■病気自慢とにて、酷暑・酷寒の地は、最高気温や最低気温が、マゾヒスティックな「自慢」のようである(笑)。■たとえば、「「日本一が減って残念」 最高気温記録抜かれ(『山形新聞』2007年8月16日(木) 20:30)といった記事には、その複雑な心境がえがかれている。

●「「日本一が減って残念」 最高気温記録抜かれ - 山形新聞ニュース
●「山形、No.1の座から転落!」〔『にこぽん本舗』〕

■だから、「首位」にたった自治体も、「日本一暑い町」として観光誘致活動」をする一方、複雑な心情がただよう。


猛暑日本一の岐阜県・多治見 
都市化や緑消失進む、市が対応へ
2007年9月4日 夕刊
 今夏、七十四年ぶりに国内観測史上最高気温を更新する四〇・九度を記録した岐阜県多治見市。九月に入って気温は落ち着きつつあり、市民はホッと一息ついているが、来年以降、同じ事態に見舞われる可能性も。今夏の教訓をどう生かすのか、市は抜本的な対応を迫られている。

 多治見市は、館林市(群馬県)や日進市、新城市(愛知県)など猛暑で知られる自治体に呼び掛け、二〇〇三年から毎年、地球温暖化対策などを考える「あっちっちサミット」を開催してきた。ただ、暑さには慣れているはずの市民や市職員にも今年の猛暑は想定外。「外に出られないし、家の中にいてもつらい」「今年は特別。生ものがすぐだめになる」。市民からはそんな声が漏れた。

 「昔はここまで暑くなかった」と話す市民の中には、都市化に緑地化が追いついていない現状を指摘する人も多い。
 名古屋まで快速電車で約三十分の多治見市内では、三十年前ほど前から市を囲む丘陵地での大規模宅地開発が進んだ。市によると一九七六年から二〇〇二年までに山林の開発や水田の埋め立てなどで消失した緑地面積は千三百六十五ヘクタール。四半世紀で市全体の約18%で緑が失われたことになる。

 市中心部ではこの数年、マンションの建設も相次ぎ、「風の通りが悪くなった」との声もある。市は猛暑の要因を詳しく分析していないが、熱がたまりやすい典型的な盆地地形に加え、これらの都市化現象もヒートアップの一因となった可能性がある。

 今年、市が実施した猛暑対策は、公共施設での打ち水や中心市街地での散水、防災無線やメールによる熱中症注意の呼び掛けなど一時的なものにとどまった。

 市は八月十六日の記録更新後、急きょ、「高気温対策会議」を開いた。打ち水の効果的な時間帯の検討、学校施設の壁面緑化や公園の水辺づくり、市街地の農業水路の復活など、短期、中長期的な対策案が出されたが、具体的な検討はこれから。

 古川雅典市長は秋以降も毎月、猛暑対策を話し合う場を設けていく方針を示している。

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■しかし、これら地方の自治体の さわぎぶりは、実は数字の魔術の産物であって、ことの本質をなかばはずし、なかばいぬいていると かんがえるべきではないだろうか? ■?実は、実質的に日本列島で酷暑になっているのは、沖縄でもなければ、多治見でも熊谷でもなく、大阪・東京であること。■?しかし、逆説的にいえば、多治見など地方の自治体が おおさわぎしている根源的な基盤は、ちかくの東京や名古屋など三大都市圏ヒートアイランド現象の余波として発生しているのであって、それは廃熱の「地産地消」が空洞化し、それこそ、生産消費の過密自体が広域公害化しつつあるということだ。
■第一の論点については、先日の『朝日』の記事をキャッシュで。


大阪や東京、暑かった 
熱帯夜が猛暑加速 8月平均気温

2007年08月29日11時57分

 秋雨前線が列島にかかった29日、東日本を中心に暑さは和らぎ、記録的だったこの夏の猛暑は峠を越えた。埼玉県熊谷市や岐阜県多治見市で国内最高の40.9度が出たこの8月。しかし、平均して暑かったのは大阪や東京だった。熱帯夜が多く、都市化によるヒートアイランドが猛暑を加速させていた。


8月の猛暑日、熱帯夜の数と
平均気温


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 気象庁の27日までのまとめによると、8月の平均気温が最も高いのは大阪市の30.1度。大阪府豊中市、八尾市、東京都練馬区、岐阜市の29.7度が2位に並ぶ。8月としては、大阪市が過去3番目、東京都心の29.5度は観測史上最も暑い。

 東京や大阪の平均気温を押し上げたのは、最低気温の高さだ。平均値は大阪市26.4度、東京都心26.2度。最高気温が35度以上の猛暑日日数では圧倒的に多い熊谷市の24.4度や多治見市の23.4度を2?3度程度上回る。

 最低気温が25度以上の熱帯夜の日数を見ると、大阪市24日、東京都心22日で、熊谷市の9日、多治見市の3日に比べても圧倒的に多い。
コンクリートに覆われ、オフィスや家庭のクーラーなどの熱が夜間にも出ることによるヒートアイランドが一因とみられる。

 東京都心の場合は、極端な雨の少なさも影響した。27日までの雨量は6.5ミリで平年の4%と観測史上最低。夕立がほとんどなく、昼の暑さが夜まで残った。16日夜から17日朝にかけては30度を下回らず、観測史上最も暑い「真夏日の夜」となった。

 ウェザーニューズ社(東京)は8月1日から、首都圏の約2000人にポケットに入る温度計を持ってもらい、街中や公園などいろんな場所で気温を測ってもらっている。同社によると、照り返しの強いアスファルトやベランダ、車の中では40?50度になっているという。

 実際の気温とともに、「体感」の暑さも報告してもらっている。打ち水の後では、約9割の人が涼しくなったと感じたという。

   ◇

 〈ヒートアイランド〉 都市の気温が周辺より高い状態のこと。気象庁によると、地表面がアスファルトやコンクリートに覆われ、水分が少ないために土などの地面に比べ出す熱が多くなり、気温が上がる。コンクリート建物は日中ため込んだ熱を夜間に大気に与え、気温の低下を抑える。オフィスや家庭の冷房などの熱も影響し、首都圏では2度程度気温を上げるという。大阪平野では、広い範囲で都市化が進み、「広域ヒートアイランド」とも呼ばれている。

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■「平均気温は、一日の場合は1時?24時の毎正時24回の気温の平均、一か月(一年)の場合は毎日(毎月)の平均気温の平均のことを指す」とあるとおり、午後の 一番あついときに 「記録」がつくられるのは、実質的な 地域空間の 体感とは全然異質なもので、あまり意味がない。■その意味では、多治見市あたりの「日本一暑い町」といったキャッチフレーズは、あくまでご当地自慢のシャレであって、地理学的・生理学的な次元では無意味な主張である。■ある地域空間が、あつくるしいかどうかは、(a) よるも気温湿度等がおちつかず、いわゆる「不快指数」のおおきさとか、脱水症状・熱中症などの患者の発生率などで、かんがえるべきだろうし、(b) 「照り返しの強いアスファルトやベランダ、車の中では40?50度になっているという」という計測でたしかめられたとおり、われわれの体感=実感は、輻射熱や風速などをふくめた体感温度こそ、決定的なのであって、「ファン付きの通風筒」のなかの温度計の数値といった、「不自然」な記録など、無意味なのだ。


■そして、さらに重要なのは、多治見市あたりの地方都市が「中心部ではこの数年、マンションの建設も相次ぎ、「風の通りが悪くなった」……これらの都市化現象もヒートアップの一因となった可能性がある」といった問題視は、おそらくまとはずれなのだ。■はっきりいって、名古屋や東京・大阪など、巨大都市の都心部の過密なビル群とは、全然異質な密度でたっているだろう地方都市が 少々たてこんだからといって、気象庁の記録が急上昇したとはおもえない。もともと、気象庁がアメダス観測点は、カンカンでりの市街地中心部の路面上などには、ないのだし(笑)。■問題の根本は、三大都市圏への人口・資源の異様な集中ぶりだ。それら大都市圏は、生産・消費の両面で、自然界の大気・水流の放熱・循環機能をおおきく超過した規模の廃熱をおこなっているのだ。

ウィキペディア熊谷市 気候

一年のうち最も日照が多い地域の一つである。加えて1990年代以降からは、7月から8月にかけての夏季におけるその気温の高さが全国的に知られるようになった。これは、海風に乗り北上してくる東京都心のヒートアイランド現象により暖められた熱風と、フェーン現象によって暖められた秩父山地からの熱風が、一般的に日中の最高気温となる午後2時過ぎに同市の上空付近で交差するためだと考えられており、「熱風の交差点」と呼ばれることもある…


■こうしてみてくると、沖縄や熱帯地方よりあついとさえいえる大都市部の「ヒートアイランド」現象は、酷暑の季節がすぎて、熱中症患者がでなくなったとか、電力不足の心配がいらなくなったとかいったことで、「のどもとすぎれば、あつさわれる」のたぐいが、ゆるされない大問題のはずだ。