには現在、16万人規模の米軍が派遣されており、駐イラク米軍の死者はこれまでで3700人となっている。
(c)AFP



米大統領、
戦前日本とアルカイダ同列視
歴史観に批判

2007年08月24日06時49分

 ブッシュ米大統領が22日に中西部ミズーリ州カンザスシティーで行った演説は、自らのイラク政策を正当化するため、日本の戦後民主主義の成功体験を絶賛、フル活用する内容だったが、半面で戦前の日本を国際テロ組織アルカイダになぞらえ、粗雑な歴史観を露呈した。米軍撤退論が勢いを増す中でブッシュ氏の苦境を示すものでもある。

 冒頭は9・11テロかと思わせて、実は日本の真珠湾攻撃の話をする、という仕掛けだ。戦前の日本をアルカイダと同列に置き、米国の勝利があって初めて日本が民主化した、という構成をとっている。大正デモクラシーを経て普通選挙が実施されていた史実は完全に無視され、戦前の日本は民主主義ではなかった、という前提。「日本人自身も民主化するとは思っていなかった」とまで語った。

 退役軍人の会合とあって、朝鮮戦争やベトナム戦争の意義にも言及。すべて一緒くたにして「アジアでの勝利」は中東でも出来る、と訴えた。だが、米メディアは「日本や韓国は国民が同質的であり、イラクとは違う」「歴史から間違った教訓を引き出している」などと批判を伝えている。

 民主党のヒラリー・クリントン上院議員は同日、イラクのマリキ首相の罷免を要求。9月にはイラク駐留米軍のペトレイアス司令官の議会への報告があるが、抜本的な進展は見込まれておらず、かえって一層の批判が予想されている。

 だが、ブッシュ氏が政策転換に踏み切る兆しはない。最近は、第2次大戦末期に登場しながら不人気に終わったトルーマン大統領に「魅力を感じている」(関係者)という。共産主義と戦う姿勢が後世、一定の評価を得たためとみられる。

 テロとの戦いにかけるブッシュ氏だが、今回の演説は日本を含めた諸外国の歴史や文化への無理解をさらした。都合の悪い事実を捨象し、米国の「理想」と「善意」を内向きにアピールするものとなっている。

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■米大統領演説の日本関連部分(要旨)

 ある晴れた朝、何千人もの米国人が奇襲で殺され、世界規模の戦争へと駆り立てられた。その敵は自由を嫌い、米国や西欧諸国への怒りを心に抱き、大量殺人を生み出す自爆攻撃に走った。

 アルカイダや9・11テロではない。パールハーバーを攻撃した1940年代の大日本帝国の軍隊の話だ。最終的に米国は勝者となった。極東の戦争とテロとの戦いには多くの差異があるが、核心にはイデオロギーをめぐる争いがある。

 日本の軍国主義者、朝鮮やベトナムの共産主義者は、人類のあり方への無慈悲な考えに突き動かされていた。イデオロギーを他者に強いるのを防ごうと立ちはだかった米国民を殺害した。

 第2次大戦に着手した時、極東の民主主義国は二つしかなかった。オーストラリアとニュージーランドだ。日本の文化は民主主義とは両立しないと言われた。日本人自身も民主化するとは思っていなかった。

 結局、日本の女性は参政権を得た。日本の防衛大臣は女性だ。先月の参院選では女性の当選が過去最高になった。

 国家宗教の神道が狂信的すぎ、天皇に根ざしていることから、民主化は成功しないという批判があった。だが、日本は宗教、文化的伝統を保ちつつ、世界最高の自由社会の一つとなった。日本は米国の敵から、最も強力な同盟国に変わった。

 我々は中東でも同じことができる。イラクで我々と戦う暴力的なイスラム過激派は、ナチスや大日本帝国や旧ソ連と同じように彼らの大義を確信している。彼らは同じ運命をたどることになる。

 民主主義の兵器庫にある最強の武器は、創造主によって人間の心に書き込まれた自由を求める欲求だ。我々の理想に忠実であり続ける限り、我々はイラクとアフガニスタンの過激主義者を打ち負かすだろう。

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■何人ものブロガーが、「あきれた」系の批判をくりかえしているので、別にあたらしいことをかけるわけではないが、意外に軽視されている論点があると感じたので、備忘録的に。


■?ブッシュ大統領が、自分だけで原稿を作文したとはおもえない。いいかえれば、これはアメリカ政府の大統領側近の複数の人物が「容認」した歴史認識とかんがえるのが妥当だ。
■?「戦いの基本的性質は変わらない」との認識があやまっているのは、もちろんだ。しかし、意外に整理がなされていないのではないか?■この歴史認識の致命的なあやまりは、(a) アルカーイダが、「国際武装テロリストのネットワーク」であるのに対して、帝国海軍は正規軍であり、宣戦布告の手続き不備などはあったにしても、真珠湾攻撃は奇襲戦法にすぎず、テロではないこと、(b) 「9・11テロ」がアメリカ政府のいうようなものだとして、それは「特攻隊」と通底する「自爆テロ」攻撃ではあっても、日本海軍の当時の戦術に「体当たり攻撃」は存在しなかったこと、である。■これは、非常に粗雑な類比であり、この水準で、にている/にていないを論じているのなら、まともな議論は不可能といってさしつかえない。
■?当時の日本が、現在の北朝鮮など、既存の社会主義体制とにた狂信的ナショナリズムをあおっていたことは、否定できない。■しかし、さまざまな記録から、現在の社会主義エリートたちの言動のはしばしに感じとれるような冷静さをみてとることも、充分可能だ。さめている層が現在も実在するように、当時も非常に冷静に事態を把握していた層が少数ながら実在した。■と同時に、当時のアメリカ政府自体が、キャンペーンによって総動員体制へと国民を先導していた事実は、実態として洗練された洗脳であって、その点では、悪質さにおいて大差ないともいえる。■むしろ、洗練されている分、圧倒的なユトリがあって自己批判の契機がのこされていた分、悪質だったとさえいえる。■ちなみに、一定の民主主義・近代化がすすんでいたのに狂信的な集団への変貌をとげたというのなら、すくなくともドイツとの比較をおこなうべきなのに、それもなされていない。しかし、大正デモクラシーなどの水準にていねいにふれるだけの神経がないところをみると、戦前=暗黒社会という過度の一般化しか、もともとできない認識水準なのだろう。
■?何度かくりかえしかいたとおり、戦時中の一時期をのぞいて、日本人はアメリカ信奉者を激増させていた。野球やハリウッド映画、ジャズなどが大好きだった日本人は、劣等感・あこがれ・嫉妬心などがないまぜな心理を共有し、太平洋対岸の裕福な大国をみつめつづけていた。
■?日本の女性議員のすくなさは、先進地域でかなりひくい水準だったはず。とりわけ、県議会・町村議会あたりでは、かなりの低率だろう。■イスラム圏との比較を、単純な進歩史観でまえむきに解釈しようとしてだしたのだろうが、女性、とりわけ高学歴層の能力の未活用は、日本社会の後進性をしめしている重要な点であり(もうひとつは、刑務所や企業内部での非人道性)、それへの配慮がない分析は、無意味というほかない。■「世界最高の自由社会の一つとなった」という「評価」も、おもはゆいというより、アメリカ社会の自己評価同様、虚無主義的な皮肉か、とおもわされる。政治経済上の有力者がやりたい放題という次元での「世界最高の自由社会の一つ」というなら、まちがいないが。
■?「ベトナムの共産主義者は、人類のあり方への無慈悲な考えに突き動かされていた」というなら、ベトナム戦争当時をふりかえるベトナム国民は、「アメリカの帝国主義者は、人類のあり方への無慈悲な考えに突き動かされていた」と、やりかえすだろう。


■「手前味噌」「自画自賛」など、ひとは自己正当化をまぬがれない宿命にあるが、それにしても、「自己愛」「自尊心」表出について、一定の禁欲が美学としてともなうのが紳士・淑女というものであり、つつしみのない放言は、周囲をげんなりさせるだけで有害無益なのだが、そういった自覚はなさそうだ。■「退役軍人」むけのスピーチであり、「都合の悪い事実を捨象し、米国の「理想」と「善意」を内向きにアピールするものとなっている」という条件をわりびいても、大統領側近の粗雑さは あきらかで、国内メディアが批判したとはいえ、某国首相の歴史認識のおかしさ同様、こういった連中が国際社会の動向をにぎっているというのは、実におそろしいはなしだ。■そして、こういった連中にいっさい批判をくわえない某国政府の姿勢が、自虐的で「美しくない」だけでなく、非常に危険なものであることは、いうまでもない。


●「失言も、首にならない、民主主義」『novtan別館』
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