■しばしばお世話になる『社会実情データ図録』。今回は「M字カーブ推移の内容」(図録1510)。■5年まえのデータと25年まえのデータの比較ではあるが、女性が「労働力人口」≒「対価をえるかたちで はたらいている」にかぞえられるわりあい=「有業率」の動態。

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 女性の年齢別労働力率は女性就業の基本グラフであり、我が国ではM字カーブが特徴である点が知られている(図録1500)。図録1505ではM字カーブの切れ込みの緩和という推移の状況を示したが、ここではその実態についてさらに詳しく見てみた。

 労働力調査や国勢調査では過去1週間仕事をしたか(あるいは仕事を探していたか)で労働力人口を算出し、人口で割って労働力率を出している。ここで使用した就業構造基本調査では、普段仕事をしているかどうかで有業者か無業者かを算出し、やはり人口で割って有業率を出している。労働力率と有業率とは調べ方は異なるがほぼ同様の概念である。

 女性の年齢別有業率のグラフにはやはりM字カーブが認められ、1982年から2002年への変化を見ると切れ込みは緩やかになっている。

 しかし、有業者の内訳をみると、有業率が上昇しているのは主として「独身・子どもなし」の女性で働いている者が増えているからであって、「子どもあり」の女性の有業率が上昇しているからではないことが明らかである。

 すなわち、晩婚化によって未婚有業者が増えているためであり、結婚・出産した女性が継続就業あるいは再就業できる環境が整ってきたことによるわけではないことが見てとれる。いわば出生率を犠牲にして女性就業率が上がっているわけであり、社会の将来性の確保の観点からは、いびつな状況と言わざるを得ないであろう。

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〔引用おわり〕

酒井順子さんの『負け犬の遠吠え関連の記事で再三かいたとおり、女性の晩婚化高齢出産がすすんでいることは、あきらかな事実。■その意味で、本川氏の「有業率が上昇しているのは主として「独身・子どもなし」の女性で働いている者が増えているからであって、「子どもあり」の女性の有業率が上昇しているからではない……すなわち、晩婚化によって未婚有業者が増えているためであり、結婚・出産した女性が継続就業あるいは再就業できる環境が整ってきたことによるわけではない」という指摘は重要。
■しかし、本川氏の「出生率を犠牲にして女性就業率が上がっているわけであり、社会の将来性の確保の観点からは、いびつな状況」という「正論」には、そのままくみできない。■ここには、女性たちの労働条件への「同情的」な視線は感じられても、それはあくまでパターナリスティック(エリート男性的)な巨視的懸念であって、少子化が問題化しないような状況さえもたらされれば*女性の労働環境や人生設計が「二の次」にされかねない気がしてくる。
■本川氏の「正論」をいささかイジワルな視線でよみかえすと、「オンナにうまれた以上、出産育児を経験してみたい」という層が圧倒的多数なのに、それをゆるさない状況がある、といった前提がすけてみえる。■実際、「オンナにうまれた以上、出産育児を経験してみたい」という層が依然多数であることはたしかだろうが、女性の人生のなかで出産・育児は選択肢のひとつであって、それだけがあたかも人生の重大事・中軸であるかのような前提は、おかしいだろう。

■オトコたちが、公私いずれの領域においても、周囲の女性たちの人生設計を自由にさせる努力をはらってきただろうか? ■いいかえれば、実質的な育児負担をおわず、実質的な育児負担の実態に即した労働環境の整備に最大の努力をおわなかったオトコたちの大半が、女性の晩婚化・非婚化と少子化をウンヌンするのは、おかどちがいだ。
■したがって、本川氏の「結婚・出産した女性が継続就業あるいは再就業できる環境」をととのえるべきという「正論」は、よりたちいって、「結婚・出産した女性が継続就業あるいは再就業できる家庭環境および職場環境」と、かきかえるべきだろう。


●「未婚率の推移
●「高齢者労働力率の推移(各国比較)
●「平成14年就業構造基本調査結果の要約
●「総務省 労働力調査ホームページ


* 極端なはなし、エリート男性たちによる一夫多妻制によって、女性たちのおおくが生涯のうちに 2人以上のコドモをうみそだてることが確保されるとか、定住的ないし長期滞在型の外国人労働力が人口不足をうめあわせるといった「解決策」が、論理的・経済学的には可能である。