■半年ほどまえに、ウィキペディアの信頼度についての文章をかいて、シリーズ化できていなかったが〔「Wikipediaの信頼度1」「」〕、今回「CIAやFBI なぜバレたのか ウィキペディアの修正疑惑」といった、ちょっとしたニュース・ネタになり、ブロガーのあいだでは、かなりの話題になっているようなので、補足記事をかく。
■まずは、たたき台として「CIAやFBI なぜバレたのか ウィキペディアの修正疑惑」をはりつける。


CIAやFBI なぜバレたのか 
ウィキペディアの修正疑惑

2007/8/20 コメント(18)
参加者の共同作業で執筆、編集されるインターネット上の「百科事典」Wikipedia(ウィキペディア)を巡り、米中央情報局(CIA)関係者が「我田引水」の「修正」をしたのではないか、という疑惑が浮上した。当事者が記述内容を修正して議論を呼んだケースは日本でも起きており、その「中立性」が揺らいでいる。「ウソの塊」という批判から「集合知の実現」というバラ色の未来を描く楽観論まであるウィキペディアは、どこに向かうのか。

「WikiScanner」というプログラムで判明


CIAとFBIの編集「疑惑」を報じるロイター電子版
img20070901.bmp CIAに関する「疑惑」を報じたのは、2007年8月16日のロイター(米国・電子版)だ。記事によると、ウィキペディアに載っていたイラク戦争の犠牲者の写真が加工され、記述にあった多くの数字は「推計だ」と書き加えられた。また、元CIA長官のウィリアム・コルビー氏の経歴についても、ベトナム戦争のとき和平プログラムを推進した、といういわば「功績」が加えられた。また、米連邦捜査局(FBI)についても、テロ容疑者を収容し、虐待問題などが表面化した米グアンタナモ基地の航空・衛星写真を削除した疑いが持たれている。
米国の研究機関メンバーが開発した「WikiScanner」というプログラムを使い、ウィキペディアの編集に使ったコンピューターがどこにあるのかを調べた結果、判明した。記事では、CIAとFBIのコンピューターを使ってウィキペディアを編集したことが「WikiScanner」で分かったとしている。ウィキペディアの運営組織の女性広報担当者は、公平性のガイドラインに違反する、との考えを述べている。CIA報道官は、記述の変更にCIAのコンピューターが使われたか確認できない、とした上で「コンピューターは責任を持って運用されていると考えている」と答えている。FBIからは回答はなかった、としている。

当事者が項目記述に「介入」した例は、日本でも珍しくない。06年8月には、楽天証券の社内からの投稿で、同社への行政処分情報などが削除されたことが報じられ、同社は事実を認め、不適切な行為だったと表明した。投稿した端末のIPアドレスが公開されており判明した。また、06年秋には、自民党の山谷えり子参院議員周辺の人が「都合の悪いこと」を削除したのではないか、との指摘が表面化した。これもIPアドレスから参議院経由で編集されたことが分かったためだ。「05年衆院解散時に『刺客』として立候補を取りざたされたが固辞した」などの表記が削除されていた。

「嘘を嘘で塗り固めているようなもの」
一方、ウィキペディアを本人が編集するだけでなく、積極的に批判する人物も現われた。元アスキー社長の西和彦さんは、西さん本人に関する記述を大量に削除し、さらに06年11月には本人だと名乗って「この記事は独断と偏見の固まりです」などとする書き込みをした。この書き込み対し、「都合が悪いからといって、恣意的に編集することも(略)中立的観点からの記述とは言えません」などと批判が寄せられ、激しい議論が続いた。西さんは、11月30日にJ-CASTニュースが報じたインタビューの中で「日本のウィキペディアはカット、コピーペーストしているだけ。嘘で嘘を塗り固めているようなものです」と言い切っている。

ウィキペディアで「ウィキペディア」と「同日本語版」を調べると、日本語版は07年8月現在40万件以上の記事がある。何分冊もの本の百科事典の項目数を大きくしのぐ数だ。日本語版利用者は、06年3月に700万人に達している。01年に米国で始まり、日本語版も01年中に発足した。日本語版の知名度が上がったのは03年からだ。「誰もが自由に参加できるため、情報の精度・信憑性は必ずしも保証されるものではない」と「自己評価」もしている。

一方でウィキペディアの可能性を示す例として、よく引き合いに出されるのは、05年に英科学雑誌ネイチャーが、ウィキペディアと「老舗」のブリタニカ百科事典の項目を数十項目抜き取りで比較調査したところ、誤りや誤解をうむ表現の件数はあまり変わらなかったという話だ。さらに、間違いが発見されれば、ウィキペディアなら誰かがほどなく修正するが、本の事典は次回の改訂まで間違いが放置されるという指摘もある。

ウィキペディアの創設者で07年春に来日したジミー・ウェールズさんは、3月17日付け朝日新聞朝刊で「あくまでも情報のとっかかり。それが賢い使い方じゃないかな」と答えている。


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■事態は単純である。権力がわが、つごうのわるい自己情報を大衆からかくそうとしたということ。ジョージ・オーウェル1984年』の「真理省」をおもわせる、公的情報のゴマカシ。■ただし、上司が指令をくだした職務の一部なのか、職員の「忠誠心」にもとづいた自発的・自然発生的な かきかえなのか、それはわからない。
■いえることは、ふたつ。■?政府や大企業など巨大組織が、このての「かきかえ」にてをそめないという想定自体がまちがっていること。むしろ、しばしば こうした工作活動をしているという想定のもと、記述は参考にしなければならない。それはなにも、ウィキペディアにかぎられない。
■?今回は、こういった工作が当該組織所属のコンピューターから直接なされたという、ある意味まぬけな姿勢が事態を露見させたにすぎず、規制をしたところで、ネットカフェなど、匿名性をかたった工作を制御しきることは、ほぼ不可能なことだ。■せいぜい、懲罰的に、こういった まぬけな工作員が発覚した組織を「さらしもの」にする程度しか、規制には意味がない。
■ただ、「Wikipedia Scanner(ウィキペディア・スキャナ、通称:Wikiscanner)
」が、すごいシステムであることには、ちがいはない。

■でもって、おなじ『J-CASTニュース』から、日本のネタを。




内閣府、総務省、NHK 
職場で勝手にウィキペディア改ざん

2007/8/31 コメント(12)
誰もが執筆、編集に参加できるインターネット上の百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」を巡り、日本でも修正、改ざん疑惑が持ち上がった。日本を代表する官庁や企業で、内部コンピューターが修正のアクセスに使われていたのだ。休み時間などに誰かが勝手にアクセスしたケースも多いらしいが、事実の歪曲から「いたずら」に近いものまで中身はさまざまだ。

外務省、旧厚生省など他省を揶揄する書き込み

NHK内部からのアクセスで「武田信玄(NHK大河ドラマ)」の項目の一部記述が削除されたことが、WikiScannerによって確認された 米CIAやFBIが「我田引水」の改ざんをした疑惑は、すでにメディアに報じられた通りだ。その疑惑をあぶりだしたツールの「WikiScanner」に日本語版ができたことで、日本の官庁や企業の内部からのアクセスによる修正や改ざんが浮かび上がってきた

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WikiScannerは、米国の研究機関メンバーが、ウィキペディアを書き込み、編集した官庁や企業を突き止め、改ざん防止に役立てようと開発した。ウィキペディアの更新履歴からそれらのIPアドレスを調べる作業を、いわば自動化したツールだ。WikiScannerの日本語版プログラムも、ネット上に公開されており、官庁や企業の名前や場所、IPアドレスで更新履歴を検索できる。

文部科学省、ソニー、トヨタ…。検索すると、日本を代表する官庁や企業の内部からの大量のアクセスと大幅な修正が分かる。

例えば、内閣府の内部からのアクセスで、元男女共同参画担当大臣の「猪口邦子」の項目が2006年2月9日付で一部削除されていた。それは、猪口元大臣が慰安婦問題は女性の名誉を傷つけたという表現を使おうとして自民党内を紛糾させたという記述の後にあった文言だ。

「このように、独断で行動する猪口に対し、閣内、党内から批判の声が上がっている。初当選からまだ日が浅く、国会議員としての未熟さが招いた事態とも言える」
総務省からのアクセスでは、「入国管理局」の項目で05年10月19日、外務省や旧厚生省を揶揄するような表現が挿入された。それは、

「日本政府が難民条約に加盟したことを受けて、日本としても難民(当時はインドシナ難民が主)を受入れることとなったが、外務省・厚生省ともに難民政策という政治的で面倒な割に利権が全くない業務を抱えるのを嫌がり、関係省庁が押し付け合った結果、法務省入国管理局が難民認定業務を執り行うこととなった」
といったような文言だ。
内閣府、総務省いずれのケースも、事実関係の修正を越えた「改ざん」になっている。

「路上生活者」の表現を「ルンペン」に書き換え
言論の自由に敏感であるべきメディアからの修正疑惑も、発覚している。NHKからのアクセスでは、「武田信玄(NHK大河ドラマ)」の項目で05年7月11日、次のような文言が削除されていた。

「第1回?第3回放送までは海老原哲弥が書いた題字が使用されていたが、海老原に対する盗作疑惑が浮上し、第4回以降は現行の題字に差し替えられた」
このほか、NHKの事業に対するPRとも取れる文言への書き換えも見られた。

TBSでは、自局の番組についての記述で「低視聴率にあえいでいる」との表現が削られた。細木数子さんのバラエティー番組「ズバリ言うわよ!」の項目では、くりぃむしちゅーのメンバーが言う「朝勃ちトーク」の部分などの削除が見つかった。中には、同局女性アナウンサーの項目に、「下ネタが得意」との表現が書き加えられたり、ある地区の項目で「路上生活者」の表現が「ルンペン」に書き換えられたりしていた。

07年8月30日時点でのJ-CASTニュースの取材に対し、官庁やメディアによって対応は分かれた。

これまでの取材拒否の姿勢とは打って変わって、迅速・明快な対応だったのがTBSだ。同局の広報担当者は「(WikiScannerで検出された)IPアドレスは、TBSのものと確認しました」と明言。「外部の人が使える共通端末があり、TBS関係者によるものかどうか分からない」としながらも、「ルンペン」と書き換えられたことについては、「差別用語であり、不適切だと思う」と述べた。

また、「(書き込み、編集は)業務の一環ではないが、休み時間などに局のパソコンでアクセスしていたとしたら、セキュリティー感覚に疎い」とした。ただ、同局関係者が事実関係以上に書き込むことには、「よく知っている関係者が記述を充実させるためにならいいと思う」と肯定的に捉えた。

一方、WikiScannerの有効性に否定的な回答をしたのが、内閣府だ。報道室担当者は、J-CASTニュースの取材に対し、「それがどのようなものか承知していないので、こちらでは事実関係確認などのコメントはできない」との答えだった。NHKの広報担当者は、IPアドレスの特定には8時間かかるとして、「ご指摘を受け、調査します」と答えた。また、法務省は、広報担当者から入管局に電話を回し、入管の担当者は「広報が答えることだと思うが、こちらに下りてきた」といい、混乱した様子だった。


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■ここでの、日本的な問題は2点。?職務時間中でなく休憩時間内でのアクセスにしろ、あきらかに趣味的な項目にアクセスして編集作業に没頭していたとすれば、組織のコンピューターおよびシステムの私用になる。上品かどうかとかいった価値判断でなく、職務と関連づけるのが困難なサイトにアクセスすること自体おかしいし、まして編集作業という主体的な行為にでているというのは、悪質だ。
■?かりに、趣味と無関係で職務と密接な項目・記述にアクセスしていたにせよ、編集作業まで「職務」にいれていいはずがない。■そして、自己言及するな
〔=自分自身について項目をつくったり修正作業するな〕というウィキペディアのガイドラインにも違反している点で、実に悪質な事態といえる。


■しかし、いずれにせよ、こういった情報源は、すべて自己責任で「うたがってかかれ」なのである。■自習用でない学校教科書だって、たとえば「新しい歴史教科書」の、記述のヘンてこな部分をさがしだし、よりマシな記述に改善する作業だって、教員の力量次第で充分可能なことは、以前もかいた。■また、専門用語事典だって あやしい記述があること、経済学者のジョーン・ロビンソン(Joan V. Robinson, 1903-83)が「経済学を学ぶ目的は、経済学者にだまされないようにするためである」と、皮肉な格言をのこしたことにも、ふれた。■市民による自由参加の民主的編集という、自由市場論なみに おそろしく楽観的な性善説にたつ壮大な計画をかしこくローリスクで利用しつくすためには、逆説的に性悪説にたった悲観的批判精神にのっとるほかないではないか?


●Wikipedia「Wikipedia Scanner(通称:Wikiscanner)
●日記内「Wikipedia」関連記事
●「「ウィキペディア」の不利益情報、楽天証券社内から削除(朝日)