『朝日』『読売』あたりが、ちょっとさわいだ件(笑)。
■『読売』の1週間ほどまえの記事を転載。


漢字の調べ方、辞書より携帯
…10?30代で多数派に

 漢字を調べる際に辞書ではなく、携帯電話の漢字変換機能を使う人が、20代では8割もいることが、7日に発表された文化庁の「国語に関する世論調査」で分かった。「気が置けない」「流れに棹(さお)さす」など、慣用句の意味を誤解するケースも目立った。

慣用句の誤用も広がる

 調査は今年2?3月、16歳以上の約3400人を対象に行われた。

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 わからない漢字を調べる場合、何を使うかを聞いたところ、「辞書」(60・6%)、「携帯電話」(35・3%)、「ワープロ・パソコン」(21・3%)、「電子辞書」(19・4%)という順番だった(複数回答)。年代別に見ると、10?30代の各年代では、携帯電話で調べる人が辞書を使う人を上回った。特に20代は、携帯電話派が79・3%に達し、辞書派は35・4%にとどまった。

 こうした傾向について、文化庁国語課は「携帯電話の変換機能では漢字の意味までは分からない。求めている漢字を正確に選び出せるかどうかは使う人の国語力にかかってくる」と指摘している。


 また、慣用句の使い方をたずねたところ、「気配りや遠慮をしなくてよい」という意味の「気が置けない」を正しく理解していたのは42・4%。「相手に気配りや遠慮をしなければならない」と誤って考えている人が48・2%を占めた。

 「役不足」を「本人の力量に比べ役目が軽いこと」と正しく理解していた人も40・3%にとどまり、50・3%は「役目が重すぎる」と回答していた。

 「流れに棹さす」についても、「流れに沿って、勢いを増すこと」と正しい意味を選んだのは17・5%に過ぎず、62・2%の人は「流れに逆らって、勢いを失わせること」と逆の意味に理解していた。

 このほか、「混乱した様子」を意味する「上を下への大騒ぎ」を、58・8%の人が「上や下への大騒ぎ」と使っていた。「夢中になって見境がなくなること」の「熱にうかされる」も、48・3%の人が「熱にうなされる」と勘違いしていた。


(2007年9月10日 読売新聞)

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■後半の記事は、「誤用がめだつようでは慣用句でなく半分死語でしょ?」であつかったこととおなじネタ。
■「安田敏朗『辞書の政治学』」で、電子辞書への移行が問題視されていることをとりあげたが、ことは、そういった「ひく」という行為さえもはぶいて、ともかく「変換」結果だけほしがる段階に達しているようだ。 
■では、「文化庁国語課は「携帯電話の変換機能では漢字の意味までは分からない。求めている漢字を正確に選び出せるかどうかは使う人の国語力にかかってくる」と指摘している」のをどう解釈するか?

■今後、携帯電話の辞書機能がどこまで達するかわからない。■現状では、パソコンにインストールされたMicrosoft IMEなどのかな漢字変換機能とはちがって、同音異義語の識別情報がはぶかれている以上、「求めている漢字を正確に選び出せるかどうかは使う人の国語力にかかってくる」というのは、一応妥当だろう。
■ただ、?携帯版電子辞書の機能のような機能をもちあわせる必要がない以上、パソコンのかな漢字変換の変換候補の解説機能に準じたものが搭載される可能性がある。■パソコンの変換機能にたよることで日常的に冊子型の辞書をひく必要性を痛感しない層の実感などをみても、この程度のソフトの進化で、問題の大半が解消されてしまうかもしれない。
■また、?漢字まじり表記規範の心理的圧力がへっていくだろう ながれからすれば、あえて漢字変換をのぞまない利用者がふえていくはずだ。こうなれば、「求めている漢字を正確に選び出せるかどうか」という前提自体がきえさることになる。


■大体、辞書が語義・語源をたしかめるという本来の機能ではなく、「字引」(字典)として活用されていることは、田中克彦氏らが皮肉をこめて指摘ずみのこと。むかしの学生さんじゃあるまいし、冊子型の辞典をカバンなどでもちあるいて、不安があったら「字典」としてつかうなんて時代が、もともとまちがいだったんだよ。いくら印刷・製本技術が進歩して携行タイプができたからって。■だから、電子辞書派が急増するのはごく当然のながれだし、「どわすれした漢字のリカバー機能」って意味で携帯電話の「字典」機能が当座の用に重宝がられるのは、あたりまえだろう。■こういった調査をわざわざする動機がよくわからないし、どうみても憂慮しているらいし記事も、???

■これも、ありがちな「俗流若者論」の一種か?


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