志布志事件の続報。■鹿児島の県紙『南日本新聞』の記事から。

志布志「踏み字」 元警部補 無罪主張
(『南日本新聞』11/22 14:35)

初公判を終え、弁護士とともにタクシーで裁判所を出る
●●●●被告(左)
=22日午前11時41分、福岡市の福岡地裁前


img20071123.bmp 志布志・県議選事件に絡む任意の取り調べで、志布志市のホテル経営川畑幸夫さん(62)に「踏み字」を強要したとして、特別公務員暴行陵虐罪に問われた元鹿児島県警警部補、●●●●被告(45)=福岡市西区=の初公判が22日、福岡地裁(林秀文裁判長)であった。●●被告は「踏み字を1回させたことは事実で、川畑さんに不快な思いをさせ、反省している」としたが、「同罪としての陵辱、加虐を構成せず、違法性はない。仮に違法性があっても、公務員職権乱用罪と評価すべきで、公訴時効(3年)が完成している」と無罪を主張した。
 冒頭陳述で、検察側は、3日間に及んだ取り調べの3日目から川畑さんが黙秘に転じ、問いかけにも一切応じなくなったことから「親族への感情を刺激して黙秘状態を打開しようとした」と動機を指摘。「おまえをこんな人間に育てた覚えはない」などと家族の名を書いた紙を置いたが、川畑さんが見ようともしなかったため、家族の情を踏みにじっているという意味で踏ませたことを明らかにし、「川畑さんは屈辱感と強い怒りを感じた」と述べた。
 一方、弁護側は冒頭陳述で「不当な黙秘をしているという●●被告の判断には合理性が認められ、職務を行う上で許される行為として相当」と主張した。
 検察側の証拠調べ請求で、検察側が提示した川畑さんの検察官調書を弁護側が不同意とし、検察側は川畑さんの証人尋問を申請した。川畑さんに対する尋問は12月27日に行われ、来年1月24日に被告人質問をして結審する見通し。
 起訴状によると、●●被告は、県警捜査二課の捜査員だった03年4月16日、志布志署での任意の取り調べ中、否認する川畑さんの両足首をつかみ、実父や孫の名で説得する文章を書いた紙3枚を1回踏ませ、精神的苦痛を与えた。
 川畑さんは07年1月、●●被告を鹿児島地検に刑事告訴。事件は「第三者的な視点が必要」として、福岡高検に移送された。●●被告は8月31日付で県警を依願退職後、福岡市へ転居。事件を捜査した高検の指揮で福岡地検が9月19日、在宅起訴していた。

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■「不快な思いをさせ、反省している…仮に違法性があっても、公務員職権乱用罪と評価すべきで、公訴時効(3年)が完成している」」といいはる感覚がすごい。■所詮は、「わるくない」といいたいわけ。もと警部補に責任の半分ちかくをおしつけるのはまずい組織犯罪ではあるんだが、それにしても、往生ぎわがわるすぎる。
■「「不当な黙秘をしているという●●被告の判断には合理性が認められ」って被告弁護がわ論理も、珍妙。だって、黙秘権ってのは、被疑者の基本的人権でしょ?(「(自己にとって不利益かどうかを問わずに、刑事事件の捜査段階において)「自己の意思に反して供述をする」ことを強要されない権利(刑事訴訟法第198条第2項)や、(同じく、自己にとって不利益かどうかを問わずに、刑事訴訟において)「終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができる」権利(刑事訴訟法第291条第2項,同第311条1項)」


■鹿児島県警全体の 組織犯罪を白状しているような つぎの記事も重要。

鹿児島県警の内部調査の検証記録、
公文書なし
(『読売新聞』九州発2007/11/22)
 2003年の鹿児島県議選を巡る公選法違反事件で、被告12人全員が無罪となった今年2月の鹿児島地裁判決を受け、同県警が捜査を検証するために行った内部調査の記録や調査結果を公文書として残していないことが分かった。県警は「公文書にしなくても、調査結果は再発防止策などに生かされている」と説明している。

 県警によると、内部調査は無罪判決直後の2月下旬から始め、複数の幹部が当時の捜査員への聞き取りや捜査資料の再確認などを実施。調査結果や再発防止策について協議する幹部会議を開催し、鹿児島地検が無罪判決の控訴断念を表明した3月8日、裏付け捜査の徹底などを再発防止策としてまとめ、各所属長に通達を出した。

 県警捜査2課の西窪和孝理事官は「調査にかかわる文書や資料は様々あるが、まとめて公文書化したものはない。今後も公文書として文書化する予定はない」と話している。

 これまで県警は定例記者会見や県議会で、「個人のプライバシーや具体的な捜査手法の中身に当たる」などとして調査結果の詳細を公表しない考えを表明していた。ただし、9月に就任した藤山雄治本部長は「公表できるものは公表する」との認識を示していた。

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■県警全体が こんな意識・姿勢なわけだから、実行犯たる警部・警部補らに、つみの意識なんかあるわけないよね。■かれらは、でっちあげ逮捕や違法なとりしらべも、全部正当な職務だとおもいこもうとしていたわけで、要するに、実行犯をとりまく県警の相当部分が、トチくるっていたわけだ。一部、まずいとわかりながら、内部告発するのが、こわくてできなかった傍観者がいただろうけどね。■「個人のプライバシーや具体的な捜査手法の中身に当たる」って、わらわせるよ。人権無視の違法なとりしらべの手法ってのは、かくすべきものじゃなくて、はずかしくて おもてに だせないだけでしょうが(笑)。


●ウィキペディア「志布志事件
●ウィキペディア「富山連続婦女暴行冤罪事件
●読売新聞ニュース特集:九州発「鹿児島県議選「踏み字」事件
●Googleニュース検索「鹿児島・県議選」
●「踏み字事件下)証人の警部補に怒りの叫び」(『朝日新聞』マイタウン鹿児島2007年02月20日)
●「踏み字国賠判決に関する声明」(鹿児島県弁護士会)
●「警察の犯罪捜査:「踏み字」の強要、取調べの可視化」『kitanoのアレ』