教育現象

高学歴ワーキングプア(水月昭道)10=「ムダ」とはなにか26

■『日本の漢字』『「ニート」って言うな!』と、2回も途中でこけたので〔10回未満の小シリーズは、かずしれずだが〕これは、キリのいいところで、キリあげることにする(笑)。

■本書は、前回までとりあげたような箇所以外にも、事実誤認とか、過度の一般化が散見されるのだが、これ以上のツッコミは やめておく。■それよりも、巨視的な問題構造についての筆者の基本的な見解に、私見を少々つけくわえることで、小括とすることにした。

■水月氏は「教育は、その学校に正規に属する教員によって行われることが大事ではないか。講義だけを与えていればよいというのであれば、それは、教育ではなく商売をやっているということにならないだろうか。そのツケは、間違いなくそう遠くない将来にやってくる」と断言する
〔p.132〕。■一見、反論のしようのない正論にうつるが、はたしてホントだろうか? 続きを読む

高学歴ワーキングプア(水月昭道)9=「ムダ」とはなにか25

■何度かかいてきたとおり、文部科学省の官僚の一部や東大・京大など“研究大学”の先生方は、「悪意」を充分もったうえで、大学院重点化政策を悪用し、少子化・バブル経済崩壊のすすむ90年代以降をおよぎまわったという総括があてはまるとおもう。■同時に、それに便乗した「詐欺商法」が地方私立大学で相当数展開されただろうが、官僚や一部先生がたの暗躍ほどの つみはないだろうと。それは「ふりこめ詐欺」などと同様、被害者がわからすれば、悪質そのものなのだが、そういった チャチな稼業にてをそめる時点で、実行犯たちの苦境がすけてみえるのであり、だますがわ自体が巨視的構造中の「弱者」といえなくもないからだ。■たとえば、水月氏は、さかんに博士課程にすすんだ層のはらいこんだ学費を問題にするが、それはとられるがわにとっては、「トラの子」の資金ではあっても、およそ私立大学単体を授業料収入としてささえるような経営資金の軸にはなりようがない総額規模だっただろうし。*

* この手の計算に、ハラナはひどくうといので、てはださないが、簡単に推測しても、全学あわせてせいぜい百人強程度の水準だろう地方私立大学の大学院生から、年間数十万円の学費をまきあげたところで、それが経営をささえる「黒字」になるとはおもえない。文科省あたりから、巨額の助成金がふってくるとはおもえないし。

■だが、後者とて、「余剰博士」「博士浪人」たちの大量発生を構造的に搾取している面は否定的できない。それは、非常勤講師の工面だ。 続きを読む

高学歴ワーキングプア(水月昭道)8=「ムダ」とはなにか24

■副題を《「ムダ」とはなにか》とめいうってあるとおり、このシリーズの本旨は、あくまで、巨大なムダ=社会病理の構造を整理することにある。■博士課程、とりわけ人文・社会系のコースをへたひとびとが、「やめておけばよかった」と、ほとんど感じないのなら、基本的に問題ないし、巨視的にも、「本人がやりたいように やればいいじゃない」と、その養成費用など、税金の拠出や勉強についやされた時間(≒生産労働等に投入されなかった機会費用)を、ユトリでながせるなら、なにも問題視することはない。■しかし、水月氏の本がうれているのは、おそらく ひとごとではない当事者だけではなく、大学院博士課程という5年もの年月についやされる、あまりに膨大な諸資源が、有効活用されずに浪費されているというソボクな違和感が社会的に共有されているからだろう。■本書も、そのページや筆致の半分程度は、そういった理不尽(浪費)の告発にあてられているとおもう。
■ただ、ここでは、前回予告したような非常勤講師の待遇問題など、直接的なコスト問題にきりこまず、あえて迂回路をとおろうとおもう。前回同様、本書には事実誤認がまぎれこみ、アカデミックな世界に無縁な読者層には誤解をあたえるだろうとおもわれるからだ。*


* もちろん、ハラナ自身、大学や研究所業界全体にくわしいわけではないが、それでも、これは、まずかろうという記述が散見される。 続きを読む

高学歴ワーキングプア(水月昭道)7=「ムダ」とはなにか23

■さて、前回をもって、本書の第一のウリであるとおもわれる、近年の博士課程肥大にともなう「博士浪人」大量発生問題の巨視的構図についての、紹介・論評は、おわりにする。「「フリーター生産工場」としての大学院」という痛烈な副題をもつ本書は、前回までの6回の素描をもって、おおむね概要をしめせたとおもうからだ。■と同時に、「「フリーター生産工場」としての大学院」という副題に即した実例とおもわれる第3章「なぜ博士はコンビニ店員になったのか」などを中心に、事実誤認や過度の一般化とおもわれる記述がめにつくからでもある。
■水月氏は、おそらく イモづる式に人脈をひろげたか、ホームページないし掲示板などで、情報をあつめたのであろうが、これが人文・社会系の大学院生の代表例・標準的ケースとは、ちょっといいがたいような印象がぬぐえないのだ。■たとえば、博士号を超スピードで取得しながら就職先がみつからず、こころならずも研究員身分をつづけていた才媛S氏のことが例としてあがっているが、これなどは、まさにレアケースなのではないだろうか?
続きを読む

高学歴ワーキングプア(水月昭道)6=「ムダ」とはなにか22

シリーズ第1回でも紹介したとおり、「大学院重点化というのは、文科省と東大法学部が知恵を出し合って練りに練った、成長後退期においてなおパイを失わん都執念を燃やす“既得権維持”のための秘策」であり、「折しも、九〇年代半ばからの…就職難で行き場を失った若者を、大学院につりあげることなどたやすいことであった」という、政治経済学的な動態のなかで推移した。■悪意にみちた たくらみと、それへの「おいかぜ」。「成長後退期に入った社会が、我が身を守るために斬り捨てた若者たちを、これ幸いとすくい上げ、今度はその背中に「よっこらしょ」とおぶさったのが、大学市場を支配する者たちだった」という、水月氏の呪詛ともいうべき、巨視的総括は、基本的にただしいとおもう。
■水月氏が重視する、もっとも人的ボリュームをかかえ深刻だとされる地方私立大学大学院の在籍・通過者よりも、むしろ、“研究大学”+α の博士課程に ひかりをみてしまった層≒博士課程修了後に非常勤講師にはありつけた層こそ、博士課程インフレによる「浪人」問題として深刻だとおもうが。■ともあれ、水月氏の巨視的総括と予測をもうすこし おっておこう。

 平成26(2014)年の18歳人口の予測は、118万人。平成16年から23万人の減少だ。大学・短大の進学率が現状だとしても、その数59万人。12万人の減少である。これは昭和50(1975)年のレヴェルだ。その後しばらくは、そのラインで上下すると予測されている。
続きを読む
記事検索
最新コメント
最新トラックバック
プロフィール

haranatakamasa

タグクラウド
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ