2007年9月21日(金)「しんぶん赤旗」
柏崎刈羽のこの揺れで
全原発の設計値超す
電力各社 それでも 「安全」----------------------------------------
新潟県中越沖地震の際に柏崎刈羽原発で観測された地震動(観測値)に襲われた場合を想定して全国の原発の安全性を検討していた電力会社は二十日、検討結果を発表しました。すべての原発で、観測値が設計時に想定された地震動を超えていたにもかかわらず、各電力会社は、「施設の余裕度」を理由に、「安全機能は維持される」としています。
各電力会社は、柏崎刈羽原発1号機と4号機の原子炉建屋基礎上で観測されたデータを観測値として使用。各原発の設計時に想定した地震動による周期ごとの揺れを比較しました。
その結果、すべての原発で観測値が設計値を上回る結果となりました。
(図は東京電力福島第二原発4号機の例)
しかし、電力会社は、観測値が設計値を上回った周期で安全性が問題になる施設にたいして、二―十倍までは上回っても大丈夫とする「許容値」をもちだして、「耐震設計上重要な施設の安全機能は維持される」と結論づけています。
耐震設計に根本的欠陥
安全宣伝より改善策を
柏崎刈羽原発で観測された地震動を全国の原発に適用した場合、設計時に想定した揺れの強さを上回ることは予想されたことでした。
柏崎刈羽原発の設計で想定した最大地震動は四五〇ガル(ガルは加速度を表す単位)。これに対し、現在日本にある商業用原発五十七基(うち二基は建設中)のうち、80%にあたる四十六基は四五〇ガル以下で設計されているからです。(表)
新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発が大きな被害を出し、国民の間からはほかの原発に対する不安が高まっていました。
こうしたなかで各電力会社は、柏崎刈羽原発で観測された地震動でも各原発の安全性が保たれることを「証明する」必要に迫られていました。
今回の「証明」に持ち出されたのは、地震動が想定されている強さを上回っても、二―十倍までは大丈夫だとする「許容値」です。
これまで、国も電力会社も、原発は考えられる最大の地震動を考慮して設計していると説明してきました。実際の地震動が設計値を超えることはもともと想定していませんでした。
柏崎刈羽原発を襲った地震動が設計値を大幅に超えたことは、これまでの原発の耐震設計が現実に合わず、根本的に見直す必要があることを示しています。
柏崎刈羽原発は、地震によって放射性物質を環境に放出するという初めての「原発震災」を引き起こしました。原子炉内部の被災状況などはこれから調査される段階ですが、被害個所やトラブル件数は現時点で約二千八百件に及んでいます。
柏崎刈羽原発よりも小さな地震動を想定して設計された原発が、柏崎刈羽原発で観測された地震動に襲われれば、被害がより大きくなることは明らかです。
今回のように「許容値」を持ち出して安全を宣伝するのではなく、これまでの地震対策の不十分さを徹底的に明らかにして、それを早急に改めていくことこそ、国民に対する責任です。(前田利夫)
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■『産経』などのように、原発行政を肯定したい媒体は、電力会社の「発表」をタレながして、「火消し」に躍起だ。■たとえば、つぎのような記事。
中越沖クラスの揺れでも安全
FujiSankei Business i. 2007/9/21 TrackBack( 0 )
新潟県中越沖地震を受け、原発や核燃料再処理工場などの原子力施設を持つ東京電力など11社と、日本原子力研究開発機構は20日、柏崎刈羽原発で観測されたのと同じ揺れが起きた場合の各施設への影響を試算し、すべての施設で「安全機能は維持される」とした報告書を経済産業省原子力安全・保安院に提出した。
保安院は「評価方法は妥当だが、試算は仮に柏崎刈羽と同じ揺れがあっても安全だという一つの目安。各社が進めている耐震安全性の再評価で厳格にチェックしてほしい」としている。
試算対象は柏崎刈羽原発を除く48基の原発と青森県六ケ所村の核燃料再処理工場など2施設、高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の計51施設。
各社は、原子炉圧力容器や制御棒、余熱除去系など「止める、冷やす、閉じこめる」の機能を担う設備や機器について、個別に安全性を検討。柏崎刈羽原発1号機と4号機の地下最下階で観測された地震の揺れと、設計時などに想定した地震の揺れを比較し、中越沖地震での揺れが上回った設備について、さらに詳細に検討した。
この結果、日本原電の東海第2発電所(茨城県東海村)を除くすべての施設で、想定を上回る設備があったが、その場合でもほとんどの設備が揺れに耐える十分な強度を持っており、安全機能は損なわれないとした。
■だが、再三再四のべてきたとおり、かれらの「想定」なるものが破綻したこと、かれらの「安全」「対策」なるものが、全然信用ならないものであることは、これまでの報道をつなぎあわせれば、おのずと浮上する。■かれらが、それら疑念を軽減する報告・発表をおこなったことは、おそらくただ一度もない。
■そして、この記事を注意ぶかくよめばわかるとおり、電力各社や政府が保証しようとしているのは、あくまで「中越沖クラスの揺れでも安全」という、全然なぐさめにならない水準。■何度もかいてきたとおり、今回の大地震とはいいがたい(被災地の被害が相当なものではあれ)新潟県中越沖地震でさえも、「想定」をおおきくこえてしまったという、原子力行政にとって致命的な事実が確認されたことへの反省が、カケラもみられない。■逆にいえば、今回のエネルギーやユレをおおきくうわまわると推計されている東海地震などの震災を不安なくしのげる設計・準備がなされているとは到底おもえないという、無残な現実があらわになったのだが、この程度の報道をながしつづければ、地元をふくめて大衆の相当部分の心理がしずまるとでも計算しているのだろうか? ■実に ひとをバカにした はなしで、ハラがたつ。
■つぎは、電力各社当局の「大本営発表」への疑念ありありの慎重論。『朝日』から。
「中越沖地震揺れ、
原発など原子力施設を持つ12事業者は20日、新潟県中越沖地震の際に柏崎刈羽(かりわ)原発で観測された揺れが、各施設を襲った場合の安全解析結果を公表した。原発1基を除く全施設で、設計時に個別に想定した最大の揺れを超えた。だが「設計余裕の範囲で重大事故には至らない」と結論づけた。専門家は「より詳細な解析が必要」と指摘する。
原発を持つ10電力と、使用済み核燃料再処理工場を持つ日本原燃、高速増殖炉もんじゅを持つ日本原子力研究開発機構の12事業者が、柏崎刈羽原発7基以外の商用原発48基と3原子力施設の安全性を計算で評価した。
その結果、日本原子力発電の東海第二原発(茨城県)を除く50の原発・原子力施設で、圧力容器や主蒸気配管など重要機器の一部で、設計時に想定した最大の「およそ現実的でない揺れ」を上回ることがわかった。
しかし、各事業者とも「設備には安全面で余裕を持たせてあり、放射能漏れ事故に至ることはない」とした。
このうち、東京電力の福島第一原発1?5号機では、原子炉の制御棒でひずみや変形が生じて緊急停止に支障が起きることが懸念されたため、詳細に検討して安全性を確かめたとしている。
経済産業省原子力安全・保安院は「各施設とも重要機器は余裕を持って設計されており、『止める』『冷やす』『閉じこめる』の安全機能は保たれると考える」という。
ただ、今回使われたデータは柏崎刈羽原発の最下階で記録されたもの。比較的軟らかい地層で、揺れが減衰していた可能性も指摘される。厳密な解析に使われる岩盤部のデータは、地震計のトラブルで消えており、まだ再構成できていない。
福和伸夫・名古屋大教授(耐震工学)は「今回の解析は信頼確保の第一歩だ。岩盤部の揺れを基に、各原発の地盤条件を反映した解析が必要だ。活断層の調査やその評価の検証も求められる」と指摘している。
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■結局今回の発表も、ゆれを数値化(ガル)したものが、炉心ほか発電設備周辺の重要設備付近ののすべてについて、計器が適切な箇所に設置されていたのか、「許容値」やら「余裕」やらの科学的根拠が専門家をなっとくさせるものではないらしいこと、われわれしろうとの不安をぬぐいさらないものであることだけは、たしかめられた。■連中は、なにもかわっていない。
■残念ながら、「ウソも堂々とつきとおせば、大衆はちゃんとだまされる」という、ナチスなど古典的プロパガンダの手法・理念は、依然として有効なのだろうか?
耐震設計に根本的欠陥
安全宣伝より改善策を
柏崎刈羽原発で観測された地震動を全国の原発に適用した場合、設計時に想定した揺れの強さを上回ることは予想されたことでした。
柏崎刈羽原発の設計で想定した最大地震動は四五〇ガル(ガルは加速度を表す単位)。これに対し、現在日本にある商業用原発五十七基(うち二基は建設中)のうち、80%にあたる四十六基は四五〇ガル以下で設計されているからです。(表)
新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発が大きな被害を出し、国民の間からはほかの原発に対する不安が高まっていました。
こうしたなかで各電力会社は、柏崎刈羽原発で観測された地震動でも各原発の安全性が保たれることを「証明する」必要に迫られていました。
今回の「証明」に持ち出されたのは、地震動が想定されている強さを上回っても、二―十倍までは大丈夫だとする「許容値」です。
これまで、国も電力会社も、原発は考えられる最大の地震動を考慮して設計していると説明してきました。実際の地震動が設計値を超えることはもともと想定していませんでした。
柏崎刈羽原発を襲った地震動が設計値を大幅に超えたことは、これまでの原発の耐震設計が現実に合わず、根本的に見直す必要があることを示しています。
柏崎刈羽原発は、地震によって放射性物質を環境に放出するという初めての「原発震災」を引き起こしました。原子炉内部の被災状況などはこれから調査される段階ですが、被害個所やトラブル件数は現時点で約二千八百件に及んでいます。
柏崎刈羽原発よりも小さな地震動を想定して設計された原発が、柏崎刈羽原発で観測された地震動に襲われれば、被害がより大きくなることは明らかです。
今回のように「許容値」を持ち出して安全を宣伝するのではなく、これまでの地震対策の不十分さを徹底的に明らかにして、それを早急に改めていくことこそ、国民に対する責任です。(前田利夫)
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■『産経』などのように、原発行政を肯定したい媒体は、電力会社の「発表」をタレながして、「火消し」に躍起だ。■たとえば、つぎのような記事。
中越沖クラスの揺れでも安全
…各原子力施設で影響試算
経産省に提出FujiSankei Business i. 2007/9/21 TrackBack( 0 )
新潟県中越沖地震を受け、原発や核燃料再処理工場などの原子力施設を持つ東京電力など11社と、日本原子力研究開発機構は20日、柏崎刈羽原発で観測されたのと同じ揺れが起きた場合の各施設への影響を試算し、すべての施設で「安全機能は維持される」とした報告書を経済産業省原子力安全・保安院に提出した。
保安院は「評価方法は妥当だが、試算は仮に柏崎刈羽と同じ揺れがあっても安全だという一つの目安。各社が進めている耐震安全性の再評価で厳格にチェックしてほしい」としている。
試算対象は柏崎刈羽原発を除く48基の原発と青森県六ケ所村の核燃料再処理工場など2施設、高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の計51施設。
各社は、原子炉圧力容器や制御棒、余熱除去系など「止める、冷やす、閉じこめる」の機能を担う設備や機器について、個別に安全性を検討。柏崎刈羽原発1号機と4号機の地下最下階で観測された地震の揺れと、設計時などに想定した地震の揺れを比較し、中越沖地震での揺れが上回った設備について、さらに詳細に検討した。
この結果、日本原電の東海第2発電所(茨城県東海村)を除くすべての施設で、想定を上回る設備があったが、その場合でもほとんどの設備が揺れに耐える十分な強度を持っており、安全機能は損なわれないとした。
■だが、再三再四のべてきたとおり、かれらの「想定」なるものが破綻したこと、かれらの「安全」「対策」なるものが、全然信用ならないものであることは、これまでの報道をつなぎあわせれば、おのずと浮上する。■かれらが、それら疑念を軽減する報告・発表をおこなったことは、おそらくただ一度もない。
■そして、この記事を注意ぶかくよめばわかるとおり、電力各社や政府が保証しようとしているのは、あくまで「中越沖クラスの揺れでも安全」という、全然なぐさめにならない水準。■何度もかいてきたとおり、今回の大地震とはいいがたい(被災地の被害が相当なものではあれ)新潟県中越沖地震でさえも、「想定」をおおきくこえてしまったという、原子力行政にとって致命的な事実が確認されたことへの反省が、カケラもみられない。■逆にいえば、今回のエネルギーやユレをおおきくうわまわると推計されている東海地震などの震災を不安なくしのげる設計・準備がなされているとは到底おもえないという、無残な現実があらわになったのだが、この程度の報道をながしつづければ、地元をふくめて大衆の相当部分の心理がしずまるとでも計算しているのだろうか? ■実に ひとをバカにした はなしで、ハラがたつ。
■つぎは、電力各社当局の「大本営発表」への疑念ありありの慎重論。『朝日』から。
「中越沖地震揺れ、
想定超も設計の範囲内」
他原発施設
2007年09月21日03時05分原発など原子力施設を持つ12事業者は20日、新潟県中越沖地震の際に柏崎刈羽(かりわ)原発で観測された揺れが、各施設を襲った場合の安全解析結果を公表した。原発1基を除く全施設で、設計時に個別に想定した最大の揺れを超えた。だが「設計余裕の範囲で重大事故には至らない」と結論づけた。専門家は「より詳細な解析が必要」と指摘する。
原発を持つ10電力と、使用済み核燃料再処理工場を持つ日本原燃、高速増殖炉もんじゅを持つ日本原子力研究開発機構の12事業者が、柏崎刈羽原発7基以外の商用原発48基と3原子力施設の安全性を計算で評価した。
その結果、日本原子力発電の東海第二原発(茨城県)を除く50の原発・原子力施設で、圧力容器や主蒸気配管など重要機器の一部で、設計時に想定した最大の「およそ現実的でない揺れ」を上回ることがわかった。
しかし、各事業者とも「設備には安全面で余裕を持たせてあり、放射能漏れ事故に至ることはない」とした。
このうち、東京電力の福島第一原発1?5号機では、原子炉の制御棒でひずみや変形が生じて緊急停止に支障が起きることが懸念されたため、詳細に検討して安全性を確かめたとしている。
経済産業省原子力安全・保安院は「各施設とも重要機器は余裕を持って設計されており、『止める』『冷やす』『閉じこめる』の安全機能は保たれると考える」という。
ただ、今回使われたデータは柏崎刈羽原発の最下階で記録されたもの。比較的軟らかい地層で、揺れが減衰していた可能性も指摘される。厳密な解析に使われる岩盤部のデータは、地震計のトラブルで消えており、まだ再構成できていない。
福和伸夫・名古屋大教授(耐震工学)は「今回の解析は信頼確保の第一歩だ。岩盤部の揺れを基に、各原発の地盤条件を反映した解析が必要だ。活断層の調査やその評価の検証も求められる」と指摘している。
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■結局今回の発表も、ゆれを数値化(ガル)したものが、炉心ほか発電設備周辺の重要設備付近ののすべてについて、計器が適切な箇所に設置されていたのか、「許容値」やら「余裕」やらの科学的根拠が専門家をなっとくさせるものではないらしいこと、われわれしろうとの不安をぬぐいさらないものであることだけは、たしかめられた。■連中は、なにもかわっていない。
■残念ながら、「ウソも堂々とつきとおせば、大衆はちゃんとだまされる」という、ナチスなど古典的プロパガンダの手法・理念は、依然として有効なのだろうか?
新潟県中越沖地震と同程度の強さの地震に見舞われても、設計上の余裕によって原発の安全機能は維持できる?。
こんな内容の報告書を、原子力施設を持つ北電など十二の電気事業者がまとめた。
大半の原発では、今回の地震の揺れが設計時の想定を上回るものの、原発は余裕をもって設計されている。「放射能漏れなど深刻な事故に至ることはない」というのが、各社の報告書の主要な結論だ。
しかし、この余裕分をさらに上回る地震が起こる可能性がないとは言い切れないだろう。それを確認するための各社の地質調査はこれからだ。
原子炉などの重要施設については、強い揺れがもたらす目に見えないひずみや、老朽化に伴う影響などを加味した安全評価も欠かせない。
報告書には、新たな地質調査の結果や安全評価は盛り込まれていない。
これで重大事故は起こらないと結論付けるのには無理がある。安全を強調する各社の姿勢は安易すぎる。
各社は、中越沖地震の際に東電柏崎刈羽原発で観測された地震の揺れを示すデータを、各施設の設計時に想定した揺れの最大値と比較した。
地震の揺れは、上下左右に複雑にからみあう。原発への揺れの伝わり方や影響を調べるためには、まず地震波の精密な解析が必要になる。
ところが、柏崎刈羽原発では、旧式の地震計を使っていたためトラブルが起こり、収集した貴重な地震データの多くが失われてしまった。
各社が、今回の報告書で利用したのは、原発の最下階に設置した地震計が記録した一部のデータにすぎない。
しかも、柏崎刈羽原発の周辺は、軟弱な砂地だ。専門家は、強い揺れがやわらかい地盤に「吸収」され、弱められて地震計に記録された可能性があると指摘している。
こうした地質上の特殊性を考慮せず限られたデータを使って、立地条件が違うほかの原発の耐震性まで判断できるのか。疑問がぬぐえない。
……